欧州委、英総選挙後に離脱協議本格化の方針-EMAやEBAなど専門機関の所在地はEU側で決定-

(EU、英国)

ブリュッセル発

2017年04月25日

 欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長が英国のテレーザ・メイ首相との電話会談で、6月8日に実施予定の英国総選挙を待って英国とのEU離脱をめぐる協議を本格化する方針を示した。また、ロンドンに本拠を置いている欧州医薬品庁(EMA)や欧州銀行監督局(EBA)の移転問題について、「EU専門機関はEU域内に置かれるべきで、その決定はEU27ヵ国が行う」とし、英国との協議では取り上げない姿勢だ。このほか、英国総選挙までにEU側で進める準備プロセスも示された。

メイ首相との電話会談で方針伝える

欧州委のマルガリティス・シナス首席報道官は4月19日の定例記者会見で、ユンケル委員長がメイ首相との電話会談において、6月8日に実施予定の英国総選挙以降に英国のEU離脱をめぐる協議を本格的に開始すると語ったことを明らかにした。電話会談は4月18日夕刻に行われたもよう。

同首席報道官は、記者団からの質疑応答の中で、英国のデービッド・デービスEU離脱相が、英国に本拠を構える欧州医薬品庁(EMA、2016年10月17日記事参照)や欧州銀行監督局(EBA、ジェトロ「外資に関する規制」参照)の移転問題をEU離脱協議で取り上げる意向を示したことについて問われ、「EU専門機関の所在地はEU域内に置かれるべきだ。移転先についてもEU加盟27ヵ国として決定する」との認識を明らかにした。そして、「(EU専門機関の)移転問題は離脱協議の対象外だが、英国には両機関の円滑な移転を支援する義務がある」とも語った。

今後のEU側の協議準備プロセスも示す

また、記者団からの「(相互の)市民権や英国のEUに対する拠出金未払いの問題が協議に影響を及ぼすと考えられるが、これらの問題が英国での総選挙で争点となった場合、欧州委のミシェル・バルニエ首席交渉官は何らかの対応を行うことはあるのか」との質問に対して、シナス首席報道官は「この選挙は英国国内の問題で、欧州委としては関与しない。欧州委は、4月29日にEU加盟国が採択する予定のガイドライン(2017年4月3日記事参照)に基づき、EU理事会が5月に採択する予定の交渉権限(マンデート)に基づいて行動する」と答え、欧州委などEU側が英国での選挙に対して、何らかの行動を取ることは想定していないことを明らかにした。

このほか、「4月29日の特別欧州理事会と6月8日の英国総選挙の間に何が起きるのか」との記者団の問いには、「まず、4月29日の特別欧州理事会がガイドラインを採択。続いて、5月上旬(おそらく5月3日)に欧州委が理事会にマンデートの付与を求める勧告を採択。これに基づいて、おそらく5月22日に予定されているEU理事会で交渉権限(指令)が採択されるだろう。その後、6月8日の英国総選挙を経て本格的な交渉を開始する」との道筋を示した。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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