乳製品の輸入手続き:日本

質問

乳製品の輸入手続きについて教えてください。

回答

乳製品の一部は、関税割当品目の対象です。また、畜産経営の安定に関する法律により定められた指定乳製品等の輸入は、独立行政法人農畜産業振興機構(alic)が一元管理しています。

I. 関税分類番号(HSコード)

乳製品のHSコードは性状(乳脂肪分等)、用途により、多岐にわたります。HSコードの特定には、製品の成分分析表に基づき税関相談官室に事前教示を受けることをお勧めします。

  1. 生クリーム(HS0401)
  2. ヨーグルト(HS0403.10)
  3. バター(HS0405.10)
  4. チーズ(HS0406)
  5. 乳糖(HS1702.11、1702.19)
  6. チョコレート(HS1806)
  7. ミルクの調製品(HS1901)
  8. コーヒー、ミルクティー(HS2101)
  9. アイスクリーム(HS2105)
  10. 乳脂肪分を含むその他の調製食料品(HS2106)

II. 輸入時の規制

  1. 家畜伝染病予防法

    2017年11月1日から、これまで動物検疫の対象であった生乳に加え、新たに、以下の乳製品(※)についても輸入と輸出の両方で、動物検疫が必要となります。

    1. ミルク・クリーム等(HS0401、0402、ただし、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳を除く)
    2. バターミルク等(HS0403、ただし発酵乳を除く)
    3. ホエイ等(HS0404)
    4. バター等(HS0405、ただしバターオイルを除く)
    5. チーズ等(HS0406、ただしプロセスチーズを除く)
    6. ミルクアルブミン、濃縮ホエイ等、生乳・乳製品を原料とするもの(HS3502.20、3502.90)
    7. 生乳・乳製品を原料に含む飼料・ペットフード等(HS2309.10、2309.90)

    ※動物検疫対象品目の詳細については動物検疫所のウェブサイトをご参照ください。

    上記の乳製品を日本に輸入するときは「家畜衛生条件」によって規定される事項を記載した輸出国政府機関発行の検査証明書が必要となります。家畜衛生条件は、生乳・非加熱乳製品の対日輸出を認める国(リスト国)と生乳・非加熱乳製品の対日輸出を認めない国(リスト国以外の国)とで2種類設定されています。リスト国以外の国の場合は、口蹄疫ウイルス不活化処理工程を経ることが必須となります。

    上記の乳製品を日本から輸出するときは輸入国(仕向先国)側が日本の動物検疫所発行の輸出検疫証明書の添付を必要としているか否かに関わらず動物検疫所において検査を受け、輸出検疫証明書の発行を受けなければ輸出することはできません。

  2. 関税定率法/関税暫定措置法

    関税割当は一定の輸入数量の枠内に限り無税または低税率(一次税率)を適用し、需要者に安価な輸入品を確保する一方、この一定の輸入数量の枠を超える輸入分には高税率を適用することによって国内生産者保護を図る制度です。乳製品の関税割当による一次税率の適用を受けるには、関税割当申請手続きが必要です。農林水産省の関税割当公表にて品目ごとに割当数量と手続きが発表されます。

