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企業が使いやすい制度を要望−AFTA自己証明制度のセミナー・ワークショップ開催(2)−

(ASEAN、カンボジア、タイ、マレーシア)

バンコク事務所

2013年11月06日

カンボジア・プノンペンで開催された「ASEANの自己証明制度に係るキャパシティー・ビルディング・ワークショップ」には、第1パイロットプロジェクト(SC1)に参加するマレーシア、タイの原産地証明書発給当局、税関の実務担当者に加え、世界税関機構(WCO)ならびに東京税関の職員が参加。カンボジア国内の制度構築や手続き面での準備事項などについて活発な議論が行われた。ASEAN域内に広範な生産ネットワークを有する日本企業も加わり、ユーザーとなる企業側の立場に立った制度の導入を訴えた。連載の後編。

<カンボジアをSC1に取り込む狙いも>
ジェトロおよび日ASEAN経済産業協力委員会(AMEICC)事務局が、日本政府やASEAN日本人商工会議所連合会(FJCCIA)の協力の下、10月24〜25日にプノンペンでワークショップを開催した第1の目的は、自己証明制度パイロットプロジェクトへの参加準備を進めるカンボジアの制度導入を支援する立場から、同国商業省、税関の実務担当者のキャパシティー・ビルディング(能力構築)を図ることにある。とりわけ、FJCCIAとASEAN事務局との間では近年、ASEANの事業環境改善を目的とした定期的な対話が実施されていて、同ワークショップはFJCCIAによるASEAN向けの協力事業の一環と位置付けられる。

同時に、もう1つの重要な目的となるのが、SC1へのカンボジアの取り込みだ。すなわち、日本の産業界のニーズに即した制度導入を目指す立場から、ASEAN内に併存する2つのパイロットプロジェクトの間で立場を決めかねているカンボジアに対し、SC1を主導するマレーシア政府とともに、利用者の間口が広く、手続き上の制約が少ないSC1のメリットを強調し、同プロジェクトへの参加を促したいという狙いがある。

ワークショップに参加したマレーシア国際貿易産業省ASEAN経済協力局のジェイシワンタ・コー部長は、自己証明制度導入のメリットについて、「手続きの簡素化、コストや時間の削減を実現するとともに、予見可能性や透明性を確保するもの」と説明。マレーシアの場合、現行の原産地証明書(フォームD)の発給事務は平日の日中に限られ、週末にかかる申請などは発給までに3日間を要するケースもある。また、フォーム上に13もの記入項目があるため、記入の不備や登録署名の微妙なずれによって通関が認められないこともある。コー部長は「ASEAN自由貿易地域(AFTA)で統一的な自己証明制度が導入されれば、企業側と政府当局の双方で膨大な書類手続きの削減につながる」との見解を示した。その上で、「自己証明を活用できる認定輸出者を選定する条件を明確に定義すれば、虚偽の申告などのリスクは回避できる」と強調した。

<日本企業は貿易業者を排除しない制度を求める>
カンボジアを含むASEAN域内各国に幅広い生産・販売拠点を展開する日本企業からは、域内拠点間の部材の相互供給の仕組みや、それに係るAFTAの活用状況、決済方法などが紹介された。同社の場合、シンガポールに物流統括会社を有し、そこに輸出入決済を集約化させて、決済実務の効率化と為替リスクの低減を図っている。アジア域内におけるFTAの活用は年々拡大し、AFTAのフォームDの発給件数だけでも年間数千件に上るという。

日常業務として膨大な書類手続きを抱える同社にとって、「原産地証明の自己証明制度の導入は、a.原産地証明書発給までの待機時間の短縮、b.同発給を待てない緊急貨物(航空貨物など)に対する自由貿易協定(FTA)利用の向上、c.手続きにかかるマンパワーおよびコストの削減、などさまざまな観点から非常にメリットがある」という。他方、多くのグローバル企業の間で、競争力の確保のため、物流や決済業務を統括拠点に一元化する動きが加速する中、「認定輸出者資格を製造業者に限定する仕組みや、第三国インボイスを認めない仕組みが導入されれば、多くの利用者にとって制度のメリットは著しく減少するだろう」と懸念を示した。参加資格や手続き要件で制約の多い第2パイロットプロジェクト(SC2)の動きを牽制するとともに、カンボジア政府に対して、SC1 の優位性を間接的に強調したかたちだ。

