中国における越境ECの概要と留意点:中国向け輸出

質問

日本で通販サイトを運営しています。今後、中国向け販売を本格化する予定です。中国での電子商取引の規制を教えてください。

回答

中国での電子商取引には主に、1. 中国で設立した拠点により、自社通販サイトを通じて販売する、2. 国外の法人により、海外の通販サイトを通じて、中国向けに販売する、3. 中国のEC(Electric Commerce)サイトへ出店する、という3つの手段が考えられます。

I. 中国での電子商取引の形態と留意点

  1. 中国で設立した拠点により、中国国内の自社通販サイトを通じて販売する
    インターネットを用いた通信販売行為は、一般の販売行為がインターネット上に展開されたものと見なされています。外資が電子商取引に参入することはネガティブリストの範囲外であり、通常、法律に基づき中国で登記された製造会社、貿易会社も、これらに従事することが可能とされています。また、中国でウェブサイトを立ち上げて、自社取扱商品を販売する場合、電信管理機構または国務院の情報産業主管部門まで、ICP(Internet Contents Provider)関係の手続きを行う必要があります。しかし、外資が中国でICPを取得することがやや難しいので、他社製品も取り扱う中国のECサイトへ参入するのが多いです。
  2. 中国外の法人により、中国外にある通販サイトを通じて中国向けに販売する
    中国国外の企業が、中国国外にサーバーと商品の発送拠点を設置し、中国語で作成された海外の通販サイトを利用して販売を行う形態となります。
    この形態の場合、以下の点にご注意ください。
    1. インターネット回線の問題等により、中国国内から海外の通販サイトまで、安定したアクセスができない可能性があります。
    2. 荷物の紛失、破損や輸送途中のトラブルを防ぐため、荷物の追跡が可能な輸送サービス手段を利用することをお勧めします。
    3. 中国の個人向けに郵送等の⽅法で輸入される商品には、⾏郵税が課せられます。行郵税は、郵送貨物・携帯貨物に対して適用される税金(簡易課税方式)で、関税・増値税・消費税に代替されます。税率は、2019年4月9日以降商品別に50%、20%、13%、3%の4段階に分けられています(税関総署公告2019年第63号、2019年4月9日施行)。なお、⾏郵税額が50元以下の場合は、免税となります。購買する商品の内容および数量によって、個人消費用の範疇を超える(個人商品用に属するもの、香港、マカオ、台湾の場合、毎回の上限は800元、その他の国、地域の場合、毎回の上限は1000元。なお、前記金額以内でも、数量は明らかに個人消費用を超える場合、個人消費用の範疇を超えると認定され、上記金額を超えていても、郵便物は一つ且つ分割不可である場合、個人消費用と判断される可能性があります)と税関に判断される場合、たとえ個人向けの郵送であるとしても、⾏郵税が適用されず、一般貿易としての課税がなされます。この場合は、税率が高くなる(⾏郵税ではなく、一般貿易と同様の関税、輸入増値税が課せられます)のみならず、商品に関わる原産地証明書や成分表などの提出、要求を満たした中国語ラベルの作成、化粧品やサプリメントといった保健機能食品などの商品に関する国家関連部門による許認可の事前取得などが必要になります。詳細は文末のジェトロ貿易・投資相談Q&A「小口貨物の通関制度:中国」を参照ください。
  3. 中国のECサイトへ出店する
    外国企業が越境ECを行う方法は2通りあります。一つは、中国に現地法人を設立したうえで、現地法人が中国のECサイトへ出店する方法です。中国市場で知名度の低い企業の場合、ECサイトの既存ユーザーへのアプローチが容易であるというメリットがあります。一方で、ECサイトへの出店には、各ECサイト側の出店規定があり、そのハードルは決して低いものではありません。例えば、Tモール(タオバオ(淘宝)の大手企業版)や京東(JD.COM)等への出店には、企業規模、保証額など、様々な条件が設けられ、完全にプラットフォーム側が主導する売り手市場となっています。ただしこの場合は、中国国内販売(日本法人→中国法人→個人)との位置づけとなります。もう一つは、外国企業も出店できる中国の越境ECサイトへ出店する方法ですが、こちらも中国国内のECサイトへ出店するのと同様に厳しい条件が設けられています。出店方法、税金等は以下をご参照ください。
    1. 税金
      2016年4⽉8⽇に中国政府が打ち出した越境ECに関する新制度によりますと、下記条件を満たした越境ECについて、一般貿易に課税されている関税、増値税(輸入品によっては消費税も)より、一定の優待を受けられる「電商総合税」が課税されることになります。具体的には(1)中国国内の購入者個人が、(2)中国国内で登記された会社が運営する越境ECプラットフォーム(天猫国際、京東国際等)を利用し、(3)国外の販売業者より、(4)ポジティブリストに掲載されている商品に該当し、かつ(5)個人使用目的で、(6)関連取引、支払い、物流の電子情報を税関が監督管理できるルートを経由して商品を購入する場合に電商総合税が適用されます。
      電商総合税の税率について、1ユーザーの取引上限額が1回あたり5,000元以下で、かつ年間での購入総額が26,000元以下の場合、関税率を0%、増値税、消費税をそれぞれ法定額の70%とする優遇措置を受けられます。なお、上記金額を超えた場合、または前記一連の適用条件を満たさない場合、電商総合税を受けることができず、一般貿易として、通常税率の関税、増値税(輸入品によっては消費税も)が徴収されます。
      なお、「(4)ポジティブリストに掲載されている商品」について、国務院はポジティブリスト(「越境電子商務小売り輸入リスト」)として公開しました。ポジティブリストに掲載されているもののみが越境ECに関わる優遇措置(電商税)を受けることができます。最新のリストは2019年12⽉24日に新たに発表され、2020年1月1日より実施されており、現在1,413品⽬が掲載されています。詳細は文末の「越境EC小売の輸入税務政策についての通知」をご参照ください。
    2. 物流と輸入時の検査検疫
      越境ECは、物流面において、直送方式(海外から、受注の都度、郵便物として直接購入者のところに郵送される方式)と保税区方式(国が指定する越境EC試験地域に一旦大量に郵送した後、専用保税倉庫で保管し、受注を受けた都度、輸入税を納めたうえ、国内郵送の形で購入者に届ける方式)があります。
      ポジティブリストに含まれる商品で、かつ越境ECに関わる前記の6つの要件を全て備える場合、一般貿易の際に求められる検査基準を満たさなくても輸入することが可能となるため、販売元としての負担は軽いと評価できます。これは、関連要件を満たした越境EC業務の最大のメリットであると言えます。他方、ポジティブリストに含まれる商品ではない場合、商品に関わる原産地証明書や成分表などの提出、要求を満たした中国語ラベルの作成、化粧品やサプリメントといった保健機能食品などの場合には、商品に関する国家関連部門による許認可の事前取得が必要になります。
    3. 手続き
      1. 越境ECプラットフォームでの出店
        越境ECに関する優遇措置を享受するためには、まず越境ECプラットフォームに店舗を開設しなければなりません。開設はおおむね、以下の流れとなります:
        越境ECプラットフォームの受付窓口に企業および商品の基本情報を提供し、店舗の開設を申請→決済アカウントの登録→プラットフォームにおけるアカウントの登録→プラットフォームから招待コードを受信→企業/商品を取り扱う資格に関する書類の提出→運送業者と契約を締結→店舗の設計→商品アップロード→運送システムへの情報アップロード→店舗運営など。
      2. 通関管理
        外国企業は購入者によるネットでの注文および資金の振り込みを受けた後、商品を発送することになります。この際、購入者・外国企業間の「注文書」、決済代行企業からの「支払い証憑」、物流企業からの「物流情報」という三つの電子情報が形成されます。これらの電子情報は「中国国際貿易単一窓口」、もしくは越境EC公共サービスプラットフォームを通じて税関に伝送されることになります。輸入の際は、物流会社/倉庫会社が改めて、これらの三つの電子情報を含むリストを税関に伝送し、税関が電子システムにより、事前に受領した情報と、リストに記載した情報が一致しているかを確認のうえ、通関申告を認めることになります。

