スービック自由貿易港内の日系企業に新たな混乱−土地新課税に加え、SBMAが賃借料の1割徴収を開始−

(フィリピン)

マニラ事務所

2013年03月27日

スービック湾都市開発庁(SBMA)は、新たな土地課税(CUSA)問題で日系企業との紛争となっているさなか、さらに追加徴収として、不動産賃借料の1割をスービック自由貿易港内の企業に求め始めた。影響を受ける日系企業集団はCUSA問題と同様、提訴も辞さない構えで、日本政府に支援を求める見通しだ。

<「SBMAシェア」と称し徴収>
SBMAは「SBMAシェア」と称し、スービック自由貿易港(経済特別区)内の企業がデベロッパーに支払う不動産賃借料の一律10%の追加徴収を実施した。進出企業に向けて、請求書の発送を1月から始めたもようだ。企業側にとっては、突然の賃借料の1割負担増となり、混乱が生じている。SBMAは請求書で、支払いを拒否する場合は営業許可証の更新を認めないと警告しており、新たな紛争の火種となるものとみられる。

2012年、SBMAは土地の評価額に対して一定の乗率で「共益費」と称して土地税を徴収したことから、CUSA問題が起きた(2012年9月21日記事参照)。これに対し、ジェトロが集団訴訟の取りまとめを行い、日系企業約10社はオロンガポ地裁に執行差し止めを求め提訴し、2013年1月18日、差し止め請求を認める地裁判決が出た。差し止め命令が実行されると徴収は実施されないが、今後はCUSA執行の合法性について裁判が続くこととなる。フィリピンの裁判は、提訴から決着まで数年から十数年かかるともいわれており、日系企業は裁判上の決着よりも、日本・フィリピン経済連携協定(JPEPA)のビジネス環境整備小委員会を通じた話し合いでの決着を期待している。日本政府は、この問題を「日系投資家に予期せぬ追加負担を求める施策」として同委員会で取り上げ、フィリピン政府に再考を促す方針だ。

<追加徴収の背景に港の利用率低迷>
SBMAが追加課税を矢継ぎ早に実施し、税収を確保しようとする背景には、日本政府からの借款により建設したスービック自由貿易港の利用率低迷という問題がある。港湾使用料収入を建設資金の返済に充てる計画のところ、開港以来、利用率は極めて低く(計画比10%以下)、返済資金に窮した結果の追加課税といえる。「税」といわなければ、いかなる追加費用も投資家から徴収できる、とSBMA法務部門は主張している。一方、日系投資家は「法人所得税(5%簡易課税)以外のいかなる国税・地方税も免除する」との投資優遇措置を信じて進出しており、今回のような徴収は「突然のルール変更」だとして、フィリピン政府の対応を厳しく非難している。

(辻一郎)

(フィリピン)

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