殺虫剤の現地輸入規則および留意点:米国向け輸出

米国向けに殺虫剤を輸出したいと考えていますが、米国の輸入規則および留意点について教えてください。

日本では、家庭用の害虫駆除剤は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)が適用され、農業用薬剤は農薬取締法が適用されるように用途によって規制が異なりますが、米国では、家庭用、農業・工業用の別に関わらず、環境保護庁(EPA)が所管する殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(Federal Insecticide, Fungicide, and Rodenticide Act: FIFRA)によって規制されています。

FIFRAで規制される殺虫剤には、除草剤や殺菌剤のほか、害虫のコントロールに利用される様々な物質が幅広く含まれます。植物成長調節物質や枯れ葉剤、乾燥剤として利用される化学物質や混合物も殺虫剤として扱われています。

I. EPAへの承認手続きについて
1. 企業番号(Company Number)と工場番号(Establishment Number)の取得
殺虫剤の輸出・販売にあたって、まず企業はEPA企業番号と呼ばれる製造企業各社に割り当てられる番号を取得し、米国内住所の登録を行う必要があります。このため、輸出業者はEPAとの連絡窓口となる米国内住所を有する代理企業を指定します。

輸出業者はEPAが指定する項目を明記した書類を作成し、企業番号の取得申請を行います。 次に、殺虫剤の製造工場番号を取得します。工場番号の申請には、フォーム3540-8を使用します。工場番号を取得した各製造工場は、年次製造報告書をEPAに提出する必要があります。年次報告も同じフォームを使用します。

2. EPAへの販売製品事前登録
米国内で販売される殺虫剤は、全てEPAへの事前登録が必要になります。EPAは、殺虫剤が製品ラベルに書かれた使用法に基づいて利用された場合に、人体や環境に悪影響を及ぼさないと判断したとき、製品を登録します。EPAでは殺虫剤を以下の3つのカテゴリーに分類しています。

  1. 従来型化学殺虫剤(合成化学物質を含む従来型殺虫剤)
  2. バイオ殺虫剤(動物、植物、微生物に由来する殺虫剤)
  3. 抗菌剤

全ての殺虫剤は、カテゴリーを問わず事前登録にあたり、後述3の書類・データを揃えます。新規有効成分を含む殺虫剤(新規殺虫剤)のほか、既存殺虫剤の新用法、既存殺虫剤と同一(リパッケージ)もしくは極めて類似する製品(リフォーミュレーション)も、EPAへの事前登録が必要になります。提出された事前登録申請書類は、まず書類上の不備などを確認する審査期間(3週間)を経た後でEPAによる実際の審査が行われます。

3. 事前登録に必要な申請書類の内容

  1. カバーレター(必須ではないが、EPAでは添付を推奨)
  2. フォーム8570-1(企業番号や工場番号を記入)
  3. 所定の手数料の支払証明書(小切手の写しか、専用ウェブサイトの支払確認書)

4. ラベルの下書き
米国に輸入される殺虫剤は、FIFRAと連邦規則(Code of Federal Regulation: CFR)第40条(40 CFR)のパート156に準拠した、適切なラベル表示を行う必要があります。ラベルには、製品の詳細説明や使用法の説明、警告および使用上の注意などが記載されていなければなりません。

5. データ
EPAが当該殺虫剤の安全性審査を行うために、申請者には、技術および科学的データの提出が義務付けられています。提出するデータは殺虫剤の種類によっても異なりますが、事前登録申請を行う殺虫剤が、既存殺虫剤と同一もしくは極めて類似する製品に該当する場合を除き、少なくとも製品の化学的性質(Product Chemistry)と急性毒性(Acute Toxicology)データを提出しなければなりません。提出すべきデータ内容はカテゴリーや殺虫剤の種類により異なります。また、化学的性質データや急性毒性データ以外には、残留濃度、環境動態、毒性等があります。これらについての規則の詳細は、40 CFRのパート158とパート161を参照してください。
なお、事前登録申請で提出するデータのフォーマットは、40 CFR 158.32-34、40 CFR 161.32-34、およびPesticide Registration Notice 86-5に詳細が定められています。

6. 機密情報ステートメント(Confidential Statement of Formula)の提出
FIFRAセクション10(d)(1)の(A)〜(C)により、殺虫剤の製剤データは機密情報に分類されるため、申請者は製剤データを機密情報扱いとする権利があります。機密情報扱いとして申請するには、機密情報ステートメント(EPA Form 8570-4)を添付の上、他のデータとは別に提出する必要があります。機密情報ステートメントの提出がなく、製剤データが他のデータと一緒に提出された場合には、申請者はこの権利を放棄したものと見なされます。機密情報データには、全ての活性成分と不活性成分、および全ての活性成分に関連する毒性を持つ不純物等の情報が含まれていなければなりません。なお、不活性成分に含まれる化学物質は、TSCAの規制対象となるため、当該化学物質がTSCAの「既存化学物質」リスト(TSCA Inventory)に収載されている必要があります。当該化学物質が新規のものである場合には、まず、輸入開始の少なくとも90日前に「製造前届出(Pre-Manufacturing Notice: PMN)」をEPAに提出しなければなりません。

II. 輸入の手続き
殺虫剤の輸入に当たって、輸入業者は、到着通知(Notice of Arrival: NOA)申請(EPA Form 3540-1)を各地域のEPA事務所に提出しなければなりません。NOAには、貨物(殺虫剤)の内容と量、到着日などの情報を記載する必要があります。一旦、管轄地域のEPA事務所の担当者から出荷が承認されれば、輸入業者にNOA申請書が返却されます。輸入業者は、殺虫剤の米国到着時に、EPA承認を得たNOAを、通関手続きを行う地区税関長(District Director of Customs)に提出します。

また、輸入業者は、殺虫剤の輸入に際して、「貨物が有害物質規制法(Toxic Substances Control Act: TSCA)の規制対象外であること」を示すネガティブ証明(Negative Certification)と呼ばれる陳述証明書を、米国税関国境保護局(CBP)に提出します。

関係法令
米国環境保護庁:
殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(FIFRA)

参考資料・情報
米国環境保護庁:
Pesticidesホーム
Pesticide Registration
Pesticide Registration Manual
Company Number、Establishment Numberの取得
Label Review Manual

調査時点:2016/10

記事番号: Y-120102

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