ノルトライン・ウェストファーレン州選挙、SPDと緑の党が政権維持へ−連邦メルケル政権に打撃−
デュッセルドルフ発
2012年05月15日
ノルトライン・ウェストファーレン(NRW)州で5月13日、州議会(一院制、定数181議席)選挙が実施された。同州連立与党の社会民主党(SPD)が得票率39.1%で第1党になり、同じく与党の緑の党は11.3%を獲得、SPDと緑の党の合計得票率は50.4%と、過半数の議席を獲得し、連立政権を維持する。一方、キリスト教民主同盟(CDU)は26.3%と前回の2010年選挙に比べ8.3ポイント減り、同州で過去最低の得票率を記録した。連邦のメルケル政権にとり、5月のフランス大統領選でのオランド氏当選に次ぐ打撃になった。
<SPDは単独で過半数を確保>
SPDと緑の党は、前回の選挙(2010年5月11日記事参照)で、過半数に1議席足りない90議席で少数政権を組んだ。しかし、12年3月、州の予算法案が野党のCDU、自由民主党(FDP)と左派党(合計91議席)に拒否されたため、解散し、再選挙になった。国内最大の州NRWの州選挙はザールラント州選挙(2012年4月4日記事参照)、シュレスビヒ・ホルシュタイン州選挙(2012年5月10日記事参照)に次ぎ、12年に入り3回目の州選挙となった。
ハネローレ・クラフト氏が率いるSPDは39.1%の得票率で勝利、CDU(26.3%)と緑の党(11.3%)を上回った(表1参照)。FDPは8.6%と得票率を前回に比べ1.9ポイント伸ばし、議席獲得に成功した。著作権法・特許法の改正やインターネット検閲法の解除を要求している海賊党は7.8%を取得し、ベルリン、ザールラントとシュレスビヒ・ホルシュタインに続き4つ目の州議会入りを果たした。左派党は前回比3.1ポイント減の、2.5%で議席獲得に失敗した。
議席数別にみると、SPDは32議席増やして99議席を獲得した(表2参照)。CDUは67議席を維持した。海賊党は20議席を獲得。
<背景にはメルケル政権の対ギリシャ政策への批判>
選挙結果は予想外ではなかった。選挙前からCDUのノルベルト・レットゲンNRW州党首(現連邦環境・自然保護・原子力安全相)は選挙戦に不向きで、州首相候補としては不適切だというのが党内やメディアからの評価だった。それに加え、同氏が5月8日に、NRW州選挙をメルケル政権の財政赤字縮小政策に対する投票として掲げたことから、党内からも批判の声がさらに大きくなった。レットゲン氏は5月13日に選挙敗北の速報が発表された直後、CDUのNRW州党首を辞任すると表明した。
今回の選挙結果は、メルケル政権の対ギリシャ政策などに対する国民の批判を表している、と多くのメディアは分析している。09年の連邦議会選挙以来、連邦与党のCDUとFDPは州議会選挙で11回連続で過半数獲得に失敗した。SPDのジグマール・ガブリエル党首は「CDUの政策は国民から遠く離れている」と述べた(SPDウェブサイト5月13日)。ドイツ産業連盟(BDI)のハンス・ペーター・カイテル会長は、「CDUはどういうテーマと人材が(経済界を含む)投票者に伝わるか、真面目に考え直さなければならない」と述べ、SPDの勝利を「大きな責任を負う」とした(BDIウェブサイト5月14日)。
選挙結果を受けて、メルケル政権の今後の対応が注目される。過去にもドイツの政治では、NRW州選挙後、政治の流れが転換したケースがある。10年のNRW州選挙で惨敗した後、CDUとFDPの連立政権は連邦参議院の過半数を失い、国政運営が困難になった。05年のNRW選挙でSPDが敗退した後、ゲアハルト・シュレーダー政権(SPDと緑の党の連立政権)も政権交代に追い込まれた。今回の選挙を受けて、メルケル政権が13年の連邦議会選挙に向け、どのように立て直しを図っていくかが注目される。なお、13年1月にニーダーザクセン州、13年秋にバイエルン州で州選挙が行われる予定。連邦議会選も13年の秋に実施される。
(ゼバスティアン・シュミット)
(ドイツ)
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