パナマとのFTAが発効−情報通信・インフラ関連機器はすぐにメリット享受−

(米国、パナマ)

ニューヨーク事務所

2012年10月31日

パナマとの自由貿易協定(FTA)が10月31日に発効した。中南米諸国の中でパナマは最も成長率が高く、米国企業にとって2015年完成予定のパナマ運河拡張工事や各種都市インフラ事業への参入機会の拡大に期待がかかる。在米日系企業も米国で製造している商品はFTAのメリットを受ける。また、パナマがWTO情報技術協定(ITA)への加入を約束したことから、WTO加盟国にもメリットが及ぶ。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<米国製品の多くが10月31日以降関税ゼロに>
米国通商代表部(USTR)のカーク通商代表とパナマのキハノ商工相は10月22日にワシントンDCで外交文書を交換し、10月31日に米国・パナマ貿易促進協定(US−Panama Trade Promotion Agreement、以下、FTA)が発効した。2007年6月に当時のブッシュ政権が署名して以来、オバマ政権下で発効の条件として労働条項の強化や租税情報交換協定(TIEA、2010年12月16日記事参照)の締結、11年10月の米国議会、12年10月のパナマ議会での国内手続きを終了し、5年余りの年月を経て発効に至った。

パナマは2011年に10.6%に上る実質GDP成長率を記録するなど、中南米地域では最も高い成長を遂げている。USTRの10月22日付プレスリリースによると、17年までに毎年5〜7%の成長が予想されるだけに、関税撤廃や投資・サービス、政府調達の自由化による米国製品・サービスの輸出拡大に期待がかかる。カーク通商代表はその点を踏まえ「全米でより多くの高給雇用創出への後押しとなる」と述べている。

WTO事務局資料によると、パナマは2011年に6.9%の平均実効関税率〔農産品:12.4%、非農産品(鉱工業品):6.0%〕を課している。パナマは今回のFTA発効直後に情報技術機械、農業・建設機械、航空機・部品、医療・科学機器、環境関連製品、医薬品、農薬などを含む鉱工業品目全体の86%に当たる関税を米国からの輸入に限り撤廃し、10年以内にほとんど全ての品目で関税を撤廃する(USTRプレスリリース10月22日、添付資料参照)。農産品については発効直後に小麦、大麦、大豆、高質の牛肉、ベーコン、ほぼ全ての果実・野菜など含む全品目の半分近くに当たる関税を撤廃、残りのほとんどを15年以内に撤廃する予定としている。

<建設機械の輸出拡大も期待>
米国はパナマのITAへの加入約束を、米国・パナマFTA協定文書で取り付けた。ITAの2012年10月18日付文書でパナマのITA加入を確認できる。ITAへの加入は、コンピューター・部品、スマートフォンなどIT関連機器にかかる関税の無差別撤廃を意味する。ITA品目のほぼ全て(98.19%)に当たる関税がFTA発効直後に撤廃される予定のため、米国に限らず、WTO加盟国全てが近日中にメリットを受けることになる。

パナマのインフラ市場への参入機会の拡大も大きなメリットの1つだ。パナマは2015年の完成を目指すパナマ運河拡張工事のほか、パナマシティーの地下鉄建設プロジェクトなど多くのインフラ事業を進めている。米国・パナマFTAでは、クレーンやショベルカーといった建設機械輸入の関税全てが、発効直後に米国からの輸入に対してのみ撤廃される。このため、キャタピラーなど主要米国メーカーや在米日系関連企業にとってはインフラ市場への参入が比較優位となる。

米国のFTAは高度な物品貿易の自由化だけではなく、投資やサービス、政府調達分野の自由化、知的財産権分野の規律化などを相手国に求める。パナマも例外ではない。パナマのサービス市場は220億ドルに上るが(前記USTRプレスリリース)、多くの分野で越境取引、拠点の設置などの自由化が約束されている。USTRはサービス分野の中では特に通信分野の自由化について、(1)WTOの通信サービスの各種約束に基づき、正当かつ無差別な通信ネットワーク市場へのアクセス、(2)無差別かつコストを基本とした料金設定で、パナマ通信キャリアの固定ネットワークに対する米国通信企業の接続権利の供与、などをFTAのメリットとして挙げた。

2012年5月のコロンビアに続き、パナマとのFTAも発効した結果、在米日系企業の中南米ビジネスがいっそう円滑になることが期待される。

(水野亮)

(米国・パナマ)

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