PSAプジョー・シトロエン、8,000人の合理化計画を発表

(フランス)

パリ発

2012年07月23日

自動車大手PSAプジョー・シトロエンは7月12日、国内の生産体制の再編と最大で8,000人の人員削減を含む合理化計画を発表した。欧州債務危機の影響で主力の欧州市場が低迷しているため、大幅な合理化で急速な収益悪化に歯止めをかけるのが狙い。これを受け、ジャン=マルク・エロー首相は同日、自動車産業支援策を7月末にも発表する方針を示した。

<国内の生産体制を再編>
PSAプジョー・シトロエンは7月12日、欧州での業績悪化を理由に生産体制の再編を打ち出した。同社はフランス国内でグループ全体のほぼ4割を生産している。

具体的には、3,000人を雇用するパリ郊外北部オルネー工場での生産を2014年に停止し、首都圏での小型車(「シトロエンC3」「DS3」「プジョー208」)の生産をパリ郊外西部ポワシー工場に集中させ、稼働率を引き上げる。オルネー工場の従業員の半数に当たる1,500人をほかの生産施設(主にポワシー工場)へ移転させ、残りの1,500人についてはオルネー周辺での再就職を支援する。

欧州では大型セダンの需要も低迷しているため、同セグメント(「プジョー508」や「シトロエンC5」など)の生産を担うフランス西部レンヌ工場では、従業員5,600人のうち1,400人を削減する。また生産部門以外の従業員についても、国内事業規模の縮小に合わせて早期退職により3,600人削減する。合理化の対象となる従業員数はフランス国内のみで、合わせて8,000人となる。

<南欧での業績悪化が背景に>
PSAは2012年の欧州自動車市場は8%縮小すると見通している。その中で、南欧での比重が高い自社の販売については10%減になると予測する。在庫調整を進めているものの、12年上半期の生産が18%減少したため、欧州の設備稼働率は12年上半期76%と、11年の86%から下がった。販売の42%を占める小型車の生産設備稼働率はさらに低い。12年上半期の営業損益は11年下半期に続く赤字で、7億ユーロ程度の赤字となる見通しだ。

フィリップ・バラン会長は「長引く危機が欧州事業に打撃を与えている。今後の需要見通しに応じた生産能力に調整するため合理化が必要になった」と説明した。

<政府は自動車産業支援策を立案へ>
国内最大の労働団体:労働総同盟(CGT)のチボー書記長はPSAが発表した合理化計画に反発している。派遣従業員やサプライヤー企業への波及を考慮すると「合理化の規模は(発表された数字の)3倍にも4倍にも膨れ上がる」と指摘し、政府に何らかの対策を取るよう求めた。

一方、エロー首相は7月12日、PSAの合理化計画の発表を受けて、同社の経営陣に対し、国内での生産が維持され雇用が守られることを第1の目的として、従業員代表が提案する全ての代替案を検討、協議するために、労働組合と模範的かつ公正で責任ある話し合いを開始するよう求めた。

同首相はまた、「前例のない規模の合理化はグループの従業員や対象となる地域だけでなく、自動車産業全体に対して大きなショックを与える」とし、産業政策を担当するアルノー・モントブール生産再建相に対し、関係者との協議の上、7月25日の閣議に向け、自動車産業支援に向けた政策案をまとめるよう求めた。

最大野党である右派の国民運動連合(UMP)ジャン=フランソワ・コペ幹事長は「わが国の優先政策課題は産業競争力の強化だ」と強調、政府に競争力強化を目指した政策策定の必要性を訴えた。

<「PSA合理化計画は再検討の必要」と大統領>
また、オランド大統領は7月14日、革命記念日の軍事パレード後に行われたテレビインタビューで、PSAの計画はそのままでは受け入れられず、再検討されるべきだと繰り返した。併せて、同社の状況を知るため、月末に派遣する専門家の任命を決定したと述べた。25日の閣議以降に決定される自動車産業政策の内容については、国産自動車の購買増のための奨励策の導入、研究・イノベーションの強化、自動車の割賦購入を促す融資へのアクセス改善などで、政府が役割を果たしたい、と付け加えた。

ピエール・モスコビシ経済・財務相も7月15日、ラジオ番組で、自動車産業政策の対象はPSAだけにとどまらず、ルノーの下請けなど全ての自動車関連産業をカバーするものだと明言した。

当地報道によると、7月25日には、PSAの中央企業委員会が開催され、本件に関しての労使交渉の開始が宣言される。これに先立ち、モントブール生産再建相は、17日に自動車製造業の労組代表者らと、18日にバラン・PSA会長と相次いで面談した。

(山崎あき、上田暁子)

(フランス)

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