恒久的施設(Permanent Establishment: PE)とは

質問 恒久的施設について教えてください。

回答

恒久的施設(Permanent Establishment、以下「PE」)とは、一般に事業を行う一定の場所や代理人等をいいます。PEの有無は、個人及び法人が海外で事業を行う際に、その活動から生じる所得が進出国の税務当局の課税権に服するか否かを決定する重要な指標となります。例えば、非居住者および外国法人が日本国内で事業を行っている場合でも、日本国内にPEを有していなければその事業所得が日本で課税されることは原則としてありません。このような「PEなければ課税なし」という考え方が、事業所得課税の国際的なルールとなっています。しかし、デジタル化に伴い物理的拠点を置かずに国境を越えたビジネスを行う企業が増加したことから、近年では、市場国(ユーザーの所在国)への新たな課税権の配分を認める国際的な枠組みの構築が進められており(いわゆるデジタル課税・第1の柱)、同原則の見直しが議論されています。

Ⅰ. PEの内容

PEの範囲については、各国の国内法、および日本が他国と締結している租税条約に規定されています。日本企業が海外で事業を行う際、当該国が日本と租税条約を締結している場合は租税条約の規定を、締結していない場合は進出国の国内法を確認する必要があります。
以下では、日本が他国と締結している租税条約のひな形とされるOECDモデル条約(2017年版)、国連モデル条約(2021年版)における解釈を記載し、最後に参考として日本国内法(平成30年度改正後)における解釈を紹介します。なお、日本企業が他国に有している施設等がPEに該当するか否かの判定は最終的には当該国の税務当局の取扱い次第である点には留意が必要です。

Ⅱ. モデル条約の解説

【重要】BEPSプロジェクトおよびOECDモデル条約改訂(2017年)によるPE規定の見直し

OECDはBEPS(Base Erosion and Profit Shifting/ 税源浸食・利益移転)プロジェクトの行動7「恒久的施設認定の人為的回避の防止」の最終報告書(2015年)を受け、2017年にOECDモデル条約第5条を改訂しました。主な改訂内容は、(1)コミッショネア契約 等を通じたPE認定回避への対応、(2)除外規定(準備的・補助的活動)への「準備的・補助的」要件の明確化と分断防止規定の新設、(3)独立代理人の範囲の見直しです。日本では、この改訂を踏まえ平成30年度(2018年)税制改正において国内法のPE規定が同水準に整備されています。

  1. OECDモデル条約(2017年版)
    PEは、事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部、または一部を行っている場所と定義されます。OECDモデル条約では、PEに含まれるものとして次のa~cを規定しています。また、一定の場所であってもPEに該当しないものとして次のdを、親子会社間の支配関係のみではPEを構成しない旨を確認する規定として次のeを規定しています。
    1. 支店PE
      事業の管理の場所、支店、事業所、工場、作業場、鉱山、石油または天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所は、PEに含まれます。

      最新の動向:2025年OECDモデル条約改訂における越境リモートワークの取扱い
      近年、企業の所在地国とは異なる国で従業員が業務を行う「越境リモートワーク」によるPE認定が重要な税務論点となっています。予期せぬPE認定リスクに対応するため、2025年のOECDモデル条約コメンタリー改訂において、ホームオフィスに関する判定基準が新たに整備されました。主なポイントは以下の通りです。

      • 対象場所の拡張:従業員の自宅に限らず、別宅やバケーションレンタル等、企業の事業所でも関連企業等の事業所でもない場所での勤務全般が、新たな判定基準の対象として明記されました。
      • 継続性要件:断続的または付随的な利用の場合は通常PEとはみなされませんが、長期間にわたり継続的に利用される場合には、他の要素と合わせてその場所がPEと判断され得ます。
      • 50%基準:任意の12カ月間において、当該企業のための総労働時間の50%未満しか当該場所で勤務していない場合は、原則としてPEとはみなされません。一方、50%以上勤務している場合には、直ちにPEと判定されるわけではなく、後述の商業的理由の有無により判断されます。
      • 商業的理由の有無:50%以上勤務する場合は、その国に従業員を所在させることについて企業側に「商業的理由」があるかが重要な判定要素となります。顧客対応や異なるタイムゾーンへの常時対応など、従業員の物理的な存在が事業の遂行を促進する場合には商業的理由が認められますが、単なるオフィスコストの削減や、従業員個人の事情(家族の介護等)による在宅勤務の場合には商業的理由は認められません。

