輸入貨物情報の事前申告制度について:エジプト向け輸出
質問エジプトへ商品を輸出する際に事前に通関申告をする必要があると聞きました。その通関申告手続きの概要や留意点を教えてください。
回答
エジプトへの輸出は、事前申告制度(Advanced Cargo Information Declaration:ACID)での通関申告が必須で、輸出者・輸入者双方に出荷前の手続きと書類確認が求められます。制度の概要や対応の手続きについての詳細は以下の通りです。
Ⅰ. ACIDの概要
- ACIDについて
ACIDは輸入貨物についての情報を事前に申告する制度で、貨物が出荷される前に輸入者・輸出者が必要情報・書類を電子的に提出する必要があります。同制度は、19桁の番号(Advance Cargo Information Declaration Number、以下ACID番号と呼ぶ)に基づいて運用されています。ACID番号とは、政府公式のオンライン窓口(National Single Window for Foreign Trade:Nafeza)上で各貨物に発行される固有の識別番号です。輸入者が主要な貨物情報を入力すると、システムによって事前リスク評価が実施され、輸入者・輸出者およびすべての貿易書類を紐づけるACID番号が発行されます。輸出者は、このACID番号を用いて送り状(インボイス)、船荷証券、原産地証明書、必要な許可証類を輸出者用のプラットフォーム(CargoX)にアップロードします。CargoXとは、Nafezaと連携するブロックチェーン基盤のプラットフォームです。有効なACID番号が船積書類に記載されていることが、エジプト港湾へ貨物を搬入する際の法的な要件となります。 - ACID導入の背景
エジプトでは、従来の紙ベースの通関手続きを近代化する税関デジタルトランスフォーメーションの一環として、ACIDが導入されました。システム導入前は、エジプト財務省関税局(Egyptian Customs Authority:ECA)やエジプト・アラブ共和国国家食品安全庁(National Food Safety Authority)などの当局による検査が重複して何度も実施されていたため、検査の冗長化、手続きの大幅な遅延、高額な保管費用が課題となっていました。本制度では、輸入者が貨物到着前に貨物データを電子的に提出することで、事前リスク評価が可能となり、不正確な申告や未申告貨物の流入を防止できるようになりました。
ACIDの導入により、6日以上かかっていた通関手続きの平均所要時間は約2.9日に短縮され、保管費や滞船料の削減、さらに当局による高リスク貨物の事前識別が円滑化されるなど、通関手続きが大幅に効率化されました。世界税関機構(World Customs Organization)および世界貿易機関(World Trade Organization)の貿易円滑化協定(Trade Facilitation Agreement)に沿って、貨物到着前データと自動リスク評価を統合したエジプトのACID制度は、この地域における先行事例の一つとなっています。
Ⅱ. ACIDの手続きの流れ
- エジプト国内の輸入者の対応事項について
- Nafeza上での登録事項
エジプト国内の輸入者(またはその代理人である認可通関業者)は、まず貿易円滑化を目的としたナショナル・シングルウィンドウ(輸出入に関わる全ての申請・書類提出・許可取得を、1つのオンライン窓口で完結できる仕組み)であるNafezaに登録します。Nafeza は、財務省(Ministry of Finance)傘下のECAが運営するシステムであり、登録には輸入者または通関業者として電子ユーザーアカウントを作成し、企業の法的情報を提供する必要があります。輸入者は、権限を付与する代表者の商業登録番号、税務カード番号、国民ID番号を入力し、必要書類(例:最新の商業登記簿謄本、税務登録証明書)をアップロードします。また、認証された電子署名が必要となるため、輸入者は通信・情報技術省(Ministry of Communications and Information Technology)の認可を受けた電子署名事業者(例:Egypt TrustやDigiSignなど)から電子署名を取得する必要があります。アカウントおよび提出書類が確認されると、輸入者のNafezaアカウントが有効化されます。登録が完了すると、輸入者は貨物の事前申告およびACID番号の申請ができるようになります。 - ACID番号の取得手続きの流れ
ACID番号の取得手続きは以下のとおりです。- 貨物情報の入力
Nafeza にログインし、輸出会社名、原産国、品目説明、貨物価格、輸送手段などの必要事項を入力します。 - リスク評価・ACID番号発行
ECAのシステムが自動的に事前リスク評価を実施し、承認されると ACID番号が発行され、輸入者に電子メールで通知されます。なお、ACID番号の有効期間は発行日から6カ月です。 - 輸出者へのACID番号の共有
輸入者はACID番号を海外の輸出者に送付します。輸出者は貨物積載前に当該のACID番号をすべての輸出書類(例:商業インボイス、船荷証券または航空運送状、原産地証明書)に記載しなければなりません。 - CargoXへの書類のアップロード
輸出者は、付与されたACID番号を用いて、送り状(インボイス)、船荷証券、原産地証明書、必要な許可証類などの貿易書類をCargoXに電子的にアップロードし、輸入者の申告情報と紐づけます。CargoXのブロックチェーン技術により、書類の真正性と改ざん防止が保証されます。 - 検証
税関は、アップロードされた書類に記載されたACID番号がNafezaによって発行された番号と一致することを確認します。ACID番号の発行および正確な記載は通関の必須条件であり、番号の不一致や未記載がある場合、2020年第207号関税法(Customs Law No. 207 of 2020)第39条の2に基づき、自動的に搬入拒否の対象となります。
