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EU、旧ソ連3ヵ国とFTAを含む連合協定に調印−欧州理事会でウクライナに関する総括も取りまとめ−

(EU、ウクライナ、アルバニア、ジョージア、モルドバ)

ブリュッセル事務所

2014年06月30日

EUは6月27日、欧州理事会(EU首脳会議)の機会を活用し、ウクライナ、モルドバ、グルジアの3ヵ国と自由貿易協定(FTA)を含む連合協定に調印した。欧州理事会はまた、同日にウクライナに関する総括を取りまとめ、ウクライナ東部での武力衝突に関するポロシェンコ大統領の和平案(ピース・プラン)実行を支援するとともに、次のステップに向けた準備作業を欧州委員会や欧州対外行動庁、加盟国に要請した。

<連合協定調印で、3ヵ国は将来のEU加盟への展望に期待>
EUは6月27日、ウクライナモルドバグルジアの3ヵ国と高度かつ包括的な自由貿易圏(Deep and Comprehensive Free Trade Areas、DCFTA)の構築を含む連合協定を調印した。6月26日から27日に開催された欧州理事会で、EU加盟国首脳が集う機会を活用したもので、EU28ヵ国の首脳に加え、欧州理事会のファンロンパウ常任議長、欧州委員会のバローゾ委員長、ウクライナのポロシェンコ大統領、モルドバのレアンカ首相、グルジアのガリバシビリ首相が調印式に臨んだ。

連合協定による主な協力分野は次のとおり。

(1)中核部分の改革:公共ガバナンスや司法、法の執行、経済回復と成長、消費者保護などの主要分野に加え、エネルギー、運輸、環境保護、産業発展、社会開発と保護、教育、若者と文化の各分野での改革を想定している。
(2)価値:協定は、民主主義、法の支配、人権、基本的自由、良い統治(グッド・ガバナンス)、良く機能する市場経済、持続的な開発に重点を置いている。
(3)貿易:協定は、調印国に貿易関係の近代化と経済発展のための枠組みを提供する。関税や割当の漸進的な撤廃、幅広い貿易関係分野での法や規格、規則の調和を通じて、市場を開放する。

ファンロンパウ常任議長は調印式で、「政治的、経済的関係の強化が欧州大陸全体に、より大きな安定と繁栄をもたらす」と強調し、「このような協力は民主主義、人権、基本的自由、法の支配という共通の価値に基づいてのみ行うことができる」と説明した。また、「EUとこれまで発展させてきた最も野心的な対外関係を開始することは出発点でもあり、今回の協定はわれわれの協力の最終段階ではない」と力説した。

他方、グルジアのガリバシビリ首相は調印式後の記者会見で、今回の連合協定の調印が実質的なEU加盟申請であるとする発言をしており、改革努力を続ければ、EU加盟がかなうとして、将来への期待感を示した。

EUが過去に調印した連合協定では、EU加盟を前提とした中・東欧諸国や西バルカン諸国との連合協定と、EU加盟を前提としないモロッコ、チュニジアなどの地中海諸国との連合協定などがある。今回、連合協定を調印した3ヵ国は東方パートナーシップと呼ばれる旧ソ連圏の国々に含まれており、EUとこれら諸国との将来の関係については明確に定まっていないのが実情だ。

ウクライナのポロシェンコ大統領は調印式後の記者会見で、「ウクライナの歴史にとって最も重要な日となった。7年のプロセスの終わりではなく、近代化の始まりであり、改革の始まりである」と強調。加えて、ポロシェンコ大統領は2013年11月29日にリトアニアの首都ビリニュスで開催された第3回東方パートナーシップ首脳会合(2013年12月11日記事参照)で、連合協定の仮調印に使われる予定だったペンをリトアニアのグリバウスカイテ大統領が取っておいてくれたことを披露し、そのペンで今回、調印したことを説明した。さらに、EU加盟を目指し、ウクライナを変える改革を短期間で行うことを強調した。

調印式後の記者会見で、ペンを披露するポロシェンコ大統領

<アルバニアはEU加盟候補国に>
これまでEU加盟候補国に認定されているのは、トルコ、モンテネグロ、セルビア、マケドニア、アイスランドの5ヵ国だったが、今回の欧州理事会で、アルバニアを加盟候補国に認定した6月20日のEU一般問題理事会の決定(2014年6月27日記事参照)を承認し、6ヵ国となった。これ以外に、ボスニア・ヘルツェゴビナとコソボの2ヵ国がEU加盟を前提とする加盟潜在国に特定されている。現状では、西バルカン諸国とトルコ、アイスランド以外のEU加盟は想定されていない。