II. 代金決済

具体的に採用される電子商取引の形態によって、代金の決済手段も異なりますが、一般に、中国国内では代金引換、銀行振り込み以外に「支付宝」(Alipay)、「微信支付」(WeChatPay)というオンライン決済サービス、銀聯カード(デビットカード)による決済が普及しています(クレジットカードの使用は減少傾向にあるようです)。各決済手段とも、決済代行業者や金融機関向けの、一定の手数料が発生することにより、着金する金額が支払金額を下回る可能性がある点に注意してください。専用プラットフォームを利用した越境ECの場合は、消費者→専用プラットフォーム側→販売元という決済順になります。

関係法令

中国国家工商行政管理総局:
インターネット取引管理弁法(国家工商局行政管理総局令第60号、2014年3月15日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
インターネット取引監督管理弁法(国家工商局行政管理総局令第37号、2021年5月1日施行) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
中国国務院:
インターネット情報サービス管理弁法(2011年1月8日公布) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国務院関税税則委員会による輸入物品の税金を調整する通知(税委会〔2019〕17号,2019年4月9日発効) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
中国工業情報化部:
外商投資電信企業管理規定(国務院令第666号、2016年2月6日改正施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
電信業務経営許可管理弁法(工業情報化部令第42号、2017年9月1日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
中国国家税務局:
越境EC小売の輸入税務政策についての通知(財関税(2016)18号、2016年3月24日公布、2016年4月8日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
越境 EC 小売輸入に関する税収政策の整備に関する通知(財関税〔2018〕49号、2018年11月29日公布、2019年01月01日発効)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
中国税関総署:
越境電⼦商取引による⼩売輸出⼊への監督管理にかかる通達(税関総署公告「2018」194号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
『中華⼈⺠共和国⼊国物品分類表』および『中華⼈⺠共和国⼊国物品課税価格表』の調整に関する公告(税関総署公告2019年第63号、2019年4月9日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
越境電⼦商取引輸入試験地域を拡大、監管要求を厳格に実行することに関する通知外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
中国財政部、税関総署:
越境電⼦商務⼩売輸⼊リスト(2019年版)(2020年1月1日により実施)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
越境電子商務小売輸入税収政策の改善にかかる通達(財関税「2018」49号、2019年1月1日により実施)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参考資料・情報

ジェトロ:
貿易・投資相談Q&A「小口貨物の通関制度:中国」

調査時点:2021年2月

記事番号: J-210602

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