輸出増値税の免税・還付・控除について:中国からの輸出

質問

中国から海外に貨物を輸出するとき、仕入れにかかった増値税の免税・還付・控除を受けることはできますか。

回答

増値税暫定税条例第2条第4項の規定により、輸出貨物に対する増値税はゼロ税率が適⽤され、これは輸出にあたっての増値税が免税され、それに加えて仕⼊時にかかった増値税については還付や控除を受けることができることを意味します。 なおサービス貿易(役務提供)に関しては海外向け提供の場合も原則として増値税の還付はありません

本記事で使用される以下の用語についてご説明いたします。

  • ゼロ税率:免税に加え控除・還付も認めること
  • 免税:輸出取引には増値税は課税されないこと
  • 還付:支払い済の増値税を返還してもらうこと
  • 控除:仮受けした増値税から、支払い済み増値税を差し引いて税務申告すること(生産企業の場合のみ適用)

還付及び控除の計算根拠となる還付税率は、関税分類番号(HSコード)による品⽬ごとに異なります。この還付税率は同じ関税分類番号でも仕入れ増値税率と異なる場合があります。
還付税率は変更されることがありますので、最新の還付税率を確認する必要があります。
最新の増値税率及び還付税率は関税分類コードを特定したうえで中国税関サイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにて確認できます。
(注) 還付税率は「Export Tax Rebate」の項を参照ください。(中国語では出口退税率と呼ばれます)

I. 増値税の還付方法

増値税の還付⽅式には、次のとおり、⾮⽣産企業に対する免税還付⽅式、⽣産企業に対する免税控除⽅式、⼩規模納税者に対する免税⽅式の3⽅式があり、増値税を納税している中国企業(含外商投資企業)のみが還付可能です。

  1. 免税還付方式(非生産企業対象)
    輸出を行う貿易会社などの⾮⽣産企業に対し、輸出売上に対しては増値税を免除し、さらにその輸出商品を仕⼊れたときに⽀払った増値税額を還付する制度です。先払い(先徴収)後還付⽅式ともいいます。
  2. 免税控除還付方式(生産企業対象)
    ⽣産企業に対し、輸出売上に対しては増値税を免除し、さらに仕⼊れにかかった増値税額を⼀定の還付税率によって還付したり、その輸出製品を⽣産するために仕⼊れた原材料、部品などにかかった増値税額を控除する制度です。
  3. 免税⽅式(小規模納税者対象)
    ⼩規模納税者(原則として年間の増値税の課税売上高が50万元以下)の輸出売上に対して増値税を免除する制度です。仕入れ増値税の還付、控除は行われません。

II. 還付、控除される税額

  1. 非生産企業:免税還付方式
    還付税額=輸出商品に関連する仕入金額×還付税率
    同一関税分類番号でも、仕入れ増値税率と還付税率は必ずしも同じではないので、全額還付されないことがあり、その場合の不還付税額は下記の通りとなります。

    不還付税額=仕入れ増値税額―還付税額=仕入れ金額×(仕入れ増値税率―還付税率)

    すなわち輸出商品の増値税率と還付税率が同一の場合には、仕入れの際に支払った増値税が全額還付されます。 非生産企業の場合には、輸出商品の仕入れ時に支払った増値税のみが還付対象です(生産企業とはこの点で異なります)

  2. 生産企業:免税控除還付方式

    還付、控除税額=輸出製品に関連する仕入増値税−輸出FOB額×(輸出商品の仕入れ増値税率−還付税率)
    不還付、不控除税額=輸出FOB額×(輸出商品の増値税率−還付税率)

    1. 生産企業の場合には、仕入れた原材料、部品などを加工した商品を輸出するため、数量や形態が変化し、また輸送費や保管費、設備投資などの共通経費もあるため、生産のために支払った仕入れ増値税額と輸出商品の紐付けできません。
    2. したがって輸出商品のFOB金額をもとに「還付、控除されない税額(不還付、不控除税額)」をまず決定し、支払った増値税額からこの「還付、控除されない税額(不還付、不控除税額)」を引いた金額を還付します。
      「仕入れ増値税率−還付税率」のことを「不還付率」ということがあります。
    3. 輸出した時期を含む増値税の計算期間(月次)毎に、その間に輸出商品に関連して国内取引も含めて仕入れ時に支払った増値税額(仕入れ増値税)と国内取引で受領した増値税(仮受け増値税)の差額を算出します。
    4. 増値税額の差額がプラス(仕入れ増値税の方が大きい)の場合、その差額より不還付、不控除税額を差し引いた税額が還付されます。
    5. 生産企業の場合には、還付金額は非生産企業に比べて少なくなる可能性がありますが、非生産企業では適用されない輸送費や保管費などに対する増値税が控除対象となる場合があります。
    6. 還付、控除税額には上限があり、輸出FOB金額X還付税率を超えて還付されることはありません。(このことにより還付、控除税額は輸出に起因する増値税額に限定されることになります。なおこの計算は複雑ですのでここでは記載しません)
  3. ⼩規模納税者:免税方式
    小規模納税者には、標準的な増値税率13%に比べて軽減された軽減増値税率3%(注1)が適用され、売上の3%のみを増値税として納付します。この点で一般納税者に比べて優遇されています。 輸出取引にはこの軽減増値税率がゼロとなります(免税されます)。 ただし輸出した場合でも仕入れ時に支払った増値税の還付、控除はされません。