なお、EU加盟には、1993年のコペンハーゲンでの欧州理事会で決定された「コペンハーゲン基準」を満たす必要がある。同基準は以下のとおり。

○政治的基準:民主主義、法の支配、人権および少数民族の尊重と保護を保証する安定した諸制度を有すること。
○経済的基準:市場経済が機能しておりEU域内での競争力と市場力に対応するだけの能力を有すること。
○EU法の総体(アキ・コミュノテール)の受容:政治的目標ならびに経済通貨同盟を含む、加盟国としての義務を負う能力を有すること。

連合協定は、この政治的基準と経済的基準を満たすための準備を後押しするものでもあり、当該3ヵ国のEU加盟への期待感の高まりには根拠があるともいえる。

<ポロシェンコ大統領の和平案を支持>
6月27日の欧州理事会では、ウクライナに関する総括を取りまとめた。

欧州理事会は、3月6日の臨時欧州理事会での声明(2014年3月7日記事参照)や5月27日の欧州理事会での声明(2014年5月29日記事参照)、3月21日の欧州理事会の総括(2014年3月24日記事参照)、6月23日のEU外相理事会での結論(2014年6月25日記事参照)を思い起こし、ポロシェンコ大統領が前週に発表したウクライナ東部での武力衝突に関する和平案(ピース・プラン)を支持するとした。また、和平案を原則支持するとするロシアのプーチン大統領の宣言と、ウクライナへのロシア軍派兵の権限を取り消すロシア連邦上院の決定に留意するとした。

欧州理事会は、停戦について、ウクライナ当局は尊重しているが、武力衝突が完全に停止していないことに対し遺憾の意を表明した。それ故、全ての関係者に、和平案実施と、武力衝突の停止を確固たるものにすることへの真の約束を求めた。ロシアに対しては、事態の沈静化に向けた迅速かつ具体的な結果を導くため、違法な武装集団への積極的な働き掛けと、国境を越える武器や戦闘員の流入の停止を要請するとした。欧州理事会はまた、和平案実施における欧州安全保障協力機構(OSCE)の監視や、停戦や効果的な国境管理の確立におけるOSCEの役割を支援するとした。

欧州理事会はさらに、ウクライナの経済安定化プロセスを支援する約束を再確認するとともに、欧州委員会による「国家建設契約」とマクロ経済支援の枠組みへの計7億5,000万ユーロの2つの支出を歓迎した。この点に関し、欧州理事会は7月8日にブリュッセルで予定される高級ドナー調整会議への期待感を示した。

<欧州委員会やEEASに、「的を絞った措置」の準備作業を要請>
ロシアによるクリミア自治共和国とセバストポリ市の編入(2014年3月19日記事参照)を認めない3月の欧州理事会総括と決議(2014年3月24日記事参照)に続き、欧州理事会は、この政策を効果的なものにするための欧州委員会の作業と、クリミア自治共和国とセバストポリ市からのウクライナ当局発行の証明書がない商品の輸入を禁止する決定2014年6月25日記事参照)を歓迎した。

欧州理事会は、欧州委員会や欧州対外行動庁(EEAS)、加盟国に対して、遅滞なくさらなるステップを取り得るため、3月の臨時欧州理事会や欧州理事会で求められた「的を絞った措置」に関する準備作業を進めるよう要請した。欧州理事会はこの点に関し、ウクライナ政府による親ロシア派に対する停戦期限である6月30日までに次のステップが取られることを期待するとした。

(1)停戦と効果的な国境管理のために、OSCEが監視する確認メカニズムに関する協定の締結
(2)ウクライナ政府の実効支配が及んでいない3ヵ所のロシアとの国境チェックポイント(イズバリノ、ドルジャンスキー、クラスノパルチザンスク)のウクライナ当局への返還
(3)全てのOSCEオブザーバーを含む人質の解放
(4)ポロシェンコ大統領の和平案実施に関する実質的な交渉開始

EU閣僚理事会は状況を査定し、必要な決定を採択し、さらなる制限的措置をいつでも決定できるよう約束していることを欧州理事会は強調している。また、ポロシェンコ大統領も連合協定の調印式後の記者会見で、欧州理事会による次のステップへの準備を評価し、和平案実現への決意を表明した。

(田中晋)

(EU・ウクライナ・モルドバ・グルジア・アルバニア)

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