ゼロ成長の中、さらに求められる緊縮財政−2013年の経済見通し−
ブリュッセル事務所
2013年01月09日
実質GDP成長率は、2012年のマイナス0.2%から2013年は0.0%とほぼ横ばいで推移するとみられる。2年連続のマイナス成長は辛うじて避けられる見込みだが、欧州債務危機の悪化と拡大を背景に経済の低迷は続き、頼みの外需も2013年半ば以降になってようやく緩やかな伸びが期待されるにとどまる。政府は、財政赤字削減の目標達成のために緊縮策を継続する方針だが、経済見通しが大幅に下方修正されたことで、さらに22億ユーロの追加緊縮策が必要と試算されている。
<欧州債務危機が波及>
ベルギー国立銀行(NBB)は2012年12月11日、秋季経済見通し(PDF)を発表し、実質GDP成長率を2012年はマイナス0.2%、2013年は0.0%とした。6月の春季経済見通し(PDF)では、2012年は0.6%、2013年は1.4%としていたのを(2012年6月21日記事参照)、それぞれ0.8ポイント、1.4ポイント大幅に下方修正した。
今回発表された数字には、欧州債務危機の長期化と拡大を背景に大きく低迷したここ数ヵ月の経済状況が反映された。NBBは、これまで比較的健全とみられていたベルギーなどユーロ圏主要国にも危機が波及し、そのうちいくつかの主要国は景気後退局面入りするとみる。
NBBはさらに、米国経済の「財政の崖」問題やユーロ圏の制度的課題に対して抜本的な解決策が打ち出せていないことなどを理由に、世界経済の不確実性が依然として高いと指摘。特に2012年夏以降、経営者や消費者の景況感を大きく損ねる結果につながっているとする。個人消費は2012年に約20年ぶりのマイナスを記録し、2013年も回復の兆しは弱い。頼みの外需も、2013年半ば以降になってようやく緩やかな伸びが予測されるにとどまっている。
2013年の実質GDP成長率0.0%の需要項目別は、内需(民間在庫を除く)の寄与度が0.1ポイント、輸出から輸入を差し引いた純輸出(外需)が0.2ポイント、民間在庫増加がマイナス0.2ポイント。民間在庫のマイナスを内需と外需が辛うじて打ち消し、ゼロ成長となる見通しだ。
実質GDP成長率を四半期別にみると、2012年第3四半期のGDPは0.0%(速報値)だった。2011年第4四半期にマイナス0.1%と11期ぶりのマイナス成長を記録したGDPは、2012年第1四半期には0.2%に回復したが、続く第2四半期にはマイナス0.5%に転じていた(2012年9月14日記事参照)。その後、2012年第3四半期にゼロ成長となったことで、2四半期連続のマイナス成長は避けたが、景気後退局面入りがなお懸念されている。
<緊縮予算折衝が再燃の公算大>
2012年11月の消費者物価指数上昇率は前年同月比2.2%だった。2011年7月に4.0%を付けた後は下降しており、2012年4月には3%を割り込んだ。通年の年率でみると、2012年は2.6%、2013年は1.6%の見込み。原油価格をはじめとしたエネルギーや食品価格の下落によって、インフレ懸念は後退する見通しだ。
失業率は2012年10月に7.5%だった。それまでの半年間は7%台前半で推移していたが、2012年夏以降やや悪化の傾向にある。通年の年率でみると、2012年は7.4%、2013年は8.1%で、2012〜13年の間に民間部門で約2万人の雇用が失われると予測されている。米フォードが2012年10月に発表した、2014年末までのゲンク工場の閉鎖(2012年11月28日記事参照)は、約4,300人の従業員のみならず、間接雇用5,000人を含めた約1万人の雇用に影響があるとされ、ベルギーの労働市場に暗い影を落としている。
NBBのリュック・クーン総裁は、今回の下方修正によって、2013年の財政赤字目標であるGDP比2.15%以内を達成するため、さらに約22億ユーロ(GDPの0.6%)の追加緊縮が必要と試算する。政府は、財政緊縮策をめぐって難航し、2012年11月20日にようやく合意に至った2013年予算の策定時でさえ、欧州委員会の秋季経済予測などを根拠に年率0.6%以上の実質GDP成長率を見込んでいた。それからほんの3週間で、さらなる緊縮の必要性が、NBBの秋季経済見通しから明らかになった格好だ。
オリビエ・シャステル予算・行政簡素化相も、こうした経済環境の悪化を背景に、一連の歳出凍結を要求するとみられる。通常3月に実施される、当初予算との乖離を調整するための「予算監査」も2013年初めに前倒しされる見込みで、各省における緊縮予算折衝が再燃する公算が大きくなっている。
(和泉浩之)
(ベルギー)
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