製品の種類や色味など、最近のトレンドについて知りたい。また、消費者の日本製品への関心や理解度に変化はあるか。その理由は?
海外発トレンドレポート
デザイン・日用品市場のトレンドと日本製品への期待(米国のデザイン・日用品分野最新トレンドシリーズ(4))
(米国・NY発)
2023年2月14日
現地バイヤーへのインタビューを元に、米国市場における最新トレンドや消費者の動向、製品に求められるパッケージング、日本と違う米国市場の常識、バイヤーが日本企業のSNSに期待する事柄等について解説する。
最近の米国のデザイン・日用品市場のトレンド
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質問:
M氏:
展示会では、全体的に前年よりもカラフルなブースが増えて、私の目を惹いた。ナチュラルな色合いも人気はあると思うが、しばらくそのブームが続いたので、カラーアイテムが新鮮に映った。商品ではお茶関連、ルームフレグランスなどが気になっている。
C氏:
展示会では、鮮やかな色の商品が多く、目を惹くものがあった。一般的にも鮮やかな色の商品が目を惹いているように思う。私のショップでは、一点物のハンドメイドアイテムが注目を浴びている。日本の工芸品について、SNSやインフルエンサー、口コミなどで学ぶ人が増えているのだと思う。彼らは、日本製の多くのものが、品質が良く、歴史や独自性を持っていることを理解している。
S氏:
最近は、カラフルな製品がよりポピュラーになってきた。ベーシックカラーは、以前人気だったグレー系から今はベージュ系に変わってきた。商品カテゴリーとしては、4年前までは需要が多くなかった小ぶりのヘアアクセサリー、ジュエリー、靴下といったパーソナルアイテムが生活雑貨店の中でトレンドになっているように思う。私のショップでは、数年前に人気だったマグカップへの熱は冷めて、アロマキャンドルが最近のヒット商品になっている。引き続き「自分ケア」の商品のトレンドは続くと考えられる。
テーブルトップとキッチン用品もよく売れる。日本製品もあるが、顧客にとっては良いデザインが購入の決め手になっているように思う。ご飯茶碗のような小さいサイズの器も以前よりもよく売れている。日本製であることや本来の使用目的は、積極的には説明していない。
Y氏:
パンデミック中は、キャンプなどアウトドア関連の商品(本格的なギアではなく大きなトートバッグなども)のブームがきて、よく売れたが、その流れが今も残っているように思う。ポップなカラーパレットが好まれる傾向にあると思う。
日本製品への理解や興味が深まっているように感じる。パンデミックを通して、日本への旅や日本製品に対する憧れが強くなったように感じる。特に40〜50代が日本製品へのリスペクトが強い。私のショップでは日本の文具を中心に扱っているが、客層は、最初はアジア系が多かったが、今はさまざまな人種に広がってきた。以前は粗末な品で良かった米国文具市場だったが、デザインや質の良さへの認知が増えてきたのではないだろうか。
(左)SHOPPE OBJECT会場の日本製文具のブース。(筆者撮影)。
(右)NY NOW会場のブース(筆者撮影)。
製品に求められるパッケージング(包装)とは
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質問:
最近のパッケージのトレンド、日本製品のパッケージへの感想などが知りたい。
C氏:
クリーンでモダンなパッケージと、ヴィンテージ感のあるカラフルなパッケージの両方が流行っていると思う。日本のパッケージはラッピングの袋に切り目が入っているなど、ユーザー フレンドリーだと思っている。
M氏:
米国のパッケージはエコがトレンド。リサイクルが可能なカードボード紙などの素材が主流になっている。最近は簡易包装を好む顧客が増えているので、ギフトボックス付き商品のボックスはオプション(別料金)にしてほしいとブランドに伝えるようになった。ただ、日本の製品はパッケージ自体にもデザインが施されており、パッケージが商品プレゼンテーションの一部となっているので、その点を重視して、簡易包装のトレンドはあまり気にしなくて良いと思う。
OEM生産、PB生産、外注加工について
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質問:
日本企業とのOEM生産、PB生産、外注加工などに興味があるか。不安はないか。
(左)SHOPPEOBJECT会場内にて、鹿児島県のお茶の生産者と組んでオリジナルのパッケージを制作・卸売しているフィラデルフィアの企業(筆者撮影)。
(右)日本各地の生産者から茶葉を仕入れてオリジナルのパッケージで販売するブルックリンにある日本茶専門店の店内(筆者撮影)
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C氏:
