恒久的施設(Permanent Establishment: PE)とは

質問 恒久的施設について教えてください。

回答

恒久的施設(Permanent Establishment: PE)とは、一般に事業を行う一定の場所等をいいます。PEの有無は、企業が海外で事業を行う際に、その活動から生じる所得が進出国の税務当局の課税権に服するか否かを決定する重要な指標となります。例えば、非居住者および外国法人が日本国内で事業を行っていても、日本国内にPEを有していない場合には、その非居住者および外国法人の事業所得は日本で課税されることはありません。このような「PEなければ課税なし」という考え方が、事業所得課税の国際的なルールとなっています。

I. PEの内容

PEの範囲については、各国の国内法、および日本が他国と締結している租税条約に規定されています。日本企業が海外で事業を行う際、当該国が日本と租税条約を締結している場合は、租税条約の規定を、締結していない場合は進出国の国内法を参照する必要があります。
以下では、日本が他国と締結している租税条約のひな形とされるOECDモデル条約、国連モデル条約における解釈を記載し、最後に参考として日本国内法における解釈を紹介します。 なお、日本企業が他国に有している施設等がPEに該当するか否かの判定は最終的には当該国の税務当局の取り扱い次第である点には留意が必要です。

II. モデル条約の解説

  1. OECDモデル条約
    PEは、事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部、または一部を行っている場所と定義され、OECDモデル条約では、PEの範囲に次のものが含まれます。
    1. 支店PE
      事業の管理の場所、支店、事業所、工場、作業場、鉱山、石油または天然ガスの抗井、採石場その他天然資源を採取する場所は、PEに含まれます。
    2. 建設PE
      建設工事現場又は建設もしくは据え付けの工事については、12カ月を超える期間存続する場合にはPEを構成するものとみなされます
    3. 除外規定
      上記に該当しても、次の場合には、PEとみなされません。
      1. 企業の物品又は商品の保管、展示または引き渡しのためにのみ施設を使用する場合
      2. 企業の物品又は商品の在庫を、保管、展示または引き渡しのためにのみ保有する場合
      3. 企業の物品又は商品の在庫を、他の企業による加工のためにのみ保有する場合
      4. 企業のために物品もしくは商品を購入し、または情報を収集することのみを目的として事業を行う一定の場所を保有する場合
      5. 企業のためにその他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有する場合
      6. aからeまでに掲げる活動を組み合わせた活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有する場合。ただし、この活動の性格が、全体として準備的、補助的なものである場合に限ります。
    4. 代理人PE
      一方の締約国内で、企業の名において契約を締結する権限を有し、かつ、この権限を反復して行使する代理人は、PEとみなされます。ただし、仲立人、問屋その他の独立の地位を有する代理人は、PEとはみなされません。独立の地位とは、代理人が、法的、経済的に独立しており、代理で行う行為が、自己の事業の一部である状態を指します。また、代理人の活動が上記cに掲げる活動のみである場合も、PEとはみなされません。
    5. 親会社又は子会社
      一方の締約国の居住者である法人が、他方の締約国の居住者である法人を支配している、または支配されているという事実のみによって、いずれの一方の法人も、他方の法人のPEとみなされることはありません。
  2. 国連モデル条約
    OECDモデル租税条約と同一内容の項目については記載を省略し、相違点のみを紹介します。
    1. 建設PE
      OECDモデルとは条約と比較して対象となる範囲が広く、また期間も短い点で異なります。すなわち、国連モデル条約では、
      1. 建設工事現場もしくは建設、組立て、据付工事、またはこれらを監督する活動を行っており、かつ工期が6カ月を超える場合、これらはPEとみなされます。
        また、国連モデル条約では、下記のiiが追加で記載されている点も相違事項です。
      2. 企業が、使用人その他の職員を通じて役務の提供(コンサルティング等の役務提供を含む)を行う場合で、12カ月の間に合計183日を超える期間行われるときに限り、この活動はPEとみなされます。
    2. 代理人PE
      代理人PEについてもOECDモデル条約に加え、以下のとおり商品の在庫を保有する場合もPEとみなされます。
      1. 外国企業のために契約を結ぶ権限は有さないが、当該企業に属する物品または商品の在庫を恒常的に保存し、かつ、当該企業に代わって反復して当該在庫の引き渡しを行う場合
    3. 保険業
      OECDモデル条約では規定されていませんが、保険業について国連モデル条約では以下の記載があります。
      1. 保険業を営む一方の締約国の企業が、独立の地位を有する代理人以外の者を通じて、保険料を受領する場合または当該他方の国内で生じる危険に対して保証を提供する場合には、当該企業はPEを有するとみなされます。

III. 日本国内法におけるPEの内容

国内法では、PEは次の3つの種類に区分されます。

  1. 支店PE
    支店、出張所、事業所、事務所、工場、倉庫業者の倉庫、鉱山・採石場等天然資源を採取する場所はPEに含まれます。ただし、資産を購入したり、保管したりする用途のみに使われる場所、あるいは広告、宣伝、情報の提供、市場調査、基礎的研究等、その事業の遂行にとって補助的な機能を有する活動を行うためにのみ使用する場所は含まれません。
  2. 建設PE
    建設、据付け、組立て等の建設作業等のための役務の提供を、1年を超えて行う場合のその場所は、PEとみなされます。
  3. 代理人PE
    非居住者のためにその事業に関し契約を結ぶ権限のある者で、常にその権限を行使する者や在庫商品を保有しその出入庫管理を代理で行う者、あるいは注文を受けるための代理人等はPEとみなされます。ただし、代理人等が、その事業に係る業務を非居住者に対して独立して行い、かつ、通常の方法により行う場合の代理人等はPEとみなされません。

参考資料・情報

国税庁:
恒久的施設(PE)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

経済協力開発機構:
OECDモデル条約2014年版(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(78KB)

国際連合:
国連モデル条約2011年版(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2,071KB)

調査時点:2016/11

記事番号: C-170203

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