フィッチ、ユーロ圏5ヵ国の長期国債を格下げ

(ユーロ圏、EU)

欧州ロシアCIS課

2012年01月30日

大手格付け会社フィッチ・レーティングスは1月27日、ユーロ圏6ヵ国の長期国債の格付けを発表し、うち5ヵ国を格下げした。格下げの主な理由として、ユーロ圏が直面する潜在的な財政・金融危機に対して有効な政策が打ち出せておらず、先行きが不透明なことを挙げている。

<イタリア、スペイン、スロベニアは2段階格下げ>
フィッチは今回の発表で、イタリア、スペイン、スロベニアの3ヵ国の長期国債を2段階、キプロス、ベルギーを1段階格下げした(表参照)。

フィッチによる格付け

格下げの要因として、ユーロ圏の財政・金融危機に対する有効策の欠如と先行きの不透明感が各国共通に挙げられている。

個別にみると、イタリアは公的債務残高の大きさと、潜在的成長力の低さが主な要因だ。政府の財政赤字削減と構造改革への取り組みが、より厳しい格下げを防いだとしているものの、今後の格下げの可能性も排除していない。11年11月に発足したモンティ内閣による財政再建がカギになるだろう。

スペインは財政赤字のGDP比率の高さを主な要因としている。キプロスは、国内銀行のギリシャ国債保有率が高く、現在ギリシャ政府と協議中の債権ヘアカットの結果次第では、資本増強の負担が大きくなるというリスクを挙げている。スロベニアはユーロ圏全体の債務危機の影響に加え、銀行部門の財務状態の悪化が続いているとしている。また、ベルギーは債務危機の影響で、12年の資金需要の割合がGDPの19%程度と、ギリシャ、イタリア、ポルトガルに続き4番目に高いとされることを挙げている。

アイルランドは、IMFとEUによる支援プログラムの下で財政・構造再建が順調に進んでいるとして、格下げを見送った。ただし、同国の輸出依存型の成長モデルは欧州全体の景気後退の影響を受けやすいとして、見通しはネガティブとしている。

今回の格下げで投資不適格に陥った国はないものの、債務危機の渦中にあるイタリアとスペインの2段階格下げは、市場に大きな影響を与えそうだ。さらなる長期国債の利回り上昇も懸念される。

なお、今回の格下げは1月13日のスタンダード&プアーズ(S&P)の9ヵ国一斉格下げに(2012年1月16日記事参照)続くもので、ユーロ圏に対する不信や警戒感がさらに拡大する可能性は否めない。

(水野嘉那子)

(ユーロ圏・EU)

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