一時輸入制度:フィリピン

質問

フィリピンにおける展示会出品貨物・商品サンプル・職業用具について、ATAカルネの利用が可能か教えてください。カルネを利用しない一時輸入制度について教えてください。

回答

Ⅰ. フィリピンにおけるATAカルネについて

共和国法第10863号(関税近代化法、CMTA)、関税行政命令第02-2022号、及び2024年関税覚書命令第08-2024号により、2024年7月15日から、フィリピンでも一時輸入にATAカルネ制度を利用することが可能となりました。
ATAカルネを利用した輸入対象物品の例と再輸出までの期間は以下の通りです。

  1. 展示会、博覧会、会議その他これに類するイベントで展示または使用される物品:6ヶ月
  2. 商業活動に関連して輸入されるコンテナ、パレット、サンプルその他の物品(ただし、その性質上、特定の物品の広告や特定の目的の宣伝以外には使用できない包装や物品(車両を含む)は除く。):6ヶ月
  3. 職業用具:1年

ATAカルネは、携行品および別送品に対して利用可能であり、郵便貨物および通過貨物には適用されません。また、ATAカルネは、ATA条約またはイスタンブール条約、または両方の条約の締約国によって発行されたもので、英訳されたものが利用可能です。
ATAカルネを利用して輸入・輸出された物品は、同一の状態で再輸出されなければなりません。再輸出時には、カルネ保持者はBOC E-チケッティングシステムでチケットを発行し、貨物検査を依頼して、内容がリストと一致しているか、かつ輸入時に提示されたカウンターフォイル及びバウチャーと一致しているかの確認を受けなければなりません。
ATAカルネを利用しない場合、以下の方法により一時輸入を行うことが可能です。

Ⅱ. 一時輸入制度

展示会出品貨物の一時輸入手続フィリピン国内で行われる展示会(および見本市)に出展する貨物については、フィリピン国内で消費・販売を行わない限り、関税近代化法第800条 (j)に基づく輸入時の関税、付加価値税が免税となる一時輸入制度があります。

1.輸入時の手続き

(1)財務省での手続き

輸入者は、フィリピンに物品を輸入し、一時輸入の目的が達成された後に再輸出する場合、まず財務省(DOF)の税金免除システム(TES Lite)に登録する必要があります。必要とされる情報は以下のとおりです。

  1. 荷受人の氏名
  2. 納税者番号(Tax Identification Number
  3. 電子メールアドレス
  4. 公式住所

また、DOFへの提出書類は以下のとおりです。

  1. 財務省-歳入局様式第91号
  2. 使用目的及び所有権に関する公証済み宣誓供述書
  3. 委任状(代理人申請の場合)
  4. 輸入船荷証券(BOL)、航空貨物運送状(AWB)
  5. インボイス(梱包明細含む)
  6. 契約書
  7. 関連当局による証明書、許可証(該当する場合)

DOFが、輸入者が当該輸入に係る関税及び諸税の支払いを免除されると判断した場合、DOFは税金免除証明書(Tax Exemption Indorsement, TEI)を発行します。

(2)関税局での手続き

輸入者は、一時輸入制度の申請時に、展示会の詳細ならびに出品者(輸入者)の詳細、出品の目的等が分かる資料を関税局に提出することで、輸入申告が可能となります。また、当該輸入品の関税および諸税に相当する担保を関税局に提供する必要があります。担保を受領した関税局は輸入者に対して再輸出約束書(Re-export Commitment Form)を発行します。
なお、免税措置を受けることができるのはフィリピン国際貿易センター(CITEM)により開催される展示会や見本市に限られていますので、注意が必要です。それ以外の展示会、見本市出品のための輸入の際は、一時輸入時の免税措置はありませんので、輸入関税、付加価値税を納める必要があります。

(必要な書類)

  1. 税金免除証明書(TEI)
  2. 輸入申告書
  3. 商業インボイス(英語表記)
  4. 輸入インボイス又はパッキングリスト(英語表記)
  5. BL(船荷証券)、AWB(航空貨物運送状)
  6. その他、関連する書類

