ウズベキスタンの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年の実質GDP成長率は前年比6.5%増。産業別では建設、サービス産業が堅調。
  • 経常収支の赤字が26.4%減少。主に二次所得の流入が貢献。
  • エネルギー分野で中東企業の積極的な進出が継続。
  • 対日貿易は拡大。サービスやITで中小企業の進出も活発化。

公開日:2025年7月25日

マクロ経済 
投資需要が経済成長を牽引、インフレは若干上昇の傾向

ウズベキスタン大統領府付属統計庁の発表によると、2024年の実質GDP成長率は6.5%だった。

需要項目別でみると、総固定資本形成が27.6%増と2年連続で高い成長率を記録し、GDPの成長にも寄与した。アジア開発銀行の分析(2025年4月)によると、主に外国直接投資からなる民間投資や、鉱工業、電気・ガス供給、住宅などインフラ更新のための公共投資が増加したことにより、前年の23.4%を上回った。

GDP成長率を産業別でみると、農林水産業が3.1%(前年実績4.1%)、建設が8.8%(7.6%)、鉱工業が6.8%(6.4%)、サービスが7.7%(7.1%)だった。サービス部門のうち、情報・通信は24.7%の伸びを記録した。政府が推進するIT産業振興が数字でも現れた結果となった。

鉱工業生産額は885兆8,000億スムで、構成比85.1%を占め最大の製造業の内訳は金属22.7%、次いで機械・設備・自動車20.8%、繊維・衣類・皮革16.9%だった。製造業の成長率は7.7%で、前年に引き続き経済成長を牽引した。

サービス産業の売上高は前年比12.9%増の818兆4,300億スムで、うち主要な産業は宿泊および飲食サービス(構成比:22.4%)、商業(18.3%)、運輸(17.7%)、金融(16.5%)となった。

2024年12月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比9.8%上昇した。前年同月の伸び率と比べ1ポイント高い。項目別の伸び率を見ると、食品は2.4%、非食品は7.7%、サービスは26.7%だった。2024年のサービス分野の上昇分は、CPIの年間上昇率全体の63.3%を占め、これは電気、ガス、水道、交通機関、公的手続など公共料金の引き上げに起因する。食品のうち肉製品(11.0%)、油脂類(11.8%)、飲料(9.9%、アルコール飲料除く)、加工食品(7.1%)、魚介類(6.5%)などの価格上昇が目立った。

表1 ウズベキスタンの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年 2024年
年間 1~3月 1~6月 1~9月
実質GDP成長率 6.0 6.3 6.5 6.4 6.6 6.6
階層レベル2の項目家計最終消費支出 11.5 7.0 7.5 9.0 11.3 9.1
階層レベル2の項目政府最終消費支出 3.5 1.1 1.1 1.3 1.1 0.8
階層レベル2の項目総固定資本形成 △ 0.3 23.4 27.6 74.5 36.6 31.0
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 19.0 17.3 △ 5.9 9.0 △ 1.0 △ 3.0
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 13.6 15.3 △ 1.5 10.2 2.8 2.7

〔出所〕ウズベキスタン大統領府付属統計庁

国際通貨基金(IMF)はウズベキスタン経済に関する報告書(2025年4月)の中で、堅調な個人消費や投資に加え、構造改革が続くことで、2025年と2026年の実質GDP成長率は6%を維持すると予想している。

一・二次所得の増加で経常収支赤字は縮小も、対外債務は増加

ウズベキスタン中央銀行によると、2024年の経常収支は57億3,800万ドルの赤字だった。前年の77億9,900万ドルの赤字から26.4%縮小した。貿易・サービス収支が174億5,100万ドルの大幅な赤字を記録したものの、一・二次所得の黒字が117億1,300万ドルに達し、赤字の縮小につながった。一次所得(主として国外で働くウズベキスタン国民に支払われる賃金・給与および直接・証券投資収入など)の収支は11億3,500万ドルの黒字(2023年は9億9,200万ドルの黒字)だった。二次所得(ウズベキスタン居住者と非居住者の間のコミットメントを伴わない経常的な送金)の黒字額は105億7,800万ドル(2023年は88億500万ドル)となった。中央銀行によると、二次所得の伸びの主な要因は、ロシアなど諸外国で就労するウズベキスタン人労働者の賃金が上がり、送金額が増加したことによる。

2024年末時点のウズベキスタンの対外債務残高は前年末比15.7%増の705億6,100万ドルで、このうち中央銀行を除く政府部門が298億8,400万ドル(18.8%増)、民間非金融部門が214億4,900万ドル(10.4%増)だった。経済財務省資料によると、2025年1月1日時点の公的対外債務の主な割り当て分野は、政府予算補填(152億9,100万ドル)、燃料・エネルギー産業(57億4,300万ドル)、農業(20億6,900万ドル)、輸送・物流インフラ(28億5,200万ドル)、住宅・公共サービス(28億5,600万ドル)となっている。また、同時点の大口の債権者は世界銀行(債務残高:76億3,900万ドル)、アジア開発銀行(74億1,500万ドル)、中国(国家開発銀行と中国輸出入銀行など、37億6,700万ドル)、日本(国際協力機構など、28億8,900万ドル)、フランス(9億7,700万ドル)、イスラム開発銀行(9億4,400万ドル)、韓国(7億4,000万ドル)だった。