注1)この方式では、小規模納税人の増値税負担が他に比べて大きくなるとの実態があるため、2023年1-12月の売上に関しては、月次売上10万人民元以下の小規模納税人の場合は増値税納税が免除されます。また同10万人民元を超える小規模納税人の売上に対する増値税率が1%に軽減される公告がなされました。

文末参考資料参照
「増値税小規模納税者の増値税減免などの政策の明確化に関する公告」(財政部税務総局公告2023年第1号)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

III. 輸出品増値税還付取扱手続き(還付の認定と税還付申告)

  1. 免税還付方式を実⾏する非生産企業は購⼊した輸出貨物の増値税専⽤発票または普通発票を提出し、免税控除還付⽅式を実⾏する⽣産企業は、輸出貨物の輸出インボイスを提出します。
  2. 輸出企業(生産企業及び非生産企業)は規定期限内(輸出通関⽇からその翌⽉の増値税申告期限まで)に税務機関で輸出貨物税還付(免除)⼿続きを⾏わなければなりません(「輸出貨物役務増値税と消費税に関する管理弁法」)。輸出貨物税還付(免除)に必要な関連証憑を準備し、国家税務総局が認める輸出貨物税⾦還付(免除)電⼦申告システムによる電⼦申告データを使⽤し、輸出貨物税還付(免除)申告表を事実に基づいて記⼊し提出します。
  3. ⼩規模納税者には輸出にかかわる控除還付の適⽤はなく、輸出品増値税の還付はありません。

Ⅳ. 参考資料

  1. 「増値税小規模納税者の増値税減免などの政策の明確化に関する公告」(財政部税務総局公告2023年第1号)」
    (中文)国家税务总局关于增值税小规模纳税人减免增值税等政策有关征管事项的公告国家税务总局关于增值税小规模纳税人减免增值税等政策有关征管事项的公告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  2. 「増値税改革を深化させることに関係する政策に関する財政部、税務総局及び税関総署の公告」(財政部/税務総局/税関総署 公告2019年第39号)、 (中文)税务总局 海关总署关于深化增值税改革有关政策的公告2019/3/20) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  3. 「生活性サービス業増値税追加相殺政策を明確 にすることに関する財政部及び税務総局の公告」(財政部/税務総局公告2019年第87号)
    (中文)关于明确生活性服务业增值税加计抵减政策的公告
    财政部 税务总局公告2019年第87号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

Ⅴ.その他留意点

増値税の基本的内容は、下記を参照ください。
ジェトロ 中国-税制-その他税制. 2022年9月7日更新外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます なお増値税も含めて中国の税制は逐次変更されるので、最新の情報を確認する必要が あります。

関係機関

中国商務部 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
中国国家税務総局 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
中国財政部 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
駐日中国大使館経済商務参賛処 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関係法令

中国国家税務総局:
増値税暫定条例(国務院令第538号、2009年1月1日改正) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
輸出貨物税還付(免除)管理弁法(試行)(国税発[2005]51号、2005年5月1日施行 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
輸出貨物・労務増値税と消費税に関する管理弁法(財税[2012]24号2012年7月1日施行) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
輸出貨物・労務増値税と消費税に関する関連問題の公告(税務総局2013年第12号、2013年4月1日施行) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
輸出企業が輸出貨物税金(免除)還付申告時に外貨受取資料を提供する関連問題に関する公告(国家税務総局2013年第30号、2013年8月1日施行) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
輸出貨物税還付(免除)申告弁法の調整に関する公告(国家税務総局2013年第61号、2014年1月1日施行) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
輸出税還付(免除)の関連問題に関する公告(国家税務総局2015年第29号、2015年4月30日施行) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
輸出税還付(免除)の事後管理を強化することに関する問題の公告(国家税務総局2016年第1号、2016年1月7日施行) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
輸出貨物税還付(免除)企業分類管理弁法の改正に関する公告(国家税務総局2016年第46号、2016年9月1日施行) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
輸出増値税還付進度を加速することに関する公告(国家税務総局2018年第48号、2018年10月15日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国家財政部:
輸出貨物役務増値税及び消費税に関する政策の通知(財税[2012]39号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
増値税税率調整にかかる通達(財税[2018]32号、2018年5月1日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
一部製品の輸出還付率調整にかかる通達(財税[2018]123号、2018年11月1日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
中国中央人民政府:
国務院の内資企業、外資企業及び個人における都市維持建設税及び教育費付加を統一することに関する通知(国発[2010]35号2010年10月18日公布)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国務院法制弁公室:
中国都市維持建設税暫定条例(2011年改正)(国発[1985]19号、国務院令第588号より改正、2011年1月1日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
教育費付加徴収の暫定規定(2011年改正)(国発[1986]50号、国務院令第588号より改正、2011年1月8日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2017年3月
調査時点:2019年10月
調査時点:2023年11月

記事番号: A-010754

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