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環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)交渉開始へ

(米国、EU)

欧州ロシアCIS課

2013年02月14日

EUと米国は2月13日、両国・地域間の包括的な自由貿易協定(FTA)、環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)交渉の開始に向けた内部手続きを開始することを発表した。米EU間のFTAをめぐっては、「雇用と成長に関する高級作業部会」の最終報告書の完成が予定より遅れ、2月6日のカーク米国通商代表部(USTR)代表と欧州委員会のドゥ・グヒュト委員(通商担当)との会談後も特に発表はなかった。しかし、2月12日の米大統領一般教書演説を前に最終報告書が完成し、オバマ大統領は同演説でTTIP交渉を開始する予定と表明した。今後EUと米国は2013年央の交渉開始を目指し、それぞれの内部手続きを進める予定。

<オバマ大統領が一般教書演説でTTIPに言及>
EUのファンロンパウ欧州理事会常任議長、バローゾ欧州委員会委員長、および米国のオバマ大統領は2月13日、TTIP交渉開始に必要な内部手続きを開始するとの声明を発表した。米EU間のFTAについては、2011年11月に「雇用と成長に関する高級作業部会」を立ち上げて以来、2012年末までの最終報告書完成を目指して作業が進められていた(2011年12月22日記事参照)

しかし、EUの衛生検疫規制への対応や、米国の国内事情などが障害となり、米国とEUは2012年中に最終報告書を完成させることはできなかった。EUは2月に入って、米国が要求していた牛肉および豚の輸入規制の緩和を決定したが(2013年2月6日記事参照)、2月6日のカークUSTR代表と欧州委のドゥ・グヒュト委員との会談でも、最終報告書に合意することはできなかった。このため、一般教書演説でEUとのFTAに言及するのかどうか、オバマ大統領の発言が注目されていた(2013年2月12日記事参照)

カーク代表の引退も近づき、早期交渉開始に向けての不透明感が高まっていたが、一般教書演説を前に最終報告書(PDF)が完成。できるだけ早期に包括的な貿易投資協定の交渉開始に必要な内部手続きに着手するよう勧告した。これを受け、オバマ大統領は一般教書演説で、「今夜、私はEUとの包括的なTTIPの交渉を開始する予定であることを表明する」と言及し、交渉開始への方向性を示した。

債務危機からの立ち直りを図る欧州にとって、米国とのFTAがもたらす成長と雇用への期待は大きい。2月7〜8日の欧州理事会(EU首脳会議)でも、成長と雇用という点で最も利益をもたらす交渉を優先すべきとした上で、規制問題への取り組みを含む米EU間の包括的な協定への支持を確認している(2013年2月13日記事参照)。バローゾ委員長は会見で、「最も重要なことは、(TTIPは)納税者の税金を1セントも費やさずに経済を活性化できることだ」と述べ、財政発動の余地の少ない欧州にあって、成長政策としての米国とのFTA交渉に期待を示した。この日の発表は、債務危機が一服するも成長政策に手詰まり感をみせる欧州にとって朗報となった。

<グローバルなルール作りを主導>
高級作業部会の最終報告書では、規制問題を含む広範な2国・地域間の貿易投資問題に対処し、グローバルなルールの発展に寄与する包括的な協定こそが、検討したさまざまな選択肢のうち最も重要な相互利益をもたらすものだと結論付けた。2012年6月の中間報告書(PDF)では、「妥結できるのであれば(if achievable)」との留保を付した上で包括的な協定への支持を表明していた(2012年7月12日記事参照)。しかし、最終報告書ではそのような留保は付されず、FTA交渉への方向性が固まった。

また最終報告書では、規制問題および非関税障壁への取り組みの重要性が中間報告書より強調されている。実際、欧州委の発表によると、規制の相違から生じる追加的な費用負担は、関税の10%以上あるいは分野によっては20%にも相当する。両国の関税率の平均は4%程度とされており、規制問題、非関税障壁に取り組んでこそ、協定の利益がもたらされるといえる。ドゥ・グヒュト委員は会見で、自動車の安全基準を例に挙げ、EUと米国は同程度に厳格な安全性を目指していることから、相互承認制度を採用するのが合理的と指摘している。

このほか、最終報告書と中間報告書を比較すると、それほど触れられていなかったグローバルな貿易ルール作りへの寄与を強調しているのが特徴的だ。EUは、米国とともに日本とも並行してFTA交渉を進める。両先進国とのFTAを通じて、グローバルなルール作りを主導していこうという意図が透けてみえる。

<2013年夏前の交渉開始を目指す>
今後、両国・地域はTTIP交渉開始に向けた内部手続きを正式に開始する予定。EUでは、欧州委が交渉マンデート案を加盟国に提示し、理事会で欧州委への交渉権限の付与を決定する必要がある。欧州委の提案は、3月後半になる見込み。既に首脳レベルでは何度か支持が表明されており、加盟国からの反対もない。少なくともEU側の交渉開始に向けた手続きはスムーズに進むとみられる。米国は交渉開始90日前までに議会に通知し、協議を進めることになる。

ドゥ・グヒュト委員は交渉の開始時期について、アイルランド議長国の間、つまり2013年夏までの交渉開始を目指すと言及。さらに、スピードより野心的な合意を達成することが重要としつつ、今から2年で交渉を終えることが理想と述べている。

とはいえ、高水準の協定締結へ向けての両者の隔たりは大きい。バローゾ委員長は会見での質問に対する回答で、米国が長年問題視してきた遺伝子組み換え作物(GMO)の基本法制は、運用は別として交渉の議題とならないと明言した。米国側はGMOや個人情報保護法制も交渉の議題となるとしており(「インサイドUSトレード」誌2月13日)、この点で両者は真っ向から対立している。米国が要求してきた事項のうち、獣脂を使用したバイオ燃料の輸入許可の問題も解決していない。EUがどこまで米国の要望に応えることができるのか、いまだ懐疑的な見方が米国内では根強い。

またEUにとっても、FTAの重要課題の1つである地理的表示(GI)に、最終報告書ではなんら言及することができなかった。公共調達については、「あらゆるレベルの政府」での調達市場アクセスの改善を勧告し、米国の州政府の調達の開放も交渉の議題となり得る可能性を残した。しかし、2011年12月に妥結したWTO政府調達協定改正交渉では、現行の37州に加え、ジョージア、ウェストバージニア、ニュージャージー、ノースカロライナの4州の調達を加えることをぎりぎりまで目指したが、最終的には対象州の拡大はなかった(2012年1月18日記事参照)。実際に州政府の調達市場開放にまで切り込むためには、相当困難な交渉が予想される。

何より、交渉の最も大きな課題となる規制問題については、そもそものアプローチが異なる場面の多いEUと米国が高い水準で妥協点を見いだすことができるのか、疑問視する声も多い。EUと米国は、予定より遅れたものの、交渉開始に向けたハードルはクリアした。しかし、仮に交渉を開始しても、交渉妥結へ向けた道のりはいまだ遠い。

(牧野直史)

(EU・米国)

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