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EU、シンガポールとのFTAに最終合意

(シンガポール、EU)

ブリュッセル事務所

2013年09月24日

欧州委員会は9月20日、EUとシンガポールとの自由貿易協定(FTA)が最終合意に達したことを明らかにし、合意テキスト案を発表した。今後、EUの公式言語への翻訳作業や批准手続きなどがあるため、発効は1年以上先になる見通し。欧州委はサービス貿易と政府調達での新たなビジネス機会の拡大に期待を寄せるほか、ASEANの他の国々とのFTA締結に向けた弾みにしたい意向だ。

<最終合意テキスト案を発表>
欧州委は9月20日、EUがシンガポールと交渉中だったFTAが最終合意に達したと発表し、併せて合意テキスト案も公表された。テキスト案は現在、EUの公式言語24ヵ国語に翻訳中で、正式承認のため、追って欧州委に提出される予定。その後、EU閣僚理事会(理事会)で正式に採択した後に欧州議会で批准するほか、EU各国議会やシンガポール国内での批准手続きを経て、2014年の終わりか2015年の早期に発効する見通し。

なお、EUの基本条約を改正したリスボン条約の下で欧州委に新たに投資分野の交渉権限が付与され、遅れて交渉を開始した投資保護の分野については現在、交渉が進行中。テキストの正式な最終承認の前に、投資章(第9章)として協定に統合される予定。

EUとシンガポールは2012年12月16日、FTAが合意に達したと発表していたが(2012年12月27日記事参照)、最終テキストの調整に時間を要していた。EUにとっては、ASEAN諸国との初めてのFTAになる。EUとシンガポールの商品貿易は520億ユーロ(2012年)、サービス貿易は280億ユーロ(2011年)で、EUにとってシンガポールは東南アジアにおける最も重要な貿易・投資パートナーとなっている。

<サービスと政府調達分野での成果を強調>
欧州委が発表したEU・シンガポールFTAの主な内容は次のとおり。また、非公式の概要ペーパーも発表されている。

○サービス分野と政府調達分野において、WTOでの約束以上のレベルを相互に供与することで合意した。シンガポールは多くの分野で、EUのサービスサプライヤーに他国より優遇的扱いを供与する。同様に公共入札に関する約束は、重要な公共契約となる多くの公共事業の分野をカバーしている。これらはEUが多くの指導的なサプライヤーを有する分野だ。
○通信、郵便サービス、金融サービス、国際海上輸送など多くのサービス分野における先進的な規制枠組みに合意した。お互いが双方の市場で活動する際に、対等な競争環境(レベル・プレーイング・フィールド)を保証する。サービス分野ではまた、許認可や資格を取得するための手続きにおける透明性と不当差別の禁止を保証するとともに、将来的な職業資格での相互承認を提供する。
○外国直接投資のための新たな機会を提供するとともに、進行中の交渉が一度完了すれば、高いレベルでの保護を提供する。
○自動車や電気・電子製品、特定の環境技術に対する双方での二重の試験要求のような貿易に関する多くの技術的な障壁を除去する。
○EU側は最長5年の移行期間を経て、シンガポール側は既に無税を適用しているが、全ての関税を撤廃する。
○国の検査システムを近代化することで、肉類の輸出を容易化する。
○高いレベルでの知的財産権の保護・強化に合意した。WTOのTRIPS(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)以上の高いレベルでの地理的表示(GI)保護に向けて、シンガポールは例えば、新たにGIの登録を導入するとともに、シンガポールにおいてEUのGIを保護する。
○透明性と競争を強化するルールとともに、輸出業者のための近代的な規制枠組みを設ける。今回のFTAはまた、仲裁パネル、あるいは調停者の仲介を通じた効率的な紛争解決を盛り込んでいる。

<環境配慮や持続可能な開発分野に努力>
EUとシンガポールはまた、双方における「グリーン成長(Green Growth)」を刺激する手段として、このFTAに特別な努力を施した。この意味で、特定のグリーンテクノロジーへの貿易や投資の障害を取り除く条項に加えて、環境サービスの自由化や、グリーン公共入札に特に焦点を当てたと強調している。多くの環境製品に対する関税は即時撤廃されるとしている。

さらに、EU・シンガポールFTAには、貿易と持続可能な開発に関する包括的な項目(第13章)が設けられていると説明している。第13章の目的は、貿易が主要な国際法に沿って環境保護や社会開発を支えるとともに、環境や労働者の権利を犠牲にして促進されるものではなく、企業の社会的責任(CSR)や森林と漁業の持続可能な管理を促進するものとなることを保証するとしている。加えて、その実施と監視に市民社会を関与させる仕組みを設定している。

<EUにとって東南アジア最大の貿易相手>
将来の世界経済の成長の約90%はEU域外からもたらされるとの予測に加え、欧州における経済成長の脆弱(ぜいじゃく)さと、根本的な財政再建への取り組みから、EUにとって特に域内の需要が停滞している際に、域外の成長要素や需要を取り込むことが不可避となっている。東南アジアの経済成長は今後数年、5.5〜6.0%で推移すると見込まれ、EUの輸出業者にとっての優先市場に位置付けられる。急増する中間層の購買力向上が、東南アジアでの欧州製品の需要を支えていると分析する。

このような経済環境の中、EUにとって、シンガポールは東南アジアにおける最大の貿易パートナーであり、両者間の財・サービス貿易がEU・ASEAN全体の3分の1を占めている。また、投資残高をみると、シンガポールとの投資が対ASEAN全体の5分の3を占めているほか、9,300以上のEU企業がシンガポールに地域拠点を設置している。そのため、EU・シンガポールのFTAはASEAN諸国とビジネスを行うEUの輸出業者を支えるものになる。

他方、シンガポールにとっても、世界最大の経済圏であるEUとの取引は魅力的なものであり、シンガポール企業はEU28ヵ国、5億人の消費市場へのアクセスが保証されるようになるとしている。結果として、EUの輸入業者や消費者が、シンガポールに進出するEU企業が製造する製品を含めた同国からの商品やサービスへのアクセスが容易になることを強調している。EUはシンガポールにとって、2012年時点ではマレーシアに次ぐ2番目の貿易パートナーだった(ただし、2013年上半期に、中国との貿易量がEUとの貿易量を超えた)。

<ASEAN全体とのFTAに向けた最初のステップ>
欧州委員会通商総局のチーフエコノミストによるFTA締結の経済効果分析によると、EUのシンガポール向け輸出は今後10年間で約14億ユーロ増加するとしている。他方、シンガポールのEU向け輸出は、シンガポールに設立した多くのEU企業からの輸出も含み、同時期に約35億ユーロ増加すると見積もっている。

EUとシンガポールの経済規模の大きな差異を反映して、FTA締結により、シンガポールの実質GDP成長率を0.94ポイント押し上げる27億ユーロの増加となるのに対して、EUの実質GDPは約5億5,000万ユーロの増加と予測している。

また、EU・シンガポールFTAは、EUと他のASEAN諸国との包括的なFTA締結や、最終的にはEUとASEAN地域全体とのFTAへの道筋をつけるものとなる。

EU側のルパート・シュレゲルミルヒ首席交渉官は「EUとシンガポールは毎週10億ユーロ相当の商品貿易を既に行っている。FTAはビジネスをさらに繁栄することができる基盤を築くものだ。これはまた、世界における2つの主要な統合された地域であるASEANとEUとの間の経済関係、および11億人の市民の経済関係の緊密化に向けた最初のステップだ」と説明している。

(田中晋)

(EU・シンガポール)

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