<2つのパイロットプロジェクトは統合の必要>
同社の説明の後、ASEAN事務局貿易促進部のハリダス・ナガリンガム次長は「現状において、SC1とSC2参加国の間で展開されている議論は、ユーザーである民間企業の声が置き去りにされている懸念がある」との見解を表明。「制度の統一化に向けた議論は2015年を待つ必要はない。SC2 が運用開始になった段階で、2つのパイロットプロジェクトの統合の方向性について、議論を急ぐべきだろう。その際、ASEAN域内に生産ネットワークを展開するグローバル企業の要望および懸念は、ASEAN各国の政府閣僚や高級事務レベル会合に対してもしっかりと伝えていく必要がある」と述べた。

また、マレーシアのコー部長も「パイロットプロジェクトは、制度運用に当たっての問題点を事前に把握し、本格導入に向けてその解決策を講じることが目的だ。その意味で、現段階では可能な限り、多くの利用者が参加できるようにその間口を広げておく必要がある。貿易業者の利用をパイロットプロジェクトの段階から排除するのはプロジェクトの趣旨に反する」として、カンボジア側にSC1への参加を促した。同時に、カンボジアの民間企業からも「グローバル企業の生産・販売ネットワークの広域化に伴う決済機能の集約化・効率化は、必然的な流れだ。ASEANおよびカンボジアがグローバル企業の立地先として競争力を維持するためにも、貿易業者を排除しない制度を導入すべきだ」との意見が出た。

一連の議論を受け、カンボジア政府・商務省を代表して参加したソック・ソフィアック外国貿易局長は「カンボジアがSC1とSC2のどちらに参加するかは、最終的には商務相も含めた国内での議論を経て、正式決定をする必要がある。ただし、試験導入としてのパイロットプロジェクトの意義を考えれば、ユーザーを制限しないSC1への参加が望ましいと考える。その方向で商務相および関係各所に意見を伝えたい」と述べた。

<SC1運用を通じてさまざまな課題が明らかに>
パイロットプロジェクトの実務レベル研修では、タイ税関のソンブンポーン・プッカウェート上級専門レベル技術員が、SC1の運用に際し、タイでの通関時に顕在化している課題として、以下の具体的事例を紹介した。

(1)認定輸出者のコードリスト(SC1参加各国の税関間で連絡・共有されているもの)に記載されている輸出者名と、当該貨物の認定輸出者名(インボイスに記載のある輸出者)の記載が一致しないことがある。この場合、通関をいったん差し止め、輸入者を通じて正しいコード(輸出者名)を再提出させる必要がある。

(2)インボイスによる自己申告において、タイでの輸入通関時に、輸出国からのオリジナルインボイスが届いていないことがある。この場合、インボイスのコピー(スキャンデータ)を認めるか否かは個別の港湾の税関職員の裁量に委ねられ、認められないケースもある〔SC1の覚書(MOU)は、インボイス申告のコピーを認めるかを明記していないため〕。

(3)輸入時にインボイス上に認定輸出者のサインおよび名前(フルネームの印字)の両方を記載する必要があるが、どちらかが抜け落ちているケースがある。

(4)インボイス申告に記載されている原産地基準(当該輸出品がどの規則を採用しているか)の記載が、間違っていることがある。

(5)自己証明制度そのものに対する認識が輸出国側の輸出者の間で浸透しておらず、輸入者側が求めても使われないことがある。

(6)自己証明制度を活用した輸入部材を、通常の原産地証明書(フォームD)に累積できないことによる弊害がある。具体的には、SC1に参加する認定輸出者から自己証明制度を活用して部材を輸入し、加工した最終製品をSC1に参加しない国に送る場合、自己証明制度による輸入部材をフォームD上で累積計上することは認められない。

(7)自己証明制度の下では、認定輸出者が他国の認定輸出者を代理してインボイス申告を行うことは認められない。そのため、同制度では現在、バックトゥバック(連続する)原産地証明書は認められない。

(8)輸入国の税関職員が故意に、もしくは知識の欠如から、自己証明制度によるインボイス申告を受け入れず、フォームDを求める場合がある。

(9)船会社もしくは乙仲業者(海運貨物取扱業者)が、自己証明制度に対する知識がなく、通関の段階で、輸出者が提出していたインボイス申告を使用せず、貨物を未通関で留め置いたまま、輸出者側にフォームDを求めることがある。

なお、11月中旬にはミャンマーで、「ASEAN物品貿易協定(ATIGA)実施のための調整委員会」の開催が見込まれている。同委員会では、SC2の運用開始に向けた各国内手続きの進捗状況や、カンボジアによるプロジェクトへの意向表明が注目されるが、実務レベルにおいては運用段階で直面している前述の課題に対し、参加国間で建設的な対応策が検討されることが期待される。

(伊藤博敏)

(タイ・マレーシア・カンボジア・ASEAN)

原産地証明書発給手続きの簡素化をアピール−AFTA自己証明制度のセミナー・ワークショップ開催(1)−

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