上記のフローからも分かるように、すべての貨物情報・書類が事前に電子的に提出・連携されることで、貨物到着後の通関手続きは大幅に迅速化されました。(実務上は、すべての船積書類にACID番号を正確に記載するため、輸入者と輸出者が綿密に連携する必要があります。)
- 貨物情報の入力
- Nafeza上での登録事項
- 日本国内の輸出者の対応事項について
- CargoX上での対応事項について
エジプトに貨物を輸出する日本の輸出者は、エジプト政府が認める貿易書類提出システムであるCargoXの使用が義務づけられているため、輸出前にエジプトのNafezaと連携している当該プラットフォームのアカウントを作成する必要があります。CargoXはブロックチェーン技術を用いて貿易書類の信頼性を保持し、安全に送信する仕組みです。
輸出者は必要情報を登録した後、貨物の輸出前に必要書類をCargoXにアップロードしなければなりません。必要書類には、少なくとも商業インボイス、船荷証券(または航空運送状)、原産地証明書、そしてエジプト当局が求める追加の許可証や証明書(例:衛生証明書、植物検疫証明書)などが含まれます。 - ACID番号について
エジプトの輸入者から提供された ACID 番号は、すべての書類に必ず記載しなければなりません。輸入者が船積みを手配する前に ACID 番号を取得しているかどうか、輸出者側でも必ず確認してください。 ACID番号が未記載、あるいは誤って記載されていた場合、貨物は到着時に 電子的に自動拒否されます。実際に、2020年第207号関税法(Customs Law No. 207 of 2020)第39条の2およびその施行規則では、有効な ACID 番号のない貨物の通関を明確に禁止しています。
そのため、輸入者から余裕を持って事前に ACID 番号を入手し、Nafezaに登録されている番号と一致していることを確認することが最も確実な対応となります。なお、一度取得したACID番号を新規の税関申告に再利用することはできず、各貨物に固有のACID番号が必要です。 - VAT番号とその代替手段について
ACIDのデータを入力するフォームでは、輸入者、輸出者の双方について VAT番号を記載する必要があります。しかし、日本企業の多くはエジプトのVAT登録番号を保有していないため、日本国内の輸出者は、エジプトのVAT番号欄に日本の企業登録番号または事業番号を入力すればよいという代替措置がECAによって公式に認められています。これらの番号すら保有していない輸出者については、国際税務識別番号(Tax Identification Number)または日本の納税者番号を使用することが可能です。この代替措置に関する規定は、エジプト政府が発行する ACID総合ガイドに明記されています。記載した代替番号については、自社で記録・保管し、輸出書類に記載される番号と一致させるようにしてください。 - 航空貨物への適用について
当初、ACIDは海上貨物のみを対象として試行され、2021年10月1日以降はすべての海上貨物で義務化されました。その後、2023年5月に財務省より同システムを航空貨物にも適用する方針が発表され、2024年8月以降はカイロ空港およびその他主要空港において、航空貨物向けのACID申告が部分的に運用されています。さらに、財務省は2025年11月に、航空貨物へのACIDの適用を2026年1月1日から正式に開始すると発表しています。実務上、日本国内の輸出者も航空貨物について各貨物単位で ACID番号を取得し、CargoX を通じて必要書類をアップロードすることが望ましいと考えられます。ただし現在は移行期間中であるため、航空貨物に関する最新の要件についてはNafezaの公式サイトを確認するか、エジプト側の輸入者へ問い合わせることを推奨します。
- CargoX上での対応事項について
Ⅲ. その他の留意事項
ACIDによって通関が円滑化されたとはいえ、運用面やコンプライアンス面では依然として課題が残っています。たとえば、初めて利用する際のアカウント設定や、CargoX と Nafeza の連携に不慣れで、操作が難しいと感じる利用者の方もいるでしょう。データ入力の誤りを防ぐためにも、輸入者と輸出者の緊密な連携は不可欠です。CargoX と Nafezaの貨物情報を完全に一致させるためには、明確で正確な意思疎通が重要な役割を果たします。 ACID要件を遵守しない場合、エジプト税関による貨物の受入拒否や、輸出者負担での返送措置など、重大なペナルティが発生する可能性があります。輸出者は ACID 番号が発行されていることを確認し、すべての書類を CargoXに不備なく送信し、その内容を検証し、貨物情報が出荷前に正しく照合されていることを確認しなければなりません。インボイス、梱包リスト、各種証明書を英語およびアラビア語で作成することを含め、書類作成に正確を期すことは、遅延や法的問題の発生を防ぐために不可欠です。
ACIDは今後、エクスプレス貨物への拡張や航空貨物手続きのさらなる円滑化といった方向性も視野に入れつつ、引き続き発展していくと見込まれています。輸出者・輸入者の双方は、Nafezaおよび CargoXといった公式情報源で最新情報を継続的に確認し、エジプトのデータ保護規則および企業のデータガバナンスポリシーを確実に遵守するようにしてください。CargoXのヘルプセンターや、エジプト政府のACIユニット、Nafezaのヘルプデスクでは、技術面・手続き面での不明点について迅速なサポートが提供されています。
関係機関
関係法令
参考資料・情報
- CargoXヘルプセンター:
-
Nafeza(National Single Window for Foreign Trade)
- Nafeza:
-
ACID案内ページ
-
ACID総合ガイド(2021年4月)
(2.3MB)
- ジェトロ:
- エジプトにおける貨物情報の事前 通告システム(ACIシステム)
- 輸出入手続 | エジプト - アフリカ
調査時点:2026年1月
記事番号: CR-260120
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