グリーン鉄生産プロジェクト開始
(ナミビア)
ヨハネスブルク発
2025年04月21日
ナミビアで4月11日、炭素排出のない鉄生産プロジェクト(Hylron Oshivelaプロジェクト:Hylronプロジェクト)が正式に稼働したと複数メディアが報道した。これは、ウォルビスベイ港近郊のアランディス地域にあるグリーン水素プラントで開始され、3月14日付の現地メディア「Namibian」によると、同プロジェクトは南部アフリカ初の再エネを使ったグリーン鉄生産施設となった。6億ナミビア・ドル(約45億円、NAD、1NAD=約7.5円)規模のプロジェクトで、落成式には、先日就任したネトゥンボ・ナンディ=ンダイトワ大統領(2025年4月8日記事参照)が参加して祝辞を述べた。同プロジェクトは、与党・南西アフリカ人民機構(SWAPO)にとって重要なマニフェストの1つで、同大統領は演説で「世界がナミビアに注目する今日、このプロジェクトは、自動車やエネルギー、製造業に不可欠な素材の鉄の生産で、各国がわが国を戦略的パートナーとして位置づけるものだ」と述べた。
HyIronプロジェクトは、ナミビアとドイツの再エネ、エンジニアリング企業が協力して実現したもので、HyIronの技術でグリーン水素を使用して直接還元鉄(DRI)を生産する。2024年5月にプラントの第1段階の建設が開始され、2025年3月には中国のペリック・ハイドロジェン・システムズ(Peric Hydrogen Systems)が供給する12メガワット(MW)の電解槽ユニットを使用して、グリーン水素生産を開始していた。この電解槽は南部アフリカ最大で、25MWの太陽光発電によって電力を供給する。試験段階で年間1万5,000トンのDRIを生産し、年間2万7,000トンの二酸化炭素(CO2)排出を削減できる予定だ。同プロジェクトにはドイツ連邦経済・気候保護省が1,370万ユーロ、EUおよびオランダが1,200万ユーロの「ブレンデッド・ファイナンス」(注)で支援した。HyIronはドイツの鉄鋼メーカーのベンテラー(Benteler)とのオフテイク契約を締結している(4月10日付「Business Day」)。
(注)公的資金と民間資金を組み合わせて、社会的課題の解決や持続可能な開発目標(SDGs)の達成を支援する投融資手法。
(堀内千浪、トラスト・ムブトゥンガイ)
(ナミビア)
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