PSAとルノーの国内生産はともに大幅減−主要国の自動車生産・販売動向(2012年)−

(フランス)

パリ事務所

2013年03月15日

フランス自動車工業会(CCFA)が発表した統計によると、PSAプジョー・シトロエングループとルノー・グループによる、2012年の全世界の自動車(乗用車および軽商用車)生産台数は前年比13.0%減の557万6,308台に落ち込んだ。国内生産台数は16.4%減の164万6,775台、国外生産台数は11.4%減の392万9,533台と国内外の双方で大幅に減少した。フランス自動車メーカーがホームマーケットとする欧州での景気低迷と、それに伴う乗用車需要の縮小が響いた。

<欧州での販売が激減>
2012年の自動車生産台数(乗用車および最大積載量5トン以下の軽商用車)は、PSAプジョー・シトロエングループが前年比18.7%減の291万1,407台、ルノー・グループ(ダチア、ルノーサムスン自動車を含む。日産は除く)は5.7%減の266万4,901台だった(表1参照)。

とりわけPSAは国内生産が15.9%減の111万4,204台、国外生産は20.4%減の179万7,203台と国内外で大幅に縮小した。ルノー・グループは国内生産が17.6%減の53万2,571台に落ち込む一方、国外生産はルノーとダチアの増産がルノーサムスン自動車の減産分を一部相殺、縮小幅は2.1%減と比較的小幅にとどまった。(表2、表3参照)。

表1フランス自動車メーカーの生産台数
表2フランス自動車メーカーの国内生産台数
表3フランス自動車メーカーの国外生産台数

2大グループともに、欧州販売の急減が響いた。2012年の世界販売台数はPSAが前年比8.8%減の282万台、ルノー・グループが6.3%減の255万286台と縮小したが、欧州販売に限ると、PSAが前年比12.9%減の146万5,735台、ルノー・グループが18.8%減の105万3,489台と急減ぶりが目立った。

他方、新興国での販売増が顕著で、PSAは中国が9.2%増の44万2,000台、ロシアで7.4%増の7万7,300台となった。ルノー・グループもブラジルでの販売台数が24.3%増の24万1,594台、ロシアが22.7%増の18万9,852台、中国も22.4%増の2万9,724台と好調だった。

これを受けてPSAの欧州域外販売の比率は、2011年の33%から2012年に38%に上昇した。ルノー・グループも欧州域外での販売が全体の50%に達した。

<新興国シフトを加速>
フランス自動車メーカーによる国内生産の比率は欧州自動車市場の縮小に伴い、低下傾向を示している。2012年はルノー・グループが20%と前年から3ポイント低下、PSAも前年から1ポイント低い38%となった。2013年も欧州自動車市場は3〜5%縮小すると予測されており、需要が拡大する新興国への生産シフトは今後も続くとみられる。

PSAは2012年7月、北部オルネー工場(年間生産能力24万台)の2014年での生産停止を打ち出した(2012年7月23日記事参照)。一方、2013年は中国で、長安自動車との合弁工場(年間生産能力20万台)でシトロエン「DS」シリーズの現地生産を開始するほか、東風汽車との合弁会社「東風プジョー・シトロエン」が第3工場(年間生産能力15万台)を稼働させる。同社の中国での販売台数は2015年に54万台とフランスでの販売を抜くと予測されており、今後も生産能力を引き上げていく方針だ。

ルノー・グループも新興国での生産増強に取り組む。2012年2月にルノー日産アライアンスがモロッコのタンジェに欧州市場向け低価格車の組立工場(年間生産台数40万台)を稼働させたのに続き、12月にはアルジェリア政府と合弁会社の設立で合意、現地市場向けの小型車の組み立てを2014年から開始する計画(2万5,000台)を発表した。ロシアではモスクワ近郊のアフトフラモス工場の株式を100%取得、生産能力を年間16万台から18万8,000台に引き上げる。また参入が遅れている中国では、東風汽車と合弁で2014〜16年に現地生産(年間生産能力20万台)を開始する計画だ。

他方、国内の生産体制についてルノーは3月6日、生産拠点の競争力強化を目指し、賃金凍結や労働時間の延長、人員削減に関する労使合意に達した。その見返りとして同社はフランス国内の全工場を維持し、国内生産台数を向こう4年間で現在の年間53万台から71万台に引き上げる。このうちルノー車が63万台、残りの8万台は日産やダイムラーからの生産受託で補完する方針を示している。

(山崎あき)

(フランス)

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