貿易 
輸出の伸びにより貿易赤字が縮小、ロシアからの輸入が増加

大統領府付属統計庁によると、2024年の貿易(通関ベース)は輸出が前年比8.4%増の269億4,800万ドル、輸入が0.8%増の389億8,600万ドルで、貿易赤字は12.7%減の120億3,800万ドルに縮小した。主要貿易相手国は中国(構成比18.9%)、ロシア(17.6%)、カザフスタン(6.5%)、トルコ(4.5%)、韓国(3.0%)だった。前年に続き、中国が貿易相手国で首位に立った。一方で、貿易相手国上位5カ国のうち、貿易総額が伸びたのはロシアのみであった。

表2-1 ウズベキスタンの主要国別輸出[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
ロシア 3,496 3,683 13.7 5.4
中国 2,487 2,055 7.6 △ 17.4
カザフスタン 1,417 1,452 5.4 2.5
トルコ 1,263 1,169 4.3 △ 7.4
アフガニスタン 857 1,089 4.0 27.1
フランス 400 795 3.0 98.6
タジキスタン 608 552 2.0 △ 9.2
キルギス 634 513 1.9 △ 19.1
米国 253 317 1.2 25.4
パキスタン 269 300 1.1 11.2
日本 17 12 0.04 △ 29.4
合計(その他含む) 24,870 26,948 100.0 8.4

〔注〕サービスを含む。
〔出所〕ウズベキスタン大統領府付属統計庁

表2-2 ウズベキスタンの主要国別輸入[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
中国 11,339 10,432 26.8 △ 8.0
ロシア 6,661 7,947 20.4 19.3
カザフスタン 3,069 2,826 7.2 △ 7.9
韓国 2,314 1,961 5.0 △ 15.2
トルコ 1,898 1,768 4.5 △ 6.8
ドイツ 986 1,117 2.9 13.3
トルクメニスタン 924 1,020 2.6 10.4
インド 649 854 2.2 31.5
米国 512 564 1.4 10.2
ベラルーシ 526 551 1.4 4.8
日本 219 308 0.8 40.7
合計(その他含む) 38,659 38,986 100.0 0.8

〔注〕サービスを含む。
〔出所〕ウズベキスタン大統領府付属統計庁

輸出の主要品目は、金(構成比27.8%)、工業製品(15.6%、繊維製品、非鉄金属など)、食料品・家畜(8.1%、野菜・果実など)、化学品(6.3%、肥料など)、鉱物性燃料・潤滑油(4.9%)だった。金は、前年比8.3%減でやや減少し74億8,100万ドルだった。主要相手国はロシア、中国、カザフスタン、トルコ、アフガニスタン、フランス、タジキスタンで、これら7カ国が総額に占める割合は40.1%だった。ロシア向けは5.4%増で、前年の10.9%増に比べ伸びが半減した。7億9,500万ドルを記録したフランス向けが近年急増しており、2023年(4億ドル)と比べて約2倍、2022年(7,300万ドル)と比べて約11倍となった。

輸入の主要品目は、機械・輸送用機器(構成比34.6%、自動車、特殊機械、一般産業用機械・部品など)、工業製品(15.5%、鋳鉄・鉄鋼など)、化学品(12.0%、医薬品など)、鉱物性燃料・潤滑油(10.1%)、食料品・家畜(9.5%)となっている。主要相手国は、中国、ロシア、カザフスタン、韓国、トルコ、ドイツ、トルクメニスタンで、輸入総額の約7割を占めた。このうち、前年に比べて伸びたのはロシアとドイツ、トルクメニスタンで、ロシアは19.3%増となった。中国は8.0%減だった。

表3-1 ウズベキスタンの主要品目別輸出[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
8,154 7,481 27.8 △ 8.3
サービス 5,640 7,204 26.7 27.7
工業製品 4,052 4,201 15.6 3.7
食料品・家畜 1,778 2,175 8.1 22.4
化学品 1,307 1,687 6.3 29.1
鉱物性燃料・潤滑油 941 1,315 4.9 39.8
機械・輸送用機器 1,305 1,202 4.5 △ 7.9
非食料品原料 321 321 1.2 △ 0.2
その他 1,372 1,362 5.1 △ 0.7
合計 24,870 26,948 100.0 8.4

〔注〕サービスを含む。
〔出所〕ウズベキスタン大統領府付属統計庁

表3-2 ウズベキスタンの主要品目別輸入[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
機械・輸送用機器 14,935 13,488 34.6 △ 9.7
工業製品 6,323 6,055 15.5 △ 4.2
化学品 4,865 4,688 12.0 △ 3.6
鉱物性燃料・潤滑油 2,634 3,953 10.1 50.1
サービス 3,084 3,748 9.6 21.5
食料品・家畜 3,496 3,696 9.5 5.7
その他 3,323 3,358 8.6 1.0
合計 38,659 38,986 100.0 0.8

