IMMEXのIVA課税救済認定スキームを一部修正−2013年度SAT貿易細則第8次改定を公布−

(メキシコ)

メキシコ事務所

2014年03月24日

「2013年度の貿易に関する一般規則」(以下、SAT貿易細則)の第8次改定が2月27日付官報で公布され、輸出向け製造・マキラドーラ・サービス業振興プログラム(IMMEX)に基づく一時輸入に対する付加価値税(IVA)課税の救済措置である企業認定スキームについて、一部が修正された。なお、認定の有無にかかわらず、2014年中はこれまでどおりの保税輸入が続けられる。

<IMMEX企業への影響を緩和>
2013年10月に国会を通過した税制・社会保障制度改革法案では、「IMMEX、保税倉庫などの一時輸入に対するIVA課税」について、企業認定制度による救済措置が取られ、認定された企業はこれまでどおり保税輸入を可能とし、2014年中に制度の詳細が公布され、2015年から発効するとしていた(2013年11月20日記事参照)。これを受けて1月1日付SAT貿易細則第6次改定で手続きの概要が公布され、さらに同改定公布後40日以内に詳細な手続き規定が公布されるとしていた。

IMMEXは一定の要件を満たして登録すると、IVAなどを保税で輸入が可能になるスキーム。工場の立ち上げ期などに設備・機材の輸入が集中して行われるケースで、輸入IVAの支払い繰り延べが可能になるため、金利などのキャッシュフロー負担が軽減される。また輸出取引(IVAが0%)が多い企業は、輸入や仕入れの際に支払ったIVAが顧客から回収するIVAよりも多くなってしまうため、国税庁(SAT)に還付申請をする必要がある。しかし、IVAが実際に還付されるまでには少なくとも2ヵ月程度かかるため、その間のキャッシュフローが圧迫される。IMMEXを活用して輸入時にIVAを保税扱いすることで、キャッシュフローへの負担を軽減できる。

SAT貿易細則第6次改定では、IVAの保税を続けられる企業の認定要件が示された。企業認定モダリティー(大枠)に3つのレベルを設定し、AからAA、AAAの順に利点を多くし、その分認定要件を厳しくするものだ(2014年1月30日記事参照)

<認定の基本要件も修正>
第8次改定では、いくつかの企業認定要件に変更や修正が加えられている(表参照)。まず認定の基本要件として申請時に要提出となっていた「国内投資証明の添付」が不要となった。当局からの求めがあった場合に出せるようにしておけばよい。この際、契約書類や輸入申告書類、各種所有権利書、その他でよい(SAT貿易細則改定5.2.13則A−VII)。

SAT貿易細則第8次改定に伴う主な修正点

同じく基本要件に「輸出入先の企業リスト」があるが、保税オペレーションに関わりのない企業も含めて、全ての輸出入先の企業と解釈されるケースが多かったため、「(保税輸出入に関わる)輸出入先の企業リスト」と記述が修正された(同5.2.13則A−VIII)。

基本要件のほかにIMMEX企業としての履行状況もチェックされるが、その中で「直近12ヵ月において一時輸入品の60%以上が再輸出されること(鋼材などのケースでは80%以上)」とされていたが、「バーチャル輸出」(他のIMMEX企業への商品の移転)や「輸入ステータス変更」による確定輸入処理なども含めて60%以上となった。つまり、IMMEXによる在庫管理対象一時輸入リストに載せてから12ヵ月以内に再輸出や輸入ステータスの変更など適切な処理をし、同リストから落とすことを意味する(同5.2.13則B−I−dならびに第3パラグラフb)。

また、鋼材などを扱う場合の追加要件の1つに「貿易に使用する輸送業者、保税地域のリスト」があったが、これは削除された。

利点の多いモダリティー(AA、AAA)の認定要件には、「ローカルサプライヤーについてIMMEX取引額の一定割合に相当するサプライヤーの税務義務履行証明を持つこと」という要件があったが、これについては機械・設備などを除く「原料サプライヤー」に限定される(5.2.13則E−I−a)。その結果、計算式および比率は以下のように解釈される。

○税務義務履行証明を持つIMMEX利用原料サプライヤーの取引総額÷IMMEX利用原料サプライヤーの取引総額:
(1)モダリティーAA:40%以上
(2)モダリティーAAA:70%以上

認定要件の中には決められた人数の従業員の社会保険庁(IMSS)加入および社会保険料の支払い証明が求められるが、この証明は労働法15条Aに定められるアウトソーシング先によるものも含むとした(5.2.13則E−I−bおよび同則E−II−b)。

モダリティーAA、AAAの認定要件の1つに、直近12ヵ月においてIVA還付の不適決議がSATからなされていないことがあるが、この基準については「SATから否認された額が20%以下または総額500万ペソ(約3,850万円、1ペソ=約7.7円)以内」であればよいと追記された(5.2.13則E−I−dならびに同則II−d)。

同じくモダリティーAA、AAAの認定要件に、SATに対し租税債務がないこと(AAは直近12ヵ月以内、AAAは直近24ヵ月以内)とあるが、実際には分割払いなどの債務返済方法についてSATと合意していれば申請可能と追記された(5.2.13則最後から2番目のパラグラフ)。

また、AAAのモダリティーに限っては、認定取り消し理由のうちの「IMMEX在庫管理の不備」について1年間の猶予期間が与えられ、この間に是正することが可能となった(5.2.17第4パラグラフ)。

なお、今回のSAT貿易細則第8次改定には、一連の申請フォーマットなどが添付されており、それに従って申請することが求められる。

(中島伸浩)

(メキシコ)

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