新「外国人出入国管理条例」が9月1日施行−上海では居留許可更新期間を7営業日に短縮−

(中国)

上海事務所

2013年09月11日

ジェトロ上海事務所は9月1日に施行された外国人出入国管理条例をテーマとするセミナーを、9月4日に上海市内で開催した。講師となった上海市公安局出入境管理局の担当者は、(1)7月以降15営業日を要していた居留許可の更新期間を7営業日に短縮する、(2)手続き期間中は顔写真入りの全国統一の受理証を発行し、更新手続き時に国内出張ができない不便を解消する、といった点を紹介した。

<「停留」の概念を新たに導入>
セミナーでは上海里格(リーグ)法律事務所所長・弁護士の安翊青氏が、新「外国人出入国管理条例」の概要と留意点について、続いて上海市公安局出入境管理局の孔徳志氏が、出入国管理実務の現状および留意点について講演した。その後1時間以上にわたり質疑応答が行われた。

安氏は、中国を訪問する外国人の大幅な増加により、「三非」と呼ばれる、非(不)法入国、非(不)法滞在、非(不)法就労の外国人が増えており、1985年に制定された法律を改正した「出入国管理法」が2013年7月から施行され、新しく制定された外国人出入国管理条例におけるビザの種類などを紹介した(2013年8月15日記事参照)

続いて、公安局の孔氏は冒頭、合法的に滞在する日本人が安心して生活や仕事ができるよう努力していきたいと述べ、ビザ制度の変更点などについて説明した。

実務面において、出入国管理法が施行された7月以降は居留許可の更新手続きに15営業日を要することとなり、中国内の移動などにも不便を来しているが、上海においては9月2日の受理分から手続き期間を7営業日に短縮し、また、パスポート預け期間中の証明書として、顔写真を記載し公安局の印が押された受理証明を9月から全国統一の様式で発行する、といった点を紹介した(2013年7月16日記事参照)。この受理証は中国内で有効な身分証明になると法律でも定められており、更新手続きの期間中は中国内の出張ができないといった不便の解消が期待される。一方、地方やホテルによってはいまだ認知が進んでいないケースも考えられる、と孔氏は指摘した。

また、新法では「停留」の概念が新しく導入され、180日以下の滞在は「停留」、180日を超える滞在は「居留」として取り扱われ、「居留許可」の取得対象は180日を超える「居留」としての滞在に限られることや、知人宅などに宿泊する際に必要な境外人臨時住宿登記を行わなかった際の罰金が引き上げられたことなどにも、孔氏は触れた。

質疑応答は1時間以上にわたる活発なものとなった。主な内容を以下に紹介する。

<2週間以内の出張はノービザ>
展示会の視察や出展・商談などを目的とした2週間以内の出張については、安氏が在日中国大使館などに確認したとして、これまで同様にノービザの出張で差し支えないとの見解を示した。なお、特殊な用務や運用の変更によりビザを求められる可能性はあるので、不明な点などがあれば、最新の運用について最寄りの中国大使館・領事館に確認することが望ましいという。

工場立ち上げの際の技術指導などで2ヵ月滞在する場合は、商用、貿易活動用のMビザ(新設)が必要になると考えられる。また、期間が3ヵ月(90日)を超える場合は、「労弁発[1996]65号」の規定により、就業ビザ(Zビザ)が必要となる。

<60歳以上の就業ビザ取得は困難>
60歳以上の就業ビザ取得は、中国では60歳定年制が定められているため、原則として取得が難しい。一方、上海の場合、実務上必要不可欠な人材との説明が認められれば、65歳までは取得できる可能性があり、外国専門家証を取得すれば70歳まで認められる可能性があるという。

これまでは、ノービザや交流、訪問、視察団用のFビザで入国後、Zビザに切り替えることが一部で行われていたが、新法の施行後はいったん中国外に出国してビザの申請手続きを行う必要がある。これまでは、香港に一時滞在しビザの延長・切り替えを行う事例も多かったが、こうした手続きも今後は難しくなる見込みだ。

ノービザで入国後の観光用のLビザへの切り替えも中国内ではできず、いったん出国する必要がある。ビザの延長は1回に限り認められる。

<再入国時の登記は居留許可の有無で異なる>
アパートなど(ホテルなど宿泊施設以外)に滞在し、境外人臨時住宿登記を提出、その後日本に一時帰国後に同じ住所に再度滞在する場合の同登記が必要かどうかは、「居留許可」の取得の有無により異なる。「居留許可」を取得している場合、同じ住所に戻る際には再入国時の登記は不要だが、「停留」としてビザのみ(あるいはノービザ)で入国する場合、同じ住所であっても再入国時に再度、同登記が必要となる。

駐在員が帰国したり、転職のため職場を離れたりする際には、雇用する会社が当該者の就業許可ならびに居留許可の取り消し手続きを10日以内に行う義務がある。

<既存ビザは期間内は有効>
既にFビザで入国している出張者のビザは、有効期間内はそのままで差し支えないと考えられる。一方、現在中国外にいてFビザを持つ者が商業活動として入国する場合は、Mビザを取得した上で入国するのが適当と考えられるが、詳細は中国大使館・領事館などに確認した方が良い。

外国人出入国管理条例は施行されてまだ間もなく、地方によっても運用に差異がみられる状況だ。詳細は公安局の取扱窓口で確認した方が良い。

(草場歩)

(中国)

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