特別消費税率を引き上げ−自動車・たばこ・アルコール飲料・携帯電話が対象−

(トルコ)

イスタンブール発

2011年10月21日

シムシェク財務相は、自動車、たばこ、アルコール飲料(一部ソフトドリンクを含む)、携帯電話に対する特別消費税(SCT)の引き上げを発表した。政府は2012年に2,779億2,900万リラ(1リラ=約41.3円)の税収を見込んでおり、今回の増税で約55億リラの税収増になるとしている。財務相は、同税の引き上げは輸入抑制にもつながり、経常赤字削減にも寄与すると期待している。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<高級自動車は84%から130%に>
政府は10月12日付官報で、自動車、アルコール飲料、たばこ、携帯電話に対するSCT(トルコ語ではOTV)の引き上げを発表した(添付資料参照)。

自動車は、2000cc以上が84%から130%に、1600〜2000ccは60%から80%に引き上げられた。1600cc以下は37%で据え置かれた。また電気自動車に関しても85キロワット(kW)までは3%、85〜120kWは7%、120kW超は15%と設定された。

たばこは63%から69%に引き上げられ、葉巻は30%から69%に倍増した。また、アルコール飲料も、ビールの1リットル当たりの一律税が0.44リラから0.53リラに、発泡ワインは16.12リラから19.82リラに、コーラ、炭酸水などのソフトドリンクも20%から25%に引き上げられた。携帯電話は20%から25%になった。

SCTは、1999年の震災復興税をベースに2002年8月に導入されたもので、付加価値税(VAT:1〜18%)と異なり、出荷後、一度だけの課税で、消費者への販売価格に含まれる。以下の4つのグループに対して課税される。

(1)石油製品、天然ガス、潤滑油などの副産物
(2)自動車とほかの車両、自動二輪、飛行機、ヘリコプター、ヨット
(3)たばことたばこ製品、アルコール飲料
(4)ぜいたく品(香水、化粧品、毛皮、デジカメ、携帯電話など)

<自動車販売に逆風、業界は反発>
SCTの増税発表を受け、大手自動車メーカーのトファシュ(フィアット)の株価は1.41%減の6.98リラ、高級自動車ディストリビューターのドウシュ自動車は3.35%減の4.04リラに下げている。自動車セクターは増税に強く反発しており、自動車販売者協会(ODD)のバイラクタル会頭は、トルコが世界的な飛躍を図るこの時期に、売り上げだけでなくコスト増の圧力となり、長期的な投資計画策定が困難になるとの懸念を表明した。

ルノーは、当面値上げはしないとしているが、小売価格では、輸入車主体の高級車(2000cc以上)で25%増、中級車(1600〜2000cc)で12.5%増の価格上昇圧力になるという。現在、トルコの自動車に対する課税水準はデンマークに次いで欧州2位という。

トルコは、たばこ、アルコール飲料に対する税率の高さでも知られており、現在、たばこの販売価格に占めるSCTとVATの割合は84.25%だ。フィリップ・モリスは10月24日の週に1箱当たりのたばこ販売価格を28〜44%値上げすると発表し、人気ブランドのマルボロの小売価格は、1箱7リラから9リラに引き上げられた。日本たばこインターナショナルも同様の値上げを発表している。

これまでも国内平均販売価格約3ドルに対して、約1ドルと安いシリア、イラク、グルジアなどからの非公式販売が急増しているとの情報があったが、今後はさらに密輸増が懸念される。

トルコ工業・企業家協会のボイネル会頭は、SCTといった間接税の引き上げは容易かもしれないが、政府は間接税に依存した税収から脱却する必要があると主張した。会頭は、間接税の負担にあえぐのは主に低所得層で、公平な税負担を視野に入れた税制改革が必要だと強調している。なお、11年予算では歳入の83.2%が税収で、そのうち66.8%がVAT、SCTなどの間接税になっている。

関連業界の反発が大きい一方で、金融市場仲介大手のBGCパートナーズのチーフ・エコノミスト、オズギュル・アルトゥ氏は、政府の増税決定はマクロ経済的意味が大きいとし、歓迎すると評価した。シムシェク財務相は、今回の増税によって、アルコール飲料から約7億7,100万リラ、たばこから27億5,000万リラ、自動車から9億2,000万リラ、携帯電話から6億6,000万リラの税収増をもたらすとし、「今回の増税は、経常赤字を一定の水準に制限することを狙ったものだ」と述べた。財務省は、増税によって12年末までに55億リラの税収増が期待されているとしている。

(中島敏博)

(トルコ)

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