経済的理由による集団解雇の手続きを簡素化−「雇用安定化法の進出日系企業への影響」セミナー(2)−
パリ事務所
2013年07月25日
ジェトロが7月4日に開催した在フランス日系企業を対象とする「雇用の安定化に関する法律成立に伴う在仏日系企業への影響」に関する労務セミナー報告の後編。解雇や配置転換の手続きの変更点などについて、法律事務所ランドウェルの横田文志ジャパンデスク責任者の講演内容を紹介する。10人以上の従業員を経済的理由で解雇する場合、その手続きが簡素化された。
<労使合意か監督局の認可方式を選択>
従業員50人以上の企業が30日間に10人以上を経済的理由で解雇する際には、企業の能力に応じた雇用救済計画の作成が義務付けられている。業績悪化で事務所を閉鎖する場合でも、計画を作成しなければならない。計画における主な措置は以下のとおり。
○内部でのポスト探し(グループ会社内全て)
○新事業の設立
○外部でのポスト探し
○職業訓練による配置転換
○労働時間短縮
○早期優遇退職
現状では、企業委員会への計画の諮問や、その後の企業・競争・消費・労働・雇用地域総局(DIRECCTE)の審査に時間がかかる。また、雇用救済計画の内容が不十分だとして、不当解雇の裁判に持ち込まれることも多々あった。今回の雇用の安定化に関する法律では、手続きを簡素化し、以下の労使合意方式もしくは監督局の認可方式のどちらかが選べるようになった。
(1)労使合意方式
企業内の組合代表のうち選挙で過半数を取った組合と事業主が、集団解雇に関する労使間協定を締結する。企業委員会への諮問は、解雇対象者の人数により2ヵ月(解雇対象者が10人以上99人以下)、3ヵ月(100人以上249人以下)、4ヵ月(250人以上)と定められている。協定により以下の事項などを自由に規定できる。協定で規定された期限の延長はできない。合意後に地域総局の承認を受ける。承認は15日以内に行われる。労使間合意に基づいた解雇で、裁判に持ち込まれることはあまりないと想定される。
○労使間会合の回数や日程
○必要書類のリスト
○会計士の介入
○解雇順位
○雇用救済計画の内容
(2)監督局の認可方式
事業主が雇用救済プランを作成し、企業委員会への諮問後に地域総局に認可申請をする。企業委員会への諮問期間は労使合意方式と同じ。地域総局は申請を受け取ってから21日以内に認可する。
<配置転換は契約の変更なくても可能に>
従来は雇用契約で職務内容、勤務地が規定されていたため、本人の同意がない場合は配置転換できなかったが、当該従業員に対する支援措置や配置転換の地理的条件などを労使協議で事前に合意することにより、契約を変更しなくても配置転換が可能となった。
従業員300人以上の企業で配置転換に関する合意をする場合は、人材配置の適正を保つために行われる雇用・能力予測管理(GPEC)に盛り込むことが義務付けられた。本人が拒否する場合は、経済的理由による個別解雇の対象となる。雇用・能力予測管理は3年に1回労使協議を行い、合意内容を見直すことが義務付けられている。
<賃金カットと引き換えに雇用維持を提案できる>
業績不振に対応するために、最長2年まで雇用を維持する代わりに、一定期間(最長2年)の賃金カットと労働時間の変更を盛り込んだ企業内雇用維持協定を、多数派組合と合意できる。ただし、給与は法定最低賃金の1.2倍(2013年7月現在、時給11.32ユーロ)を下回ることはできない。また、団体協約で定められた最低賃金を下回ることもできない。日曜労働、有給休暇、労働時間など労働法における強行規定を順守する。
協定を拒否する従業員に対しては、経済的理由による個別解雇が可能だ。10人以上の従業員が拒否しても、集団解雇とは見なされず、雇用救済計画は要求されない。
<労使紛争の和解金の目安が法制化>
労使間の紛争を取り扱う労働審判所では、雇用契約に関する紛争、特に不当解雇の審判が多い。裁判手続きはまず和解部門で取り扱い、和解できない場合は判決部門に引き継がれるが、最低でも2〜3年かかる。判決で不当解雇となった場合、解雇従業員に最低2年の在籍実績があり、かつ従業員11人以上の企業の場合は、最低6ヵ月の損害賠償金の支払いを命ぜられる。加えて当該従業員が失業手当を給付されている場合は、最高6ヵ月の手当を失業保険庁に返還しなければならない。それ以外の解雇従業員の損害賠償額は裁判所が判断する。
和解部門で解決することはほとんどなく、また判決に時間がかかるため、提訴から2ヵ月以内に和解部門に登録すること、および和解の目安となる損害賠償金額が以下のとおり定められた(表参照)。ただし、これはあくまでも目安で、従う義務はない。損害賠償金は労使双方とも税金、社会保険負担金の対象とはならない。適用は政令により定められる予定だ。
このほか、雇用契約の履行や終了に関する時効が5年から2年に短縮された。ただし、差別に基づく場合は現行どおり5年で、給与に関しては3年に短縮された。
<企業委員会に企業戦略などの情報を提供>
フランスでは、従業員が11人以上の企業は従業員代表の選出、50人以上の企業は企業委員会の設置が義務付けられている。従業員が11人もしくは50人に初めて達した企業に対しては猶予期間が与えられ、従業員代表もしくは企業委員の選挙公示から選挙までの期間が通常は45日だが、それが90日に延長された。また、従業員50人に初めて達した企業には、企業委員会との企業運営に関する毎月の定期的な説明、および意見交換の会合の開催について1年間の猶予が与えられた。
企業委員会を有する企業は、委員会に対し、企業の戦略、競争力/雇用税額控除(CICE)の使用方法、について情報提供しなければならない。企業の戦略については、以下のようなデータを作成することが義務付けられた。データ作成の期限は従業員数により異なる。
○投資
○自己資本と債務
○給与
○社会・文化活動
○投資家への配当
○資金フロー
○下請け
○グループ取引
(後藤尚美)
(フランス)
不安定な雇用への罰則を強化−「雇用安定化法の進出日系企業への影響」セミナー(1)−
ビジネス短信 51ef828ec8ed8