ニーダーザクセン州選挙、野党のSPD・緑の党が勝利−秋の連邦選を控えメルケル政権に試練−

(ドイツ)

ベルリン事務所

2013年01月22日

ニーダーザクセン州で1月20日、州議会選挙が実施された。同州野党の社会民主党(SPD)が得票率32.6%(49議席)、同じく緑の党が13.7%(20議席)を獲得、SPDと緑の党で69議席となり、同州与党のキリスト教民主同盟(CDU)・自由民主党(FDP)の合計獲得議席数68を1議席差で上回り、過半数の議席を獲得した。CDUの得票率は前回(2008年)から6.5ポイント低下し、1998年以来過去最低の得票率(36.0%)となった。

<連邦のメルケル政権に痛手>
ニーダーザクセン州の州議会は、CDUとFDPの連立与党が2003年から10年間政権運営を担っており、SPDと緑の党が政権奪取を目指していた。この構図は連邦議会と同様であるため、2013年9月に予定される連邦議会選挙を占うものとして、各政党が現地で党首応援を行うなど、全土から注目された。

連邦のメルケル政権にとって、2012年5月のノルトライン・ウェストファーレン(NRW)州選挙での敗退(2012年5月15日記事参照)に次ぐ痛手で、2013年9月に行われる連邦選挙に向けて試練が続くこととなった。

今回の議会選挙は、投票率は前回の57.1%から2.3ポイント増えて59.4%だった。議席を政党別にみると、野党がSPD49議席・緑の党20議席で合計69議席、与党はCDU54議席・FDP14議席で合計68議席を獲得した(表1、2参照)。一方、左派党は前回の得票率(7.1%)を大幅に下回る3.1%にとどまり、小党乱立を防ぐ5%条項に抵触し、今回は議席を失った。海賊党は今回初めてニーダーザクセン州選挙に参加したが、2.1%の得票率にとどまり、議席獲得に失敗した。

表1ニーダ―ザクセン州選挙の党別得票率(速報)
表2ニーダ―ザクセン州議会の政党別議席数(速報)

<FDP党首の残留が決定>
FDPは2011年3月にザクセン・アンハルト州とラインラント・プファルツ州の州議会選挙(2011年3月30日記事参照)で得票率5%に届かず、議席を失った責任を取るかたちでギド・ベスターベレ外相が党首を辞任した経緯があるため、今回も選挙前には、得票率5%に達しなかった場合には、フィリップ・レスラー党首(連邦経済・技術相)の責任が問われる可能性があった。しかし、連立パートナーのCDUが票を融通したことで、結果として9.9%の得票率を獲得し、レスラー党首に対する批判は収まった。FDPのシュレスビヒ・ホルシュタイン州のボルフガング・クビキ代表は、今回の選挙結果を受けてレスラー党首に対する批判は終わりにするべき、との姿勢を明確にしている。

一方で、レスラー党首は、全土での世論調査で自身の支持率が低下していることを受けて、1月21日の党幹部会の場で党首の座をライナー・ブリューデレ前経済・技術相に譲る意向を示したが、ブリューデレ氏がこれを固辞した。同日、同幹部会において、9月の連邦議会選挙に向けてレスラー党首の残留およびブリューデレ氏の選挙対策委員長就任が決定。なお、3月に前倒しして実施される党大会において、これらの人事が公式に決定する予定だ。

<連邦議会選挙に向けて攻勢強めるSPD・緑の党>
SPDはペール・シュタインブリュック党首の女性差別的発言など失言問題によって失速することが予想されていたが、結果的には前回の48議席から1議席増やした。また、緑の党は前回の12議席から8議席増やすなど躍進した。公共第1チャンネルARDによると、緑の党の支持者のうち、54%が環境政策、36%が教育政策、35%が社会保障政策、20%がエネルギー政策を重視した、とされている。

この結果を受けて、SPDのシュタインブリュック党首は「今回の選挙結果は、連邦議会選挙でも政権交代が可能であることを意味している」(SPDウェブサイト1月21日)、緑の党のクラウディア・ロート党首は「有権者は明らかに現在のメルケル政権とは異なる政策を求めており、緑の党の政策は国民の負託に応え得る」(緑の党ウェブサイト1月21日)と発言するなど、連邦議会選挙に向けて攻勢を強める姿勢を明らかにした。

<地元経済界は経済合理的なエネルギーシフトを求める>
地元の65の企業経営者・経済団体で構成されるニーダーザクセン企業連盟のフォルカー・ミュラー会長は、州議会選挙の結果を受け、「新政権は、交通インフラとエネルギーシフトという重要な課題に意欲的に取り組む必要がある」(UVNウェブサイト1月21日)と述べて、上部団体であるドイツ産業連盟(BDI)同様、経済合理的なエネルギーシフトを求めた(2013年1月7日記事参照)。また、同氏は「SPD・緑の党が掲げる増税策や法定最低賃金導入は、産業競争力を下げかねない」(同上)と、新政権に急激な政策転換を控えるよう求めた。

ニーダーザクセン州では今後、過半数を獲得したSPDと緑の党による連立政権が樹立する見込みだ。ただし、野党のCDU、FDPとの差はたった1議席差であるため、今後ともニーダーザクセン州の政権は不安定な状況が続くと思われる。

(望月智治)

(ドイツ)

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