09年、先進国はマイナス成長に−IMF、世界経済見通しを下方修正−

(世界)

国際経済研究課

2008年11月11日

IMFは11月6日に「世界経済見通し」を発表した。2009年の世界の実質GDP成長率を10月の発表から0.8ポイント下方修正し、2.2%と予測している。また、09年の先進国の成長率予測もマイナス0.3%と下方修正した。途上国の成長率は、商品市況の急速な悪化による資源輸出国の成長鈍化と、一部の国の金融環境の悪化によって、5.1%と前回予測から1.0ポイント引き下げた。

<世界全体の成長率は2.2%と予測>
IMFはわずか1ヵ月で下方修正を迫られた背景として、a.金融危機の影響が世界経済に急速に波及した結果、先進国の需要が前回の想定以上に鈍化している、b.先進国の需要が減少した結果、商品価格が急速に下落し、資源国が打撃を受けている、c.金融危機の影響で信用の低下した一部途上国で資金の流出が進んだ、といった点を挙げた (2008年10月17日記事参照)。2.2%の世界経済成長率は、ITバブルが崩壊した01年以来の低水準となる。

IMFは、現状では世界経済の見通しは異例なほど不確実で、金融危機がさらなる下振れリスクとなり得ると述べている。他方、これまで各国で導入された財政政策や金融政策の効果は限定的であるものの、今後の追加的な財政出動や金融緩和などの政策によっては、世界経済の後退をある程度食い止めることができるとも指摘した。

<先進国のマイナス成長予測は初めて>
主な先進国・地域の09年の成長率予測は下方修正の結果、米国がマイナス0.7%、ユーロ圏がマイナス0.5%、日本がマイナス0.2%と、それぞれマイナス成長に転じる見込みだ(表参照)。金融危機の影響は、前回10月の分析時点よりも深刻かつ長期化すると見込まれており、米国では金融資産が減少した家計の消費抑制や企業の投資活動の減速が続くとみている。ユーロ圏も、米国とともに金融危機の影響が続くとの見通しだ。日本も先進国需要の減少で、成長を牽引してきた輸出の減速が見込まれる。先進国の成長率がマイナス0.3%と、通年でマイナス予測されたのは第2次大戦後では初めてとなる。

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途上国・地域についても、原油価格がピークから約50%も急落し、商品価格も下落した結果、09年の成長率の鈍化を予測している。ロシア(成長率3.5%、2.0ポイント下方修正)、アフリカ(4.7%、1.3ポイント下方修正)、中東(5.3%、0.6ポイント下方修正)などで影響が大きいとみている。

また、先進国企業が流動性確保のために海外投資の引き揚げを加速させた結果、一部の新興国で資本の急速な流出が進み、金融情勢が著しく不安定になっている。その結果、特にロシアを除くCIS諸国については09年、前回予測から4.6ポイントの大幅な下方修正をし、経済の急速な悪化を予測している。中東欧も09年は2.5%成長(0.9ポイント下方修正)にとどまると予想されている。IMFがハンガリーに緊急融資を決定したように、金融不安による海外投資家離れを原因とした経済の減速が顕著となっている。

世界経済の成長を下支えしてきたアジアの新興国も、先進国需要の鈍化を受けて09年、中国が8.5%(0.8ポイント下方修正)、インドが6.3%(0.6ポイント下方修正)と過去数年に比べ、成長が減速するとの見通しだ。

<各国の協調した政策を期待>
IMFは、各国が協調して追加的な需要刺激型の財政政策や金融機関への資本注入、さらに金融政策を効果的に投入することで、世界経済の後退をある程度抑制できると述べている。財政出動の余地のある国としては、米国、ドイツをはじめとする欧州、中国などを挙げた。金融政策については、商品価格の下落によって世界的なインフレ懸念が収まりつつあるため、各国中央銀行の金利引下げが期待されるとしている。

(安田啓)

(世界)

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