新規雇用創出の補助金申請期間を2013年末まで延長
ブカレスト事務所
2012年10月31日
新規雇用創出を図る国家補助の申請期間を2013年末まで延長する政令が10月17日、公布された。新規雇用を創出するプロジェクトに対し、投資コストの最大40%もしくは50%に相当する補助金が対象。ただし、政府からの還付期間が5年延長されたため、還付の遅れに留意が必要だ。
<政府からの還付期間も延長>
新規雇用創出を図る2つの補助金、「持続可能な経済発展を図る国家補助(政令2008年1680号)」の申請期間が2013年末まで延長された(政令2012年998号)。改正前は、申請から還付まで含めて2013年までに完了している必要があった。国家補助の承認から申請まで最低でも4〜6ヵ月は必要で(1年以上かかったケースも)、承認を得るには遅くとも12年6月ごろまでに申請した方がよいといわれていた。
国家補助は原則後払いとなるため、企業は投資完了後に政府へ請求書を送付し、45営業日以内に政府から還付を受けることになっている。ただし、今回の改正により、政府からの還付期間が2013年12月31日から18年12月31日まで延長された。そのため、実際の還付処理が政令の規定より遅れる可能性がある点に留意する必要がある。
補助金は原則、全産業が対象となるが、一次農産物、水産、炭鉱、鉄鋼、輸送、造船、合成繊維は対象外となる。政府は主要産業への投資案件を支援することによって、地方への経済波及効果を狙い、国内経済の立て直しを行う方針だ。
<対象分野など変更なし>
「持続可能な経済発展を図る国家補助」の予算上限は10億ユーロ(年間2億ユーロ)で、補助金の上限はブカレスト市・イルフォフ県は適用コストの最大40%(最高2,250万ユーロ)、それ以外の地域は同50%(最高2,813万ユーロ)。有形・無形固定資産にかかるコスト〔工業用建物(生産ホールなど)の建設・拡大、設備の購入、特許権やライセンスの取得など〕、または雇用コスト(給与、社会保障費)が補助金の対象となる。投資額が1億ユーロ以上の場合にのみ、土地の購入も対象と見なされる。
この他に、「地域発展を図る国家補助」があり、予算上限は5億7,500万ユーロ(年間1億1,500万ユーロ)で、補助金の上限はブカレスト市・イルフォフ県は適用コストの最大40%(最高3,000万ユーロ)、それ以外の地域は同50%(最高3,750万ユーロ)。補助対象は、「持続可能な経済発展を図る国家補助」と同じく、有形・無形固定資産(土地の購入も含む)または雇用コストとなる。
詳細は「外資に関する奨励」を参照。
「持続可能な経済発展を図る国家補助」は、2010年に初期投資額を最低500万ユーロ、かつ新規雇用人数を最低50人に改正(改正前は初期投資額が3,000万ユーロ以上、かつ最低300人の新規雇用を創出することが条件)し、補助金の対象プロジェクトを拡大した(2011年12月20日記事参照)。「地域発展を図る国家補助」については、初期投資額が1億ユーロ以上、かつ最低500人の新規雇用を創出することが条件となっており、2008年から変更されていない。
<実際の補助率は投資額の35%程度>
「持続可能な経済発展を図る国家補助」について、公共・財務省の国家補助の承認を受けた企業一覧によると、プロジェクトへの補助総額は約2億7,900万ユーロで、投資総額の約35%に相当する(2012年5月末時点)。
このうち、最高額は自動車部品大手ロバート・ボッシュ(ドイツ)の2,599万ユーロ(投資額の34%)。同社は2013年内にクルージュ県の「テタロム3工業団地」に自動車用電子部品工場の操業を予定している(2012年6月13日記事参照)。
なお、2012年1〜5月に国家補助の承認を得た主な企業は以下のとおり(補助金の承認日順に記載)。
ロムキャブ(通信・自動車用高圧ケーブル、ルーマニア)、クリニカ・ポリサノ(医療サービス、ルーマニア)、ボッシュ・レックスロス(自動車用速度センサー、ドイツ)、DRMドラクセルマイヤー(ワイヤーハーネス、ドイツ)、プラスト・インベストメンツ(チャイルドシート、ルーマニア)、ロバート・ボッシュ(自動車用電子制御システム、ドイツ)、アストラ・バゴアネ・カラトリ(鉄道車両、ルーマニア)
「地域発展を図る国家補助」において、2012年5月末までに承認を得たプロジェクトはトゥルチェニ火力発電所(ルーマニア)の効率化の1件のみ。
(上田恵子)
(ルーマニア)
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