欧州委、牛肉および米国産の生きた豚の輸入規制緩和−EU・米国FTA交渉開始の追い風に−

(米国、EU)

欧州ロシアCIS課

2013年02月06日

欧州委員会は2月4日、乳酸による牛肉の汚染除去処理と、養豚用の米国産豚の輸入を認めることを正式に採択した。いずれもEU・米国自由貿易協定(FTA)交渉に入るに当たって、米国から改善が求められていた問題。2月6日にワシントンで開かれる予定の欧州委のドゥ・グヒュト委員(通商担当)とカーク米国通商代表部(USTR)代表との会談に、弾みをつけた格好だ。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<一定条件の下で牛肉の乳酸処理を認める>
欧州委の発表によると、欧州委は2月4日、牛枝肉の表面汚染の除去に乳酸の使用を認める措置、および米国産の生きた豚の輸入を認める措置をそれぞれ正式に採択した。両措置ともに同日官報に公示され、2月25日から適用される。

欧州委によると、乳酸による汚染除去処理はベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)やサルモネラ菌などの病原体の低減に有効とされる。欧州食品安全機関(EFSA)がリスク評価を行い、2011年7月に乳酸の安全性と有効性を確認する意見を出していた。欧州委員会規則101/2013(PDF)により、一定の条件の下で乳酸による汚染除去処理が認められることになった。

また、欧州委員会実施規則102/2013(PDF)により、生きた豚のEUへの輸入が認められる第三国リスト(欧州委員会規則206/2010)に米国が追加された。これまでEUは、水胞性口炎の発生していない国または地域からのみ豚の輸入を認めていた。そのため、水胞性口炎の発症が確認されている米国からは豚の輸入を認めてこなかった。しかし、米国での発生は散発的で、かつ特定の地域に限られている。このため、輸出前の一定期間病気の発生していない施設に豚を隔離するなど、国際獣疫事務局(OIE)で認められた措置を施すことによってリスクは無視し得るものとなるとして、個別の試験の実施を条件に米国からの輸入を認めることとした。

<2月6日のUSTR代表との会談に弾み>
EUと米国はFTA交渉を視野に、ハイレベル作業部会を設置し議論を続けている(2011年12月22日記事2012年7月12日記事参照)。EUと米国は民間に対し、EU・米国FTA全体についてのほかに、FTAで取り上げる可能性のある規制問題についても意見募集を行っていた。米国の産業界などから出た意見では、今回解決に至った問題も指摘されていた(添付資料参照)。

訪米中の欧州委のドゥ・グヒュト委員は2月6日、カークUSTR代表と会談する予定。2012年末までに報告予定だったハイレベル作業部会の最終報告書に合意し、早期のFTA交渉開始の提言表明につなげたい意向だ。今回の決定は米国の要望の一部を実現するもので、特に乳酸処理の認可は包括的なFTA交渉開始に当たって、信頼醸成のため米国が解決を求めていた事項の1つだった(「WTO Reporter」紙2月5日)。

EU・米国FTA交渉については、英国や現議長国のアイルランドを中心にEU側が積極的な姿勢を示している。2012年10月の欧州理事会(EU首脳会議)は、2013年中のFTA交渉開始に向け作業を進めると表明した(2012年10月23日記事参照)。議長国アイルランドも、任期中の通商分野の最優先事項として、欧州委員会へのEU米国FTAの交渉権限付与の合意を掲げている。

今回のドゥ・グヒュト委員訪米で最終報告書に一定のめどがつけば、2月7日から始まる欧州理事会でEU・米国FTAについて議論し、2013年中の交渉開始に向けて作業を促進することが可能となる。

<規制問題がFTA交渉のカギに>
とはいえ、仮にFTA交渉開始に至ったとしても、交渉は容易ではない。例えば、今回の規制緩和も、必ずしも完全に業界団体の要望に沿ったものにはなっていない。ある団体は乳酸処理の認可手続きの煩雑さを批判している。豚肉について、加工肉でさえ個別検査が輸出の障害となっているとの指摘がある。また、もう1つ米国が交渉の前提として要望している事項に、獣脂を利用して生産したバイオ燃料の輸入許可がある。輸入許可に向けてEUは議論を進めているものの、現在議論されている輸入許可案に付された条件に、米国の業界団体は反対している(「インサイドUSトレード」誌1月24日、添付資料参照)。

これまで議論されている規制問題は農産品や食品が中心となっているものの、米国とEUの規制の相違が貿易の障害となっている分野は、農産品・食品に限らない。先週から欧州を訪問しているバイデン米副大統領も「長年存在する(規制や基準の)相違を解決する政治的意思がある」のであれば、FTA交渉を追求すべきだと言及しており、FTA交渉の成功は規制の相違を解決できるかどうかにかかっている(「ユーロポリティクス」紙2月5日)。

(牧野直史)

(EU・米国)

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