海外における日本産食材サポーター店認定制度
日本食材サポーター店インタビュー itadaku(いただく)
ハラール食材を使って、伝統と本物の日本食を世界へ伝えるためにドバイで挑戦するレストラン
(インタビュー日:2025年10月8日)
所在地:ドバイ(UAE)
店名に込められた思い
ドバイの中心エリアにありながら、メインロードからも海沿いからも少し外れた通りにあるモールの中に所在する日本食レストラン「いただく」は、訪れる人々に“本物の日本”を体験してもらうことを目的に約2年半前に設立された。
店名の「いただく」には、食材そのものや生産者、食材の提供者、そして調理した者に対する感謝の気持ちが込められており、食事を通じて日本の文化や精神性を伝えるという思いが込められている。
このレストランを運営する坂上シェフと坂上マネージャーは、海外においても日本の伝統的な食文化を忠実に再現す ことにこだわりを持ち、料理だけでなく、空間、接客、器の扱い方に至るまで、日本の美意識と礼儀を徹底している。例えば、器の扱い方や料理の提供タイミング、椅子の高さなど、細部にまでこだわったサービスは、日本人ならではの気遣いが感じられる。
訪れた人が「まるで日本にいるようだ」と感じるような、細部まで配慮された空間づくりが特徴だ。
食材へのこだわりとハラール対応
「いただく」では、季節や気候に応じて食材を柔軟に選定しながらも、品質へのこだわりを徹底している。
日本から輸入する食材を中心に、埼玉県川越のさつまいも農家や兵庫県淡路島のたまねぎ農家など、古くからの生産者との関係を重視して調達を行う。岩手県産の椎茸やりんご、熊本産の黒毛和牛など、日本各地の食材も積極的に取り寄せている。顔の見える取引を通じて信頼性を確保し、料理の質を高めるとともに、食材への感謝を体現する姿勢である。
現地で調達可能な食材については、品質を厳しく見極めたうえで併用し、青ネギやジャガイモなど高品質なものは積極的に活用してコスト最適化を図る。豚肉やアルコールを提供できない環境下では、ハラール食材の魅力を最大限に引き出し、調味料や味の構成に工夫を凝らすことで満足度の高い食体験を創出している。 さらに、メニューには産地や原材料情報を明示し、食習慣や制限に対応した料理をわかりやすく表示することで、多様な食文化に配慮している。加えて、頻出メニューをマーキングする工夫を施し、マーキングされたメニューから注文されることが多い傾向を示している。
エミラティの嗜好の変化と日本食への関心
「いただく」の顧客層は、アラブ首長国連邦における住民の特性でもあるが、非常に多様で、エミラティ(アラブ首長国連邦国籍の人)を筆頭に、日本人、アジア系、欧米系など、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が来店している。特に近年、エミラティの日本食への関心が高まっており、日本への渡航予定者が予習目的で来店するケースや、日本からの帰国者がリピート利用するケースが増えている。
開店当初と比べて、顧客の味覚にも変化が見られる。生魚への抵抗感が大幅に減少し、より本格的な日本料理を求める声が多くなっている。これは、日本食が単なる“ヘルシー”や“トレンディ”な選択肢ではなく、文化的価値を持つ食として認識され始めている証でもある。
海外の日本食レストランは、現地の消費者の嗜好に合わせ、ローカライズされたメニューを提供するところが多いなか、「いただく」は、日本にある日本食レストランで提供されるものと同じメニューを提供するよう努めることで、現地の消費者が日本人の嗜好・食文化を理解することを期待している。
世界に広がる日本食文化と更なる挑戦
坂上シェフは、「本物の日本食文化を世界に広げたい」という強い思いを持っている。そのためには、単なる店舗展開ではなく、文化的な価値を伝える場としてのレストランづくりが重要だと考えている。将来的には、各地域に根ざした形で、日本食の魅力を伝える拠点を増やしていきたいという構想を描いている。 「いただく」は、食を通じて人々の心に触れ、日本の“おもてなし”や“美意識”を体現するレストランとして、今後も進化を続けていく。そして、「いただく」ののれんが力強く現わしているように、日本食文化の価値が世界に向けて「無限大」に広がることを祈る。
今回、日本産食材サポーター認定店として紹介することによって、今までより更に多くの、アラブ首長国連邦の住民や観光客に、「いただく」が体現する世界観を味わい、楽しんでいただきたい。
(掲載日:2025年12月11日)
- Wasl Vita Mall, Al Wasl Rd - Jumeirah 1, Dubai
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Tel:+971(0)4 223 6122
https://itadaku.ae/index.html