    乳製品で関税割当制度の対象となっている品目は下記のとおりです。

    1. ナチュラルチーズ(HS0406.10、0406.40、0406.90)
    2. 学校等給食用以外の脱脂粉乳粉状、粒状その他の固形状のミルクおよびクリーム(濃縮、乾燥、または砂糖その他の甘味料を加えたものに限る(HS0402.10、0402.21、0402.29)
    3. 学校等給食用脱脂粉乳(HS0402.10、0402.21)
    4. 無糖れん乳ミルクおよびクリーム(濃縮または乾燥をしたものに限るもの)(HS0402.91)
    5. 無機質濃縮ホエイ(HS0404.10)
    6. 配合飼料用ホエイおよび調製ホエイ(HS0404.10)
    7. 乳幼児用調製粉乳用ホエイ(HS0404.10、0404.90)
    8. バターおよびバターオイルミルクから得たバターその他の油脂(HS0405.10、0405.90)
    9. チーズおよびカードのうちプロセスチーズの原料として使用するもの(HS0406.10、0406.40、0406.90)
    10. その他の乳製品(0401.10、0401.20、0401.30、0403.10、0403.90、0404.90、1806.20、1806.90、1901.10、1901.20、1901.90、2101.12、2101.20、2106.10、2106.90)
  3. 畜産経営の安定に関する法律
    同法で定める指定乳製品等(バター、脱脂粉乳、ホエイ・調整ホエイ、デイリースプレッド、バターオイル)の輸入は、独立行政法人農畜産業振興機構(alic)が一元管理しています。詳細は文末の関係機関に掲載されているalicのウェブサイト「指定乳製品等の輸入」にてご確認下さい。
    1. 輸入方式
      輸入方式には以下2種があります。
      1. カレントアクセス輸入
        ガット・ウルグアイ・ラウンドにおける国際約束に基づき、alicが指定輸入業者に委託し、毎年定めた数量を輸入し、農林水産大臣が指示する方針を実施し、価格高騰時の売渡し(競争入札)を行う輸入方式です。指定輸入業者は競争入札により決定されます。
      2. 一般輸入
        ガット・ウルグアイ・ラウンドの国際約束に基づき、指定乳製品等の輸入を関税化し、定められた関税相当量を支払えば誰でも指定乳製品等を輸入できる制度です。
    2. 一般輸入の手続き
      指定乳製品を一般輸入しようとする輸入者は、alicに、輸入申告日の前日までに、以下の手続きを行う必要があります。
      1. 輸入者登録(所定様式による)
      2. 売渡・買戻申込書の提出(輸入申告書またはNACCS入力控の写し等の関係書類を添付)
      3. 担保の提供(alic口座へ担保金の振込等)
      4. alicから承諾書発行後、税関へ輸入通関の手続き
      5. 許可日から7日以内に輸入許可通知書をalicへ送付(ファックス)。
        alicから「売買差額納付通知書」が発行され、指定期限までに売買差額を納付すると担保が返還されます。
  4. 食品衛生法/乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)
    乳製品に独自に適用される食品規格基準(成分規格、製造・調理・保存基準)、器具・容器包装の原材料規格等への適合が必要です。

    また、厚生労働省検疫所食品等輸入届出受付窓口に「食品等輸入届出書」と必要書類(原材料、成分または製造工程等に関する説明書、必要に応じて衛生証明書、必要に応じて試験成績書)を届け出る必要があります。

    審査の結果、規格基準や安全性の確認が必要と判断されたものには検査が実施されます。審査・検査で同法上問題がなければ、税関への輸入申告時に通関書類とともに、検疫所から発行される「食品等輸入届出済証」を提出します。不適格と判断されたものは輸入できないため、輸入者は積戻し・廃棄等の措置をとります。

III. その他の規制

  1. 食品添加物の規制

    食品衛生法に基づく食品、添加物等の規格基準(厚生省告示第370号)に収載されている成分規格および製造方法の基準に適合していない食品等は輸入販売できません。外国産乳製品には日本で認められていない食品添加物や使用基準の定めがある物質が使用されている場合があります。例えば過去に以下のような違反例がありました。

    1. アイスミルク: アゾルビン(着色料)、ソルビン酸カルシウム(保存料)の含有
    2. ナチュラルチーズ: ソルビン酸カルシウム(保存料)、ナタマイシン(保存料)、ヘキサメチレンテトラミン(保存料)、三二酸化鉄(着色料)、酢酸ビニル樹脂(皮膜剤)
    3. ホエイパウダー: ポリソルベート(乳化剤)の含有
    4. ラクトアイス: ソルビン酸カリウム(保存料)の対象外使用など

    食品添加物等の告示は常時改正されていますので、厚生労働省のウェブサイト(「食品添加物」法令・通知)にて最新情報を参照ください。

  2. 残留農薬基準(ポジティブリスト制度)

    各食品中の残留農薬限度量は.食品衛生法に基づく食品、添加物等の規格基準(厚生省告示第370号)に収載されています(ポジティブリスト制度)。なお、ポジティブリストにない農薬等の一定量は0.01ppm以下でなければならないこと(告示第497号)、ポジティブリスト対象外物質のうち健康を損なうおそれのないことが明らかであるもの(告示第498号)も告示で定められています(法11条3項)。その他、暫定規制値が定められているもの(PCB、水銀、貝毒など)もあります。