      これらの基準は、機械的にPEの有無を判定するものではなく、いずれも個別の事実 関係に基づく総合判断の要素です。2025年の改訂により一定の判断の枠組みは示されたものの、「商業的理由」の評価には依然として事実認定の幅があり、実務上は各国の税務当局との見解の相違が生じる可能性があります。

    2. 建設PE
      建設工事現場又は建設もしくは据付工事については、12カ月を超える期間存続する場合にはPEを構成するものとみなされます。
    3. 代理人PE(2017年改訂により見直し)
      一方の締約国内で企業に代わって行動する者が、反復して以下のいずれかの契約を締結し、または企業によって重要な修正なく日常的に締結されるこれらの契約のために反復して主要な役割を果たす場合、当該企業はPEを有するものとみなされます。
      • 当該企業の名において締結される契約。
      • 当該企業が所有し、または使用の権利を有する財産について、所有権を移転し、または使用の権利を与えるための契約。
      • 当該企業による役務の提供のための契約。
        ただし、上記に該当する場合であっても、以下のいずれかに当たる場合はPEとみなされません。
      • その者の活動が、下記の除外規定(OECDモデル条約第5条第4項)に定める準備的・補助的な活動のみである場合。
      • その者が独立代理人として通常の方法で企業のために業務を行う場合(OECDモデル条約第5条第6項)。ただし、専らまたは主として密接に関連する企業(関連企業)に代わって行動する者は、独立代理人から除外され、PEとして認定されます。
    4. 除外規定(OECDモデル条約第5条第4項)
      2017年改訂前は、以下の活動を行う場所は活動内容に関わらず除外規定が適用されPEとみなされませんでしたが、改訂後は原則として「準備的・補助的な性格の活動」である場合にのみ除外規定が適用されるよう変更されました。この除外規定は支店PE、建設PE、代理人PEの判定すべてに適用されます。
      • 企業の物品または商品の保管、展示または引き渡しのためにのみ施設を使用する場合。
      • 企業の物品または商品の在庫を、保管、展示または引き渡しのためにのみ保有する場合。
      • 企業の物品または商品の在庫を、他の企業による加工のためにのみ保有する場合。
      • 企業のために物品もしくは商品を購入し、または情報を収集することのみを目的として事業を行う一定の場所を保有する場合。
      • 企業のためにその他の活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有する場合。
      • 上記を組み合わせた活動のみを目的として事業を行う一定の場所を保有する場合。

        また、上記の判定の結果、PEに該当しないとされた一定の場所であっても、事業活動の細分化を通じたPE認定の人為的回避を防止する観点から、いわゆる「細分化防止規定」が設けられています。具体的には、上記の判定の結果、単独ではPEの除外規定が適用される事業を行う一定の場所であっても、当該企業または密接に関連する企業が、国内の同一の場所または別の場所において他の事業活動を行っており、それらの活動が一体的な業務の一部として補完的な機能を果たす場合であって、かつ、次のいずれかの要件に該当するときには、当該一定の場所に除外規定は適用されません。