なお、フィリピン関税局は展示会用の一時通関について厳しく取り締まりを行っています。アンダーバリュー(関税局が設定しているアイテムごとの標準価格より低い輸入価格での申告)の場合や輸入申告内容に誤りがある場合には、罰金が課される場合もあるので注意が必要です。

2.輸出時の手続き

輸入者は、輸入時に関税局が発行した再輸出約束書を関税局に提出することで、担保として提供した保証金が返金されます。輸出申告時に必要な書類は以下のとおりとなります。また、輸入申告受理の日から起算して3カ月以内に当該貨物を輸出するか、又は関税等を納付しなければなりません(関税局の承認を受けた場合に限り、さらに3カ月の延長が可能)。

(必要な書類)

  1. 一時輸入申請時の提出資料
  2. インボイス
  3. パッキングリスト
  4. B/L(船荷証券)、AWB(航空貨物運送状)
  5. 再輸出約束書(Re-export Commitment Form)

3.展示会で輸入した展示品を販売する場合

展示会で輸入した展示品を販売する場合は、事前に財務省に対して販売計画を報告し、承認証書(Letter of Endorsement)を受け取る必要があります。そして、販売後にインボイスもしくは売買同意書を関税局に提出して関税、付加価値税を支払った後でなければ、展示会場からの搬出はできません。
販売計画の申請には、以下の内容を記載します。

  1. 展示会、イベント等の詳細
  2. 展示会、イベント等の開催期間
  3. サンプル品の価格
  4. サンプル品の販売予定数量、等

Ⅲ. 商品サンプルの一時輸入手続き

商品サンプルを輸入する場合、関税近代化法第800条 (r)に基づく輸入時の関税、付加価値税が免税となる一時輸入制度があります。

1.輸入時の手続き

見本品については、数量・大きさ・構造上、販売不可能又は商業的価値がないもの、実用に供されない模型、「販売用サンプル—販売すれば処罰される(sample-sale punishable by law)」と表示された医薬品サンプルについては、新製品をフィリピン市場に紹介する目的で、かつ一度に必要量のみ輸入する場合に限り免税されます。ただし、輸入が当該取引に従事し適正に登録された者によって行われ、かつ事前に財務大臣の承認を受けることが必要です。また、医薬品サンプルについては保健大臣の事前承認を受け、かつ国内で入手できない新薬でなければなりません。
販促用サンプルについては、宝石類などを除き、公正な関税評価額が5万ペソ以内のものは免税措置を受けることができます。ただし、関税および諸税の合計課税評価額相当の担保を関税局に提供し、また、輸入申告受理の日から起算して3カ月以内に当該貨物を輸出するか又は関税等を納付しなければなりません。また、5万ペソを超える分については、輸入者は保税扱いで保管、廃棄、滅却するか自己消費として通常輸入するかを選択できます。 必要書類等の詳細は展示品の一時輸出入手続きを参照してください。

2.再輸出時の手続き

輸入者は、輸入時に関税局が発行した再輸出約束書を関税局に提出することで、担保として提供した保証金が返金されます(詳細は展示品の一時輸出入手続きを参照)。

Ⅳ.職業用具の一時輸入手続き

職業用具を輸入する場合、関税近代化法第800条 (i)に基づく輸入時の関税、付加価値税が免税となる一時輸入制度があります。

輸入時の手続き定住することを目的としてフィリピンに渡航した者などの所有する職業用具については、輸入者本人の職業、地位または立場にふさわしい範囲と数量であり、自身の使用のためのもので、交換や販売の目的ではなく、本人とともに持ち込まれるか、合理的な期間内に到着する場合であって、関税局が、当該人物が実際にフィリピンに定住すること、かつその物品が以前の居住地から持ち込まれたことについて十分な証拠を確認した場合に限り、当該物品は関税や税金の支払いを免除されます。

関係機関

関係法令

参考資料・情報

ジェトロ:
調査レポート「小口貨物の通関・関税制度(フィリピン)(2014年3月)

調査時点:2015年8月

最終更新:2025年10月

記事番号: N-110210

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