日本茶の魅力を食のプロにアピール−シカゴで販促イベント−

(米国)

シカゴ発

2011年11月10日

ジェトロは10月20日、シカゴ市内の有名料理学校ケンドールカレッジで、在シカゴ日本総領事館と共催で、食のプロ向けに日本の緑茶の販売促進イベントを開催した。約100人の参加者が緑茶の特徴や多様性を学び、緑茶を使った料理や菓子づくりの実演を見学した。

<多様な緑茶に感嘆の声>
参加したのはシェフ、レストラン、カフェや茶販売店のオーナー、バイヤー、料理学校の生徒ら約100人。冒頭、2011年10月に在シカゴ日本総領事に着任したばかりの岡村善文氏が、世界一の長寿国の日本で茶が頻繁に飲まれていることや、茶の効能についての研究が盛んなことに触れ、米国人もぜひ日本の緑茶を味わってほしいとアピールした。続いて、緑茶の専門家が日本の緑茶の種類、他国産の茶との違いや特徴、茶の入れ方、メニューへの取り入れ方を講義した。

その後、シカゴのミシュラン1つ星レストラン「ボンソワーレ」のオーナーシェフ、シン・トンプソン氏が、茶を隠し味に使った料理と、玄米茶に新鮮なアンズの果汁を用いた鮮やかなピンク色の飲み物のデモンストレーションをした。母が日本人というトンプソン氏の独創的なレシピときびきびした動きに、参加者から感嘆の声が上がった。

ボンソワーレのオーナーシェフ、シン・トンプソン氏が料理の実演

また、シカゴの有名な菓子料理学校French Pastry Schoolの教授で、全米ペイストリー選手権の優勝メンバーでもあるシェフ、デラ・ゴセット氏は、抹茶を使った菓子づくりを実演。経験豊富なゴセット氏も、茶を使ったレシピを作成したことがほとんどなく、デモンストレーションに当たってずいぶん頭を悩ませたと話し、その上で緑茶がいかに菓子の素材として魅力的かを説明した。

French Pastry Schoolの教授、デラ・ゴセット氏も菓子づくりを披露

デモンストレーション終了後、参加者は緑茶関連製品のサンプルを実際に味わい、緑茶の多様性と奥深さを学んだ。イベントに参加したケンドールカレッジのある教官は「生徒を連れてきたが、自分自身大変勉強になった。ほかの教官も緑茶の奥深さ、多様性、種類の豊富さ、魅力に感動し、半ば興奮気味で、会場から出た後も会話が絶えなかった。生徒もそれぞれ目を丸くして聞き入っていた」と語った。

イベントの様子

<シカゴは日本食材の開拓余地大>
サンプルを提供したある日系業者は「こういった取り組みは、直ちにビジネスに結びつくわけではないが、シカゴは日本産食材の普及度がニューヨークやロサンゼルスと比べてまだまだで、食のプロに緑茶を実際に知って学んでもらう地道な取り組みが必要。その意味で貴重な機会だった」と語った。

シカゴは食に保守的な消費者が多く、アジア系人口が少ないといったことから、ニューヨークやロサンゼルスに比べると日本食材の普及度は低い。逆に、まだまだ市場開拓の余地が大きいともいえる。日本食材の市場を拡大するためには、食のプロにその魅力や違いを直接訴え掛ける地道な活動が今後とも必要だろう。イベントを共催した在シカゴ日本総領事館の担当者は「11年5月の日本酒輸出イベント(2011年5月31日記事参照)に続き、日本産食材をアピールする場を設けたことで、日本産食材への注目度が上がってきたと感じた。シカゴではまだ市場が小さいので、オールジャパンで日本産食材をアピールする場を引き続き設けて、日本産食材への認知度をさらに高めたい」と語った。

<放射線風評被害は限定的に>
静岡などの緑茶の主要産地では、原子力発電所事故の後、放射線の影響による深刻な風評被害が生じている。イベントに参加した静岡の業者は「日本では贈答用の需要に深刻な影響が生じている」と語った。

一方、米国では、最近はテレビなどのメディアで日本産食品の放射線問題が大きく取り上げられることはほとんどない。このイベントに参加した食のプロに対して、放射線の影響について質問したところ、大半の回答者は「影響を感じていない」と答えた。影響を指摘したある食のプロは「初期の震災関係の報道以降、情報がなく、そのままの印象となっている。適切な情報提供を望む」と指摘した。

(古城大亮)

(米国)

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