      • 分割して活動を行う場所のうち、いずれかが当該企業または密接に関連する企業のPEに該当する場合。
      • 細分化された活動の組み合わせによる活動の全体が、事業の遂行にとって準備的または補助的な性格のものでない場合。
    5. 親会社又は子会社
      一方の締約国の居住者である法人が、他方の締約国の居住者である法人を支配している、または支配されているという事実のみによって、いずれの一方の法人も、他方の法人のPEとみなされることはありません。
  2. 国連モデル条約(2021年版)
    OECDモデル条約と同一内容の項目については記載を省略し、相違点のみを紹介します。
    1. 建設PE・サービスPE
      国連モデル条約第5条第3項では、OECDモデル条約にはない以下の規定が設けられています。
      1. 建設PE:建設工事現場もしくは建設、組立て、据付工事、またはこれらを監督する活動を行っており、かつ工期が6カ月を超える場合。
      2. サービスPE:企業が、使用人その他の職員を通じて役務の提供(コンサルティング等を含む)を行う場合で、12カ月の間に合計183日を超える期間行われる場合。
    2. 代理人PE
      代理人PEについては、OECDモデル条約に加え、以下に該当する者もPEとみなされます(国連モデル条約第5条第5項(b))。
      1. 当該企業のために契約を締結することも、その締結に向けた主要な役割を果たすこともないが、当該締約国内において当該企業に属する物品または商品の在庫を常態的に保持し、かつ当該在庫から当該企業に代わって定期的に引き渡しを行う者。
    3. 保険業
      OECDモデル条約では規定されていませんが、保険業について国連モデル条約では以下に該当する場合にはPEとみなされます。
      • 保険業を営む一方の締約国の企業が、再保険を除き、独立の地位を有する代理人以外の者を通じて、保険料を当該他方の締約国内で受領する場合または当該他方の締約国内に存在するリスクを引き受ける場合。

Ⅲ. 日本国内法におけるPEの内容(平成30年度改正後)

国内法では、PEは次の3つの種類に区分されます。なお、租税条約においてPEについて国内法上の規定と異なる定めがある場合には、租税条約上の定めが優先されます。

  1. 支店PE
    事業の管理の場所、支店、事務所、工場、作業場、倉庫業者の倉庫、鉱山・採石場等天然資源を採取する場所など、国内で事業を行う一定の場所はPEに含まれます。ただし、資産の購入・保管のみを行う場所や、広告、宣伝、情報提供、市場調査、基礎的研究などその事業の遂行にとって準備的・補助的な活動のみを行う(すなわち、事業の本質的な部分を構成しない)場所はPEになりません。
  2. 建設PE
    国内において建設もしくは据付工事またはこれらの指揮監督の役務の提供を、1年を超えて行う場所はPEとみなされます。平成30年度改正により、組立て工事が国内法上の建設PEの対象となる範囲に明記されなくなりましたが、これは国内法上の恒久的施設の範囲を国際的なスタンダードであるOECDモデル条約に合わせたためであり、組立て工事を1年を超えて行う場所は引き続きPEに該当することに留意する必要があります。また、1年の期間要件の回避を目的として故意に契約を分割した場合には、分割後の各契約期間を合算して1年超か否かを判定します。
  3. 代理人PE
    国内において非居住者等に代わって、その事業に関し、反復して以下に掲げる契約を締結し、またはその非居住者等によって重要な修正が行われることなく日常的に締結される契約のために反復して主要な役割を果たす者(従属代理人)はPEとみなされます。
    • 非居住者等の名で締結される契約。
    • 非居住者等が所有・使用する財産の所有権移転等に関する契約。
    • 非居住者等による役務提供のための契約。

なお、平成30年度改正により、在庫保有代理人および注文取得代理人が国内法上の代理人PEとなる範囲に明記されなくなりましたが、建設PE同様にOECDモデル条約と平仄を合わせたためであり、従属代理人に含まれていることに留意する必要があります。一方、法的・経済的に独立して通常の方法で業務を行う者(独立代理人)はPEになりませんが、専らまたは主として自己と特殊の関係のある者のためにのみ行動する者はこの独立代理人から除外され、従属代理人としてPEと認定されます。

参考資料・情報

国税庁:
恒久的施設(PE)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
経済協力開発機構(OECD):
OECDモデル条約(2017年版)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
OECDモデル条約コメンタリー改訂(2025年版)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国際連合:
国連モデル条約(2021年版)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
財務省:
平成30年度税制改正の解説(財務省)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2.1MB)

調査時点:2016年11月
最終更新:2026年7月

記事番号: C-170203

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