上海自由貿易試験区で6月末からさらに7つの新通関制度−通関手続き一括化や低い関税率の選択が可能に−

(中国)

上海事務所

2014年06月25日

上海税関は中国(上海)自由貿易試験区における手続きをさらに簡素化するために、新たに関税率の選択可能化などの7つの新通関制度を公布した。6月30日から実施する。

<貨物や出入り車両もコンピュータ管理に>
上海税関は4月22日〜5月1日、中国(上海)自由貿易試験区で通関手続きを簡素化するための7つの新通関制度を公布・実施したが(2014年5月7日記事参照)、5月30日〜6月19日にさらに7つの新通関制度を公布し、6月30日から実施する。概要は以下のとおり。

(1)貨物搬出入時の提出書類削減(5月30日公布)
貨物を搬出入する際に、貨物の関連情報を税関に登録し、登録申請書のほか、契約書、領収書などの関連書類を証拠として提出しなければならないが、今回の新制度により、国外への搬出入の場合、または関税納付義務の伴わない国内・区外地域への搬出入の場合、証拠として関連書類を提出する必要がなくなる。

(2)貨物搬出入時の登録申請書の統一(6月6日公布)
試験区には、地理的に離れている4つの税関特殊監督管理区(外高橋保税区、外高橋保税物流園区、洋山港保税区、浦東空港総合保税区)(注1)があり、4つの区域の貨物搬出入時の登録申請書の様式はそれぞれ異なっていた。今回の新制度により、統一の新登録申請書を採用する。

(3)倉庫業者の電子情報化管理(6月6日公布)
試験区内の倉庫業者は定期的に貨物データを税関に提出しなければならないが、今回の新制度により、企業管理類別(注2)B級以上の倉庫業者は貨物管理の「コンピュータ倉庫管理システム(WMS)」を完備すれば、税関の「中国(上海)自由貿易試験区税関監督管理情報化システム」に直接接続できる。税関は同システムを通して、即時に貨物データを把握できるので、倉庫業者は自ら貨物データを提出する必要がなくなる。

(4)複数回出荷についての通関・報告手続き一括化(6月9日公布)
試験区内の企業は国内・区外企業に出荷するたびに通関手続きを行う義務が、また、他の区内企業に出荷するたびに税関に報告する義務があるが、今回の新制度により、複数回の出荷について通関手続きあるいは報告手続きを一括で行うことが可能になる。企業管理類別B級以上の試験区内の企業は同新制度の適用を申請する資格がある。

(5)関税の一括徴収(6月11日公布)
新制度の実施により、企業は月に1回、貿易に伴う関税を一括で支払うことが可能になる。企業管理類別B級以上の区内企業、企業管理類別A級以上の国内・区外企業(注3)は同新制度の適用を申請する資格がある。

(6)関税率の選択可能化(6月18日公布)
試験区内の企業は海外から原材料・部品を調達して試験区で製品を生産し、国内・区外地域に販売する際、輸入時に関税を支払わなければならない。今回の新制度により、該当企業は調達時の状態(原材料・部品の状態)と販売時の状態(完成品の状態)のどちらの商品類別を選んで税関に申告し関税を払うかを、自社で決定できることになる。企業は低い方の関税率を選択できるため、関税をある程度削減できる。

(7)出入口の電子自動化管理(6月19日公布)
トラックなどの車が試験区に出入りする際、これまでは人がナンバープレートや貨物重量などのチェックを行ってきたが、今回の新制度により、自動化されることになる。上海市政府の概算によると、今回の措置によって車の出入りの平均所要時間は6分から45秒に短縮し、毎日の出入可能車両数は8倍になる。

(注1)保税区や中国(上海)自由貿易試験区など、国務院の認可によって税関管理では国外と同じように取り扱われ、税関が該当地域に出入りする貨物の監視・管理を行う特別なエリアを指す。
(注2)企業管理類別とは税関総署が通関実績に基づいて企業にAA、A、B、C、Dという5つの評価ランクを付け、ランクが高い企業ほど通関手続きを簡素化する管理制度。
(注3)試験区内企業と国内・区外企業との間の取引は貿易に当たり、関税がかかる。このため、区内企業と取引し、関税を支払う義務が発生する国内・区外企業も、同新制度の適用対象となる。

(文涛)

(中国)

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