日本企業とのOEMには興味がある。唯一の懸念は、最初のコミュニケーションだが、一緒に仕事をするようになれば大丈夫だと思う。
S氏:
米国内の企業とのコラボではオリジナルのキャンドルのラインを持っている。納期、送料等の懸念がクリアになれば、日本企業とのOEMに興味はある。
M氏:
コラボレーションで製品を作ってもらえたら嬉しい。特に色をカスタムで作ってもらうことに興味がある。ミニマムロット数、納期、送料などが懸念材料である。
日本と違う米国市場の常識について
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質問:
米国市場の販売価格の設定方法などについて知りたい。
M氏:
日本では企業側が販売価格を設定して、そこから割り引いた価格が卸価格だと聞いたことがあるが、米国ではバイヤーが販売価格の設定を行う。米国の販売価格は最低でも卸売価格の2倍以上で、ショップの立地環境によってもその数値が変わる。家賃の高い大都市/NY, LA, DCでは約2.5倍、私のショップがあるボストンでも2.2~2.5倍くらいが相場。商品のサイズなどによっても価格を調整する。セラミックなど重くかさばるものは、ラッピング資材を多く使う点などを考慮して価格設定を行っているので単純に計算することは難しい。
以前、日本の陶芸家から、マークアップ(卸売価格への上乗せ額)が高すぎると言われたことがある。作り手をもっとリスペクトしてほしいとも言われたが、理解できなかった。
S氏:
日本からの送料が法外に高い。1,200ドルの注文に対し、600ドルの送料をカバーするために、商品をかなりマークアップしなければならない。どんなに素晴らしい商品でも、送料の高さが購入のハードルを高くしている。私のショップでは多くのハンドメイド製品を販売しており、利益率の悪い商品は、オーダーを断念せざるを得ない。
取引をしたいと思う日本企業の決め手とは
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質問:
製品の良さ以外に、取引をしたいと思う日本企業の決め手や取引上の心配点は?
C氏:
海外発送の経験があるかどうか、送料、オーダーから出荷までの迅速さなども考慮する。
S氏:
オーダー方法、支払い方法が難しくないかが決め手。年間を通してよく売れる商品は、欠品がないようにその都度補充(2ヶ月に一回くらいのペースでオーダー)していているが、オーダー方法や支払い方法が難しいと、オーダーする回数が減ってしまうので、その点を留意してほしい。日本企業の梱包は素晴らしい。過去、商品が壊れて届くという問題は一度もなかった。こういう信頼性も、商品だけでなく、日本企業との取引に積極的になる所以である。
日本に買い付けに行っているか。買い付け時の印象など
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質問:
日本へ買い付けに行く際に、訪問する日本企業に期待することは何か
C氏:
年に1、2回は日本に行くようにしている。日本の業者は海外との取引に熱心なところが多いが、商品や商談資料等の準備が不十分でまだセットアップされていなかったり、米国への輸送に不安があったりすることがある。
S氏:
日本は、行きたい場所ナンバーワンだ。パンデミック中にその気持ちが強くなったが、まだ行ったことがない。日本の製品はクオリティの良さが魅力的だ。言葉の壁はあると思が、そんなに問題視はしていない。日本で企業を訪ねる際には、卸価格、発送準備期間、送料、商品の素材等の説明の準備を先にしておいてくれると、お互いに時間の無駄が省け、その分、親睦を深める時間に使えると思う。
M氏:
近年、米国ではアジアン・カルチャーについての理解が増している。特に日本への旅は欧米人にとって大変魅力的で、日本製品のバックストーリーを知るためにも、日本へ市場調査に出かけてみたい。
消費者の動向
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S氏:
パンデミック中の2年間は、本当にクレイジーだった(よく売れた)。2年連続で、毎月、前年比40%から60%アップしていたが、昨年の9月頃から状況が落ち着いてきた。買い控えは確実に起きている。人々が職場に戻ってきたのが大きな理由だろう。在宅勤務が少なくなり、自由に買い物に出かける人が減ったのだと思う。平日の売り上げが減って、週末になると売り上げが増えるのが私のこの仮説の裏付けになっている。不景気だとは思わないが、人々は2年連続の大出費で買い物への意欲が減少しているのだと思う。私のショップのオンラインビジネスは、パンデミック前も後もほぼ横ばいで、店頭販売が70%でオンラインは30%。数字的には小さく見えるが、オンラインはなくてはならない存在である。
ブランドのSNSについて
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質問:
バイヤーや消費者がブランドのSNSに求めるものとは?