〔注〕サービスを含む。
〔出所〕ウズベキスタン大統領府付属統計庁

対内直接投資 
対内直接投資は拡大、中東から再エネ分野の投資が継続

2024年の対内直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は28億3,600万ドル(前年比31.5%増)に達した。2024年の大規模な投資事例として、前年に引き続き、アラブ首長国連邦のマスダール(Masdar)やサウジアラビアのACWAパワー(ACWA Power)による再生可能エネルギー分野での複数の事業(太陽光・風力発電事業など)がある。外国融資による他の主な投資プロジェクトとして、ブハラ州における大型ガス化学コンビナート、スルハンダリヤ州のガス化学コンビナート、カラカルパクスタン共和国におけるテビンブロク鉄鉱床開発プロジェクトがある。

表4 ウズベキスタンの対内直接投資の推移[実行ベース、ネット、フロー](単位:100万ドル)
項目 2022年 2023年 2024年
対内直接投資額 2,657 2,156 2,836

〔出所〕ウズベキスタン中央銀行

対日関係 
ウズベキスタン向け輸出が増加、日本の中小企業の進出が顕著に

日本側の貿易統計(通関ベース)によると、2024年の日本の対ウズベキスタン輸出は前年比80.7%増の4億3,600万ドル、輸入は40.8%減の1,800万ドルとなり、対ウズベキスタン輸出が大きく伸長した。日本からの輸出は重電機械、通信機、医薬品の伸びが大きい。日本への輸入ではアルミニウム・同合金(非鉄金属)や乾燥豆類(野菜)が伸びた一方、電算機類、織物用糸・繊維製品が減少した。

日本企業の進出は増加傾向にある。風力発電や病院設立、電源開発など大手企業のプロジェクトが進行しているほか、中小企業による進出案件も出てきている。教育、飲食といったサービス分野に加え、ウズベキスタンが振興するIT分野で進出が顕著だ。IT企業支援機関「ITパーク」によると、同機関に支援登録をしている日本企業は16社に上る(2025年5月時点)。

2024年8月に岸田文雄首相(当時)がウズベキスタンを含めた中央アジアを訪問する予定だったが、直前に日本で発生した地震対応や危機管理のため延期された。

表5-1 日本の対ウズベキスタン主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
一般機械 66,556 258,113 59.2 287.8
階層レベル2の項目原動機 33,747 216,926 49.7 542.8
階層レベル2の項目繊維機械 19,773 31,073 7.1 57.1
階層レベル2の項目ポンプ・遠心分離機 3,234 3,109 0.7 △ 3.9
輸送用機器 103,710 91,725 21.0 △ 11.6
階層レベル2の項目自動車 102,441 90,009 20.6 △ 12.1
階層レベル3の項目バス・トラック 68,786 66,016 15.1 △ 4.0
階層レベル3の項目乗用車 27,683 15,806 3.6 △ 42.9
電気機器 8,334 60,375 13.8 624.4
階層レベル2の項目重電機器 279 37,283 8.5 13,263.1
階層レベル2の項目通信機 650 14,936 3.4 2,197.8
化学製品 3,174 3,187 0.7 0.4
階層レベル2の項目有機化合物 1,385 1,831 0.4 32.2
階層レベル2の項目医薬品 24 625 0.1 2,504.2
合計(その他を含む) 241,350 436,158 100.0 80.7

〔出所〕財務省「貿易統計(通関ベース)」をドル換算

表5-2 日本の対ウズベキスタン主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
食料品 6,258 6,603 36.9 5.5
階層レベル2の項目野菜 5,654 6,079 34.0 7.5
階層レベル2の項目果実 114 218 1.2 91.2
化学製品 5,570 5,565 31.1 △ 0.1
原料別製品 1,041 2,714 15.2 160.7
階層レベル2の項目非鉄金属 374 2,491 13.9 566.0
階層レベル2の項目織物用糸・繊維製品 643 223 1.2 △ 65.3
電気機器 48 139 0.8 189.6
一般機械 10,627 全減
階層レベル2の項目電算機類(含周辺機器) 10,627 全減
合計(その他を含む) 30,240 17,888 100.0 △ 40.8

〔出所〕財務省「貿易統計(通関ベース)」をドル換算

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 6.0 6.3 6.5
1人当たりGDP (米ドル) 2,555 2,849 3,113
消費者物価上昇率 (%) 12.3 8.8 9.8
失業率 (%) 8.9 6.8 5.5
貿易収支 (100万米ドル) △ 11,035 △ 13,790 △ 12,038
経常収支 (100万米ドル) △ 2,847 △ 7,799 △ 5,738
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 12,703 9,932 9,145
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 51,835 61,001 70,561
為替レート (1米ドルにつき、スム、期中平均) 11,050 11,735 12,652


貿易収支:国際収支ベース(財・サービス)
出所
実質GDP成長率、1人当たりGDP、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支:ウズベキスタン大統領府付属統計庁
経常収支、外貨準備高、対外債務残高:ウズベキスタン中央銀行
為替レート:IMF