居留許可の更新手続き期間が「15日」に−新「出入国管理法」が施行−

(中国)

上海事務所

2013年07月16日

新しい「中華人民共和国出入境管理法」(以下、出入国管理法)が7月1日、施行された。不法滞在、不法就労に対する罰則や管理規定が強化され、居留許可証(就労などによる長期滞在許可)の更新手続きにも以前より時間を要するようになっている。

<手続き期間中のビジネス活動への影響を懸念>
就労などに係る居留許可の更新期間は従来5営業日だったが、北京市、上海市、江蘇省無錫市、広東省深セン市など各地で7月1日からは「15営業日」が必要だと窓口に掲示され、既に手続き期間が延長されている。居留許可の更新の際にはパスポートを入管に預ける必要があるが、その一方で中国内においては飛行機の搭乗などやホテルのチェックインの際にパスポートの原本を提示する必要があり、手続き期間中のビジネス活動にも影響が出るのでは、との懸念が広がっている。

この懸念と対応策について、上海市内の法律事務所(上海リーグ法律事務所)に照会したところ、以下のような回答があった。

<実施条例では「15営業日」となる可能性も>
(1)出入国管理法第30条の規定により、居留許可の更新には15日必要となる。法律上は「15日」であり「15営業日」ではないが、窓口では「15営業日」とされているケースもある。実施条例においては、「15営業日」とされる可能性が高い。

(2)法律事務所の経験に基づけば、特別な理由がある場合は出入境管理局と相談することにより手続き期間を短縮できる可能性がある。ただし、明文化された規定があるわけではなく、取り扱いも地域やケースによって異なると考えられる。

(3)出張の前に居留許可の延長手続きを終えることができなかった場合、以下により対応する。
○出入境管理局が発行した居留許可申請の受理票に顔写真を貼り、出入境管理局の公印(割印)を押したものを、パスポートのコピーとともに携行し、空港のチェックインの際に利用する。上海の浦東・虹橋の両空港ではこの方法による対応が可能で、国内の各空港でも基本的には同様。
○ホテルのチェックインの際には、前出の写真貼付の受理票と、パスポートの顔写真のページ、居留許可証(有効期限内のもの)が貼付されたページ、最新入国日のスタンプのあるページのコピーをそれぞれ提示する。

ただし、ホテルによっては上記の方法による対応を認識しておらず、チェックインを断られることもあり得る。顔写真を貼付・公印を押した受理票でチェックインすることについて、現場の認識が追い付いてないケースもあるため、宿泊先のホテルなどにはできる限り事前に確認し、何かトラブルがあった際には中国語で現場の係員に説明できるようにして出張に出掛けることが望ましい。

<上海では顔写真付き受理票を発行>
上記のとおり、上海では顔写真を貼付し割印を押した受理票を発行することにより、飛行機など交通機関の利用が可能だ。一方、重慶市や四川省成都市など地方によっては顔写真入りの受理票が発行されていない地域もある。

在重慶総領事館に照会したところ、重慶・成都において上海など沿海部で発行された顔写真入りの受理票があれば、飛行機などの利用は問題ないものの、現地で発行される受理票は顔写真がないため、ホテルでの利用は可能な場合もあるが、空港などでの利用は難しいとのことだ。なお、顔写真入りの受理票があっても、空港の係官などが認識できずにトラブルとなる可能性がないとは言い切れないため、余裕を持った日程で移動することが望まれる。

<不法滞在・就労の管理規定を強化>
また、新しい出入国管理法においては不法滞在、不法就労に対する罰則や管理規定が強化されている。ジェトロ上海事務所に寄せられた相談でも、7月に入ってから社内告発によって、Fビザ(商用、訪問、6ヵ月以内の短期留学や研修を目的とした訪問ビザ)で働く駐在員を公安が摘発した事例が報告されている。就業目的の居留許可証の更新期限についても、従来は定めがなかったが、今後は更新期限の30日前までに更新の申請を行う必要がある。

運用の実施条例は7月10日現在、まだ正式には公布されておらず、窓口では一部混乱もみられる。運用については今後も変更の可能性があり、動向を注視する必要がある。

(草場歩)

(中国)

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