M氏:
ソーシャルメディアは、インスタグラムを必ずやっていてほしい。その際はサイトとのリンクを忘れずに貼ることが重要。どれだけベンダーがそのプロダクトに思い入れがあるかを感じ取れるかが大事なので、写真にはこだわってほしい。サイト、SNS、展示会ブースに一貫性が欲しい。ブランドのインスタグラムのフォロワー数は気にならないが、取引先にフォローしてもらうと、商品のテイストが理解できて良い。ピンタレストは自分のインスピレーションを得るのに使うが、リサーチにはインスタグラムを利用する。
H氏:
ブランドとしての視点で回答すると、SNSやサイトを通してコンタクトしてくるところがあるので、アップデートを大事に考えている。ギフトショーでオーダーを入れてくれる人が多い。大手客先はショーで出会う確率が高い。
2023年のトレンドカラー
トレンド予測とカラーコンサルティングを行うPantone Color Institute™が、業界向けに発表した今シーズンのレポートでは、トップ10の注目カラーと、ファッションデザイナーが2023年春夏と秋冬の新コレクションの際に発表するであろう5つのコアなクラシックカラーの最新版を紹介している。
資料:https://www.pantone.com
2023年春夏のトレンドカラー
PANTONEによる2023年春夏のカラー
- トレンドカラー/ 高揚する生命力のある遊び心を感じるカラー
- クラシックカラー/ 静かな存在感と実用性
2022/2023年秋冬のトレンドカラー
PANTONEによる2022/2023年秋冬のカラー
- トレンドカラー/ 束縛から解放され、生きる喜びを感じ、エネルギーや生命力を高めるカラー
- クラシックカラー/ 安らぎと回復、快適さを満たすカラー
2023年のギフトアイデア
雑誌やテレビ番組のWebサイトで発信されている2023年の年間のギフトアイデアのサイトの例
まとめ
今回のバイヤーへのインタビューを通して、バイヤーの多くは、既成概念にとらわれないショップ独自の発想で商品選定を行っており、オーガニックに特化した商品が注目される昨今であっても、専門店でない限り、そこにはあまり執着していないことが分かった。日本製品のラッピングは、トレンドである「エコ」の概念に囚われずに、美しいデザインのパッケージを継続してほしいという意見が多かった。
日本製品の質や、発送時の梱包の丁寧さなどについては、評判とともに、バイヤーの信頼感は厚く、具体的なビジネス面では、バイヤー側も、人気がある日本製品は年間のオーダー回数をもっと増やしたいが、支払いやオーダー方法の勝手が好ましくなく、リピートオーダーにつながっていかないというジレンマがあり、支払いやオーダー方法の改善の検討を切望していることが明らかになった。
このように、バイヤーが望んでいることは明確であり、日本企業側も積極的に彼らの声を聞き、応える形で米国市場への進出を検討してほしい。
最後に、今回インタビューを依頼したバイヤーたちは、男女を混ぜており、年齢層も30代、40代、50代と、バイヤーとしてのセンスだけでなく、キャリアの面でも信頼が置ける方々である。忙しい中、時間をやり繰りしてインタビューに応じてくれたことから、日本企業への期待が伺われ、大変嬉しく思った点を追記したい。
マーケティングに関するアプローチとしては、全米を網羅していないが、デザイン・日用品のショップが多く、また需要が多い東海岸と西海岸の大都市のバイヤーである彼らの意見は、日本製品を扱う、また扱いたいと考えているショップの代表意見として充分参考になると考える。
日本の中小企業の皆様が、現地バイヤーの生の声を活用されて、米国市場で活躍されることを、協力してくれたバイヤーと共に願いながら、本レポートをまとめさせていただく。
- 作成
- ジェトロ・ニューヨーク事務所
- 執筆
- 中小企業海外展開現地支援プラットフォームコーディネーター 上野朝子
- 米国のデザイン・日用品分野最新トレンドシリーズ(NY発)
- (1)祝日・年間行事とバイヤーの年間スケジュール解説
- (2)パンデミックを乗り越え活気が戻ってきた展示会場
- (3)展示会出展時の留意点-取引を成功させるには
- レポートの利用についての注意・免責事項
- 本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)ニューヨーク事務所が委託先 上野朝子 に作成委託し、2023 年 2 月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、ジェトロおよび 上野朝子 は一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよび 上野朝子 が係る損害の可能性を知らされていても同様とします。
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