一時輸入制度:米国

質問

米国における展示会出品貨物・商品サンプル・職業用具の一時輸入制度について教えてください。ATAカルネの利用が可能か、またカルネを使用しない一時輸入制度について教えてください。

回答

物品の一時輸入のための通関手帳に関する条約(ATA条約)に基づき、職業用具、商品見本、展示会への出品物などの物品を外国へ一時的に持ち込む場合に外国の税関で免税扱いで一時輸入通関ができる通関手帳のことをATAカルネといいます。米国はATA条約のうち、商品見本条約と職業用具条約に加盟していますが、展示会条約には加盟していません。ATAカルネを使わない方法としては担保を提供することによる一時輸入制度(Temporary Importation under Bond: TIB)があります。

I. 展示会出品貨物

米国国内で行われる一般的な展示会(および見本市)に出展する貨物については、税関に担保を提供することにより一時輸入制度(TIB)を利用することができます。ただし、TIBの適用については特定の物品および用途に限られています。TIBを利用して輸入できる貨物は、米国関税率表(United States Harmonized Tariff Schedule)の9813.00.05〜9813.00.75に掲載されています。

    1. 輸入時の手続き

      輸入者は、一時輸入する出展貨物について関税に代わって担保を支払うことで輸入時の関税やその他諸税が免税になります。なお、税関担保には、輸入の都度通常の関税額およびその他諸税の2倍もしくは110%の額に相当する金額(最低担保金額は100ドル)を税関に提出するSingle Entry Bondと年度を通じて担保を提出するContinuous Bondがありますので、どちらかを選択することができます。

      なお、繊維製品については一時輸入でも製造業者コード(Manufacture Identification Code: MID)を輸入申告書類に記載することが必要です。MIDとは、製造会社の名称や住所、船積み会社を特定するコードです。MIDの記載がない場合は通関書類不備として受理されない場合があります。ハサミ等で切断された明らかなサンプル品の場合は必要ありません。

      一時輸入に必要な書類は下記のとおりです。
      インボイス
      パッキングリスト
      B/L(船荷証券)、AWB(航空貨物運送状)
      Entry/Immediate Delivery(税関様式No.CF3461)
      Entry Summary(税関様式No.CF7501)(CF3461提出後、10日以内に税関へ提出する納税申請書)
      その他関連する書類

    2. 輸出時の手続き
      TIBによる一時輸入制度を利用した場合、輸入者は輸入された日から起算して1年以内に貨物を輸出もしくは廃棄しなければなりません。1年を超えても輸出がされない場合は、通常の関税の2倍に相当する損害賠償金を払わなければなりません。なお、商品により保証金を支払えば最大3年間まで保税延長が可能となります。
    3. 輸入した展示品を販売する場合
      TIBにより一時輸入した展示品を販売する場合は、通常の輸入手続きが必要となり、販売する時点で速やかに通常の輸入申告を行い、関税およびその他諸税を支払います。なお、非居住者による展示物の販売は事業活動とみなされるおそれがありますので、米国の非居住者である出展者が展示品を販売する可能性がある場合は、事前に米国税務を専門とする会計事務所ならびに主催者に確認ください。

II. サンプル品の一時輸出入手続き

米国国内に持ち込むサンプル品については、販売、リース、加工目的として米国国内で消費・販売を行わない限り、輸入時の関税やその他諸税が免税されます。TIBとATAカルネを使用する2つの方法があります。

  1. TIB制度による輸出入手続き
    展示会出品貨物の一時輸入手続きと同様です。
  2. ATAカルネによる輸出入手続き
    ATAカルネを利用する場合は、輸入者はカルネ正本を税関に提出することで簡易的な輸出入手続きが可能です。ATAカルネにより輸入時の担保は不要で関税等の支払いが免除されます。また、カルネ有効期限内であれば何回でも輸出入が可能です。
  3. 輸入したサンプル品を販売する場合
    TIBにより輸入したサンプル品を販売する場合の手続きは、展示会貨物の販売と同様です。ATAカルネを利用して輸入したサンプルを販売した場合は、ATAカルネを発行した機関が当該貨物にかかる関税その他諸税の100%に相当する額の損害賠償金を税関に支払います。その後、カルネ発行機関よりATAカルネ名義人(一時輸入者)に対して同額の支払いが請求されます。

III. 職業用具の一時輸出入手続き

職業用貨物(カメラ、プロジェクター、タイプライター、その他の職業用具等)は一定の条件を満たす場合に免税で輸入することができます。主な一時輸入の方法としては、TIBとATAカルネを使用する2とおりの方法があります。手続きはそれぞれサンプル品の一時輸出入手続きと同様です。

関係機関

税関国境警備局(U.S. Bureau of Customs and Border Protection: CBP)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
日本商事仲裁協会(JCAA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参考資料・情報

税関国境警備局:
Importation of Commercial Samples外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
MID作成方法PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(24KB)
TIB適用商品リスト(特殊分類条項)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(320KB)

ジェトロ:
貿易・投資相談Q&A「小口貨物の通関制度:米国

調査時点:2014年12月
最終更新:2017年11月

記事番号: N-110217

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