フランス自動車メーカーの世界総生産台数、11年は微減−国内生産は高付加価値車に特化へ−

＜上半期は震災、下半期は債務危機で生産調整＞
11年の乗用車の世界総生産台数をメーカー別にみると、PSAプジョー・シトロエングループが前年比1.6％減の316万1,504台、ルノーグループ（ダチア、ルノーサムスンを含む）は2.0％増の244万3,096台だった（表1参照）。ルノー・ブランドは国内生産が6.4％減と落ち込む一方、国外生産は8.5％増と好調で、グループ傘下のダチア（0.7％減）、ルノーサムスン（11.9％減）の減産分を相殺した。

11年上半期は東日本大震災による部品調達難が響いた。日立グループからディーゼルエンジンの部品を調達しているPSAは、3月下旬から部品調達難を理由に、国内の一部工場の生産水準を通常の40〜75％に抑えた。ルノーグループはルノーサムスンの韓国・釜山工場で20〜30％の減産を実施した。

トヨタもサプライチェーンの混乱で欧州での生産調整を迫られた。「ヤリス（日本名：ヴィッツ）」を生産する北部バランシエンヌ工場は、日本からの部品調達難を理由に、4月21日から5月2日まで生産を一時停止した。5月中旬から生産ラインが回復し、7月から同工場で「ヤリス」のハイブリッドモデルの生産を開始した。

下半期は欧州債務危機に伴う景気後退を見越し、PSAとルノーの両社は断続的に生産調整を実施した。この動きを受け、国内乗用車生産台数は、第3四半期が前年同期比6.6％減の31万6,039台、第4四半期は前年同期とほぼ横ばいの40万2,482台と低迷した。

一方、11年の軽商用車の世界総生産台数は前年比12.8％増の80万2,448台、大型トラックは29.2％増の4万1,169台となった。商用車は販売が上向いており、11年も増産が続いた。

＜欧州域外の販売は増加＞
11年の乗用車（新車）の国内販売台数は、前年比2.1％減の220万台だった。政府の新車買い替え補助金制度の終了が響いた（2012年1月10日記事参照）。

PSAとルノーグループの11年の世界総販売台数は、乗用車が1.1％減の309万1,538台、軽商用車が3.6％増の272万2,062台だった。欧州での販売台数は、PSAが6.1％減、ルノーグループが5.7％減と両社ともに縮小した。

一方、欧州域外の販売は好調だった。PSAは南米向けが10.7％増、中国向けが7.7％増、ロシア向けが34.8％増となった。ルノーグループの欧州域外の販売台数も19.2％増加した。11年の欧州域外販売の割合は、両社ともに全体の4割を超えた。

＜新興国への生産シフトを加速＞
また、11年のフランスの自動車メーカーによる国内の乗用車（新車）生産台数は、前年比0.8％増の167万8,312台となった。ルノーは6.4％減、プジョーは0.8％減と低迷したが、高級車の「シトロエンDS5」の生産を開始したシトロエンが10.4％増となり、全体を下支えした。

乗用車の国内生産の比率は新興国への生産シフトにより、低下している。ルノーの国内生産比率は18.2％と、09年から約3ポイント低下した。PSAは09年より約1ポイント低い39％となった。

今後も新興国への生産シフトは続くとみられる。ルノーは11年10月、ブラジル工場を2億ユーロかけて増強する方針を発表した。PSAは中国での増産体制を加速し、13年に長安汽車集団との合弁会社が現地生産を開始する（年間20万台）ほか、東風汽車との合弁企業が建設する第3工場も13年に稼働する予定だ（同15万台）。同社は11年9月、インドのグジャラート州と生産拠点の設置で調印、14年から稼働する計画だ（同17万台）。

他方、フランス国内では商用車や電気自動車など高付加価値車に生産を特化するとみられる。ルノーは1月、14年からの高級車の国内生産に向け、国内の2工場に6億5,000万ユーロを投資する計画を発表した。ただ、足元では欧州での景気減速を受け、生産調整が続く。PSAは2〜3月にかけて断続的に減産を実施する。同社は12年末までに8億ユーロの経費削減と、6,000人（国内で5,000人）の人員削減を行う計画を公表している。

（山崎あき）

（フランス）