IMMEXによる付加価値税課税の救済スキームを公布

(メキシコ)

メキシコ事務所

2014年01月30日

1月1日付官報で「2013年度の貿易に関する一般規則」(以下、SAT貿易細則)第6次改定が公布された。この中で、2013年秋の税制改正に伴い導入された、輸出向け製造・マキラドーラ・サービス業振興プログラム(IMMEX)での一時輸入への付加価値税(IVA)課税の救済措置である企業認定スキームが示された。認定を受けた企業は、2015年以降も従来どおりのIVA保税が続けられる。なお、同改定公布後40日以内に、詳細な手続き規定が公布されるもよう。認定の有無にかかわらず、2014年中はこれまでどおりの保税輸入が続けられる。

<税制改正によるIMMEX企業への影響を緩和>
2013年10月に国会を通過した税制・社会保障制度改革法案では、「IMMEX、保税倉庫などの一時輸入に対するIVA課税」について、企業認定制度による救済措置が取られ、認定された企業はこれまでどおり保税輸入を可能とし、2014年中に制度の詳細が公布され、2015年から発効するとしていた(2013年11月20日記事参照)

IMMEXは一定の要件を満たして登録すると、IVAなどを保税輸入することが可能なスキーム。工場の立ち上げ期などに設備、機材の輸入が集中して行われるケースで、輸入IVAの支払い繰り延べが可能になるため、金利などキャッシュフロー負担が軽減される。

今回の改定では、IVAの保税を続けられる企業認定要件が発表された。企業認定モダリティー(大枠)には3つのレベルがあり、AからAAAの順に利点が多くなり、その順番で認定要件は厳しくなる(表1参照)。

まず、全てのモダリティーで必要な基本要件を満たす必要がある。税務義務履行証明(通称「Opinion Positiva」)や、従業員の社会保険庁(IMSS)加入証明など、通常のオペレーションを行っていれば問題ないものだ。また、IMMEXを適正に利用していることの証明も必要。特に要件に加えられているのは、「直近12ヵ月において一時輸入品の60%以上を再輸出する」とあり、輸出要件を強化した。さらに、HSコード72類の鋼材を一時輸入し、72類の鋼材のまま再輸出する企業(コイルセンターなど)は高い基準や追加書類が求められ、中には取締役の個人所得税年次申告などの証明まで要求されている。

AA、AAAのモダリティーについては、(Aの要件を満たすことに加えて)原則、操業経験の長さ、または企業規模の大きさを求められ、かつサプライヤーの税務義務履行証明まで準備する必要がある。

表1IVA、IEPSに関する企業認定モダリティーと主な要件

<IVA保税目的なら「A」で十分か>
各モダリティーの利点については、IVA保税を続けるという目的であれば、どれを利用しても可能だ(表2参照)。ただし、Aについては、毎年更新することが必要という煩雑さはある。IVA保税を受けたいが、AAやAAAのモダリティー要件のハードルが高いと感じるようであれば、Aのモダリティーでも十分だろう。

AA、AAAにある「査察通知前自己修正機会の提供」は、通常SATが納税者の申告に疑義を抱き、納税者に対する査察を行う際、査察指令書(Orden de Visita Domicialia)という文書を納税者に送付し、その中で査察日時と場所を指定し、代表者にその場所・日時にいることを要請する。この査察を通知する前に、納税者が自ら納税申告内容を修正する機会を与えることを指すとみられる。

表2各モダリティーの主な利点

<地域別に分かれる申請スケジュール>
申請スケジュールは、新認定企業スキーム(NEEC)や特別保税倉庫(Deposito Fiscal)を持つ自動車アセンブラー(完成車メーカー)が2014年4月1日からとなっているほかは、地域別の申請期間が設けられている(表3参照)。これらの対象期間を過ぎた後でも申請は可能だが、判定期間の40日間のカウントが10月22日以降に回される。

表3申請スケジュール

<企業の情報管理はより煩雑に>
表4にあるように、判定期間は新規手続きの場合、申請要件がそろった時点から起算して、補正命令(Prevencion)がある場合を含め、40日以内。この間処分がなされない場合、申請は棄却とみなされる。補正命令があった場合、申請者は15日以内に補正を行うことが必要だ。

登録情報の変更がある場合、情報の内容に応じた所定期間内に変更を行わないと、認定取り消し事由になるので、登録情報管理には注意が必要。取り消されると、2年間は再申請が不可となる。そのほか、取り消し事由としては、査察の拒否、在庫管理における差異検出〔10万ペソ(約76万円、1ペソ=約7.6円)超〕などとなる。

通常のIMMEXの在庫管理に加え、登録情報のメンテナンスなど管理業務はより煩雑にもなる。IVAの保税を目的として認定を取るということについては、その管理コスト、リスクなどと、認定を取得せずに一時輸入IVAを支払い、還付手続きを行うことの負担などの見合いをよく分析してからでも遅くはないだろう。

表4その他留意事項

(中島伸浩)

(メキシコ)

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