ムーディーズ、ユーロ圏6ヵ国の長期国債を格下げ

(ユーロ圏、EU)

欧州ロシアCIS課

2012年02月15日

米大手格付け会社ムーディーズは2月13日、欧州9ヵ国の長期国債の格付けを発表し、うち6ヵ国を格下げした。格下げの主な理由として、ユーロ圏の制度改革の見通しと危機対処能力の不確実性、欧州のマクロ経済の低迷などを挙げている。

<スペインを2段階、イタリアなどを1段階格下げ>
ムーディーズは今回の発表で、スペインを2段階、イタリア、ポルトガル、マルタ、スロバキア、スロベニアを1段階格下げした(表1参照)。また、オーストリア、フランス、英国について、格付けそのものは最上格のトリプルAを維持するものの、長期見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変えている。

表1ムーディーズによる格付け

ムーディーズは今回の判断の要因として以下の3点を挙げた。

(1)ユーロ圏の財政・経済の枠組みにおける制度改革の見通しと危機対処能力の不確実性
(2)欧州全域のマクロ経済予測の低迷と、それに伴う各国の緊縮策や構造改革への悪影響
(3)前述の要因が、市場への信頼や緊張状態の続く国家や銀行に与え得るさらなる衝撃

各国別にみると、唯一の2段階格下げになったスペインについては、厳しい財政状況に言及している。特に、2011年の財政赤字が予想を大幅に上回り、想定外の特別措置を講じる必要に迫られたことが大きかったようだ(2012年1月17日記事参照)。イタリアについては、スペイン同様厳しい財政状況を挙げ、特に公的債務残高の大きさや高い資金調達コストを問題視している。また、それらに対処する政府の再建策が達成不可能となるリスクの高さにも言及している。

ポルトガルについては、予想以上に長引く深刻な不況や拡大が続くと見込まれる公的債務残高、非常に不安定なギリシャ情勢の影響を格下げ要因として挙げた。しかし、ポルトガルの格下げが1段階にとどまったことについては、IMFとEUの支援プログラムの下で、政府の財政赤字削減や構造改革が順調に進んでいるためだとしている。そのほか、マルタ、スロバキア、スロベニアについては、もともとの経済基盤の脆弱(ぜいじゃく)さから、債務危機の影響を大きく受けやすいと判断した。

<オーストリア、フランス、英国の長期見通しはネガティブに>
長期見通しをネガティブに変えた3ヵ国について、オーストリアは、不安定な中・東欧市場へのエクスポージャーの大きい銀行部門が、政府のバランスシートでの偶発的債務の割合を大きくしているという。

フランスについては、大幅な財政赤字と、それに対処する政権の脆弱さに言及している。フランスの財政赤字はほかのトリプルAの国に比べ、好ましくない状況だ。1月末のフィッチに続く格下げ(2012年1月30日記事参照)とまではならなかったが、長期見通しをネガティブとしており、政府の経済・財政改善政策の行方次第では、格下げの可能性も示唆している。4〜5月の大統領選挙を前に各候補者は財政赤字削減を公約しているが、先行きは不透明だ。

英国については、今後数年間は経済停滞が予測されており、財政再建の実行性の不透明さを挙げた。ユーロ圏外であっても、貿易や金融面でのユーロ圏とのつながりの強さから、あらゆる面で影響を受けるリスクは高いとしている。

今回のムーディーズによる格下げは、1月13日のスタンダード&プアーズ(S&P)による9ヵ国一斉格下げ(2012年1月16日記事参照)と、1月27日のフィッチによる5ヵ国格下げに続くもの。これで大手格付け会社すべてが、ユーロ圏の長期国債を格下げした。ギリシャに対する支援については、その条件となっている緊縮策がギリシャ国会で承認されたものの、国民の反発は大きく、緊張状態が続いている。

なお、3格付け機関による主要国の格付けは表2のとおり。

表2主要格付け機関の評価(12年2月15日現在)

(水野嘉那子)

(ユーロ圏・EU)

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