対内投資は24億600万ユーロの引き揚げ超過に−2012年の直接投資動向（1）−

＜EU27ヵ国が約90億ユーロの引き揚げ超過＞
連邦銀行の2月28日発表（PDF、40ページ〜）によると、2012年の対内直接投資は24億600万ユーロの引き揚げ超過となり、前年の290億6,300万ユーロから大きく落ち込んだ（表参照）。

対内直接投資の動向を国・地域別にみると、欧州債務危機などの影響でEU27ヵ国からの投資はマイナス89億6,800万ユーロと引き揚げ超過に転じた。ユーロ圏からの投資も大幅に減少し、マイナス10億3,400万ユーロを記録した。

ユーロ圏からの投資を国別にみると、フランスは前年のマイナス29億3,000万ユーロの引き揚げ超過から、2012年には42億900万ユーロとEU域内だけでなく、全体でも最大の投資国になった。オランダもマイナス8億7,900万ユーロの引き揚げ超過から29億3,300万ユーロとプラスに転じた。オランダの不動産投資会社コリオが、ベルリンにあるショッピングセンター「ブールバールベルリン」を3億6,600万ユーロで買収すると発表した事例などがある。イタリアからの投資は10億5,100万ユーロに増加した。電子速度制御機器メーカー・アルジーグループは、ハイブリッド駆動システムメーカー・シャーブミュラーを2012年7月27日に買収した。

非ユーロ圏のEU各国からの投資活動も大幅に鈍化し、前年の102億5,400万ユーロから2012年にはマイナス79億3,400万ユーロと大幅な引き揚げ超過になった。そうした中で、スウェーデンは3億9,300万ユーロだった商用車・建設機械メーカー・ボルボが9月13日、1億3,000万ユーロを投資し、商用車メーカー・ドイツへの出資率を以前の6.7％から25％へ増やしたと発表した投資事例が挙げられる。両社は共同で次世代の産業用エンジンの開発を進める狙いも明らかにした。

＜北米からの投資は活発＞
スイスからは9億7,000万ユーロで、小売業ミグロスが食品スーパーチェーン・テグートを完全買収した事例があるほか、化学大手ロシュは12月12日、ミュンヘン近辺のペンツベルクにあるバイオテクノロジー拠点に2億4,000万スイス・フラン（CHF、1CHF＝約106円）を投資し、新しい生産工場を設立する計画を発表した。

ロシア化学大手ユーロケムが化学メーカーK＋S（本社：ヘッセン州カッセル）の肥料事業を買収した事例などがあり、ロシアからの投資は2億9,400万ユーロとなった。

30億5,200万ユーロと最も投資額が高い地域になったのは北米だ。その中で、米国が27億6,000万ユーロで国別では3番目の投資国となった。アルミ圧延・リサイクル大手ノベリスは11月26日、投資額2億5,000万ユーロに及ぶ、東部ザクセン・アンハルト州ナフターシュテットでのアルミリサイクル工場の建設を発表した。そのほか、機械メーカーITTは11月28日、ガス・原油産業でのポジション強化を図り、ポンプメーカー・ボルネマンポンプを2億600万ユーロで買収すると発表した。

＜アジア地域では日本が最大投資国＞
アジア地域からの投資は15億9,500万ユーロと、前年の17億1,900万ユーロからやや減速した。韓国は2億5,800万ユーロと大幅に増加し、投資案件として韓国化学大手ハンファが8月29日、深刻な経営状況に陥った太陽電池メーカー・Qセルズを買収した事例がある。中国からの投資は1億8,500万ユーロと前年の水準を維持した。自動車部品メーカー河北凌雲工業集団が3月13日、自動車ドア用ロック装置メーカーのキーケルト（2012年11月12日記事、2013年3月7日記事参照）の買収を発表したほか、鉄鋼メーカー武漢鋼鉄（集団）は9月28日、鉄鋼・鉱業製品大手ティッセンクルップの子会社で、テーラードブランク材（注）を製造するテーラード・ブランクスを買収すると発表した。

日本は6億6,400万ユーロとアジア地域の最大投資国だった。神戸製鋼が6月28日、欧州におけるマーケティング・営業活動を強化し、ミュンヘンに駐在員事務所を設立したほか、森永乳業は乳業製品メーカー・ミレイを完全子会社化した。化学分野では、三菱レイヨンが欧州市場における炭素繊維複合材料事業の拡大を図り、10月に炭素繊維ファブリックメーカー・TKインダストリーズを買収した。

（注）テーラードブランク材とは、厚さ・材質・表面処理の異なる複数の鋼板を溶接して一体化したプレス素材のこと。自動車のボディーなどに広く用いられている。

（ゼバスティアン・シュミット）

（ドイツ）

対外直接投資が前年比19％増の465億5,500万ユーロと活発−2012年の直接投資動向（2）−