    残留農薬基準は常時改正されていますので、変更内容は厚生労働省ウェブサイト(「食品中の残留農薬等」関連通知)を参照ください。

  3. 原産国表示
    容器包装入り食品は、同法に基づく表示義務のほか「食品表示法」に従って一括表示を行う必要があります。輸入品には原産地(国)表示が義務付けられています。
    乳製品の場合は「乳を原材料とする加工食品に係る表示の基準(2001年3月15日付、告示第71号)」が定められています。
  4. アレルギー表示

    アレルギー物質の表示制度において、「乳」は特定原材料に指定されており、これらを含む加工食品には表示が義務付けられています。

    「食品衛生法」、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)」、「健康増進法」で定められている食品表示義務内容の一元化表示を求める「食品表示法」が施行されています。

    「食品表示法」の従来の食品関連法規からの主な変更点は下記のとおりです。

    1. 加工食品と生鮮食品の区分の統一
    2. 製造所固有記号のルール改善
    3. アレルギー表示のルール改善
    4. 栄養成分表示の義務化
    5. 栄養強調表示のルール改善
    6. 栄養機能食品のルール変更
    7. 原材料名表示ルールの変更
    8. 販売用途の添加物表示のルール改善
    9. 通知等の表示のルール規定
    10. 表示レイアウトの改善

    「食品表示法」の詳細については文末の関係機関、消費者庁「食品表示法等(法令及び一元化情報)」および「食品表示に関するパンフレット・Q&A・ガイドライン等」を参照ください。

  5. 景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)/公正競争規約
    過大な景品付販売や消費者に誤認されるおそれのある誇大・虚偽表示等が禁止されています。また、乳製品関係では以下の業界団体が公正競争規約を定めています。
    1. 全国飲用牛乳公正取引協議会(表示)
    2. はっ酵乳、乳酸菌飲料公正取引協議会(表示)
    3. 殺菌乳酸菌飲料公正取引協議会(表示)
    4. チーズ公正取引協議会(表示)
    5. アイスクリーム類及び氷菓公正取引協議会(景品・表示)
  6. 健康増進法
    栄養成分または熱量に関する表示を行う場合は同法の「栄養表示基準」に従うことが義務付けられています。
  7. 資源有効利用法/容器包装リサイクル法
    ガラス瓶、ペットボトル、紙製容器、プラスチック容器、スチール缶、アルミ缶等は分別回収促進のための材料識別表示が義務付けられており、特定事業者(輸入業者を含む)は容器廃棄物の再商品化が義務付けられています。

関係機関

独立行政法人農畜産業振興機構(alic)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
一般社団法人全国公正取引協議会連合会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
動物検疫所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関係法令

消費者庁:
食品表示法等(法令及び一元化情報)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
厚生労働省:
食品、添加物等の規格基準(告示第370号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参考資料・情報

税関:
輸出入通関手続や税番・税率等に関するお問い合わせ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
1202 関税分類の事前教示制度について(カスタムスアンサー)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
独立行政法人農畜産業振興機構(alic):
一般輸入に係る指定乳製品等の買入れ・売戻し等外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
指定乳製品等の輸入外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省:
関税割当に関する情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
有機食品の検査認証制度外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
有機登録認定機関一覧外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
動物検疫所:
家畜伝染病予防法の解説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
輸入畜産物の検査手続外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
検査が必要な物(指定検疫物等)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
乳製品の検疫開始について外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
消費者庁:
品質表示基準一覧外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
食品表示に関するパンフレット・Q&A・ガイドライン等外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
アレルギー表示に関する情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
食品表示企画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
厚生労働省:
食品等の輸入届出の手続の流れ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
食品衛生法に基づく輸入手続きについて外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
食品添加物外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
食品中の残留農薬等(関連通知)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
経済産業省:
容器包装の識別表示Q&A外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
公益財団法人日本食品化学研究振興財団:
残留農薬等ポジティブリスト制度について(食品に残留する農薬、飼料添加物及び動物用医薬品の限度量)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2017年1月
最終更新:2020年5月

記事番号: M-011012

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