水産物全般の輸入手続き:日本
質問
水産物の輸入手続きについて教えてください。
回答
日本の漁業者保護を目的として、水産物の中には、外国からの輸入数量を輸入割当制度により制限している品目(輸入割当品目)や、特定の原産地又は船積地域に係る輸入について、輸入確認(事前または通関時)が必要な品目があります。養殖業に大きな被害をもたらす魚病の海外からの侵入を防ぐため、2016年7月27日から一部の水産物に対して新たな輸入防疫制度(農林水産大臣の輸入許可制度)が導入されました。また、食品衛生法および食品表示法にも遵守する必要があります。
I. 輸入割当(IQ)品目
- 対象品目
水産物では下記の18品目が輸入割当の対象です。
割当品目名 1 たら 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥のたら並びにたらのフィッシュミール 2 すけそうだら 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥のすけそうだら(すけそうだらの卵を除く)並びにすけそうだらのフィッシュミール 3 ぶり・さんま・貝柱および煮干し 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥のぶり・さんま・貝柱および煮干し並びにぶり、さんまのフィッシュミール 4 ほたて貝 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥のほたて貝 5 水産物 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥の水産物(ただし、にしん、すけそうだら、たらの卵、いかおよび干しするめを除く)並びにそれらの魚種のフィッシュミール(韓国を原産地とするたら、ぶり、さんま、貝柱、煮干し、あじ、さば、いわし、ほたて貝が対象) 6 こんぶ こんぶ 7 ばら干しのあおのりおよびひとえぐさ ばら干しのあおのりおよびひとえぐさ 8 にしん※ 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥のにしん並びににしんのフィッシュミール 9 いわし 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥のいわし並びにいわしのフィッシュミール 10 あじ 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥のあじ並びにあじのフィッシュミール 11 さば 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵、塩水づけおよび乾燥のさば並びにさばのフィッシュミール 12 たらの卵 たら(すけそうを含む)の卵 13 干しするめ 干しするめ 14 こんぶ調製品 こんぶ(ボイル後塩蔵したものに限る)、こんぶの調製品 15 干しのり 紙状に抄製した海草並びにそれ以外のあまのり及びあまのりを交えた海草 16 のりの調製品(無糖の味付けのりを除く) のりの調製品(焼きのりを含み、無糖の味付けのりを除く) 17 無糖の味付けのり 無糖の味付けのり 18 いか 活、生鮮、冷蔵、冷凍、塩蔵及び塩水づけのいか - 輸入割当の申請
上記の輸入割当品目については、品目ごとに原則年1回の輸入発表(申請手続き等の発表)が行われます。輸入発表は経済産業公報及び「通称公示(通商弘報)」でも確認することができます。詳細は経済産業省のウェブサイト「水産物の輸入割当」を参照してください。
なお、輸入割当は原則として対外決済を伴う場合を対象としています。本邦から無償で輸出し、委託加工契約により加工した輸入貨物については「特殊事由による貨物の輸入について」に基づく申請手続きが必要です。
初めて輸入割当てを申請する場合は、基本的には、「先着順割当て」に申請します。
II. 2号承認品目
2号承認制度とは、特定の原産地又は船積地域に係る輸入について承認を必要とする制度です。輸入公表の二の表の第1に掲げる地域を原産地又は船積地域とする特定の貨物を輸入する前に経済産業省による輸入承認(2号承認)が必要です。対象品目については、経済産業省のウェブサイト「特定地域からの輸入規制(2号承認) 」を参照してください。
III. 事前確認品目
- まぐろ類
まぐろ類は、「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」「インド洋まぐろ類委員会(IOTC)」「全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)」「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」「みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)」が設置されており、各国際漁業管理機関によってまぐろ類資源の持続的利用を図るための資源管理が行われています。
まぐろ類を輸入する場合は、外国為替及び外国貿易法に基づき、経済産業大臣の確認が必要です。 - めろ
めろは、南極の海洋生物資源の保存に関する条約に基づいて設置された「南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)」を中心に資源管理が行われています。
めろを輸入する場合は、外国為替及び外国貿易法に基づき、経済産業省が確認手続を行っています。輸入申告時に経済産業省が発行した確認書が必要ですので、経済産業省に申請し確認書の交付を受けてください。 - カニ
2014年12月10日に発効された「北西太平洋における生物資源の保存、合理的利用及び管理並びに不正な取引の防止のための日本国政府とロシア連邦政府との間の協定」に伴い、日本に輸入されるカニについて、外国為替及び外国貿易法に基づき、次の確認手続きが必要です。- ロシアを船積地域とするカニを輸入する場合は、上記協定に基づき、ロシア連邦漁業庁が発給する証明書等を、経済産業省又は税関に提出し、確認を受ける手続き
- ロシアを除く国又は地域を船積地域とするカニを輸入する場合は、ロシア周辺海域で漁獲されたカニが第三国産と偽装されることを防止するため、船積地域の政府その他の公的機関が発給する原産地証明書等を、経済産業省又は税関に提出し、確認を受ける手続き
IV. 水産物資源保護法
水産業などに大きな被害をもたらすおそれのある水産動物の疾病(輸入防疫対象疾病)の我が国への侵入・まん延を防ぐため、それら疾病にかかるおそれのある水産動物を我が国へ輸入する際には、水産資源保護法に基づく農林水産大臣の輸入許可が必要です。主として観賞用および養殖用の水産物が対象ですが、食用の生きているもの(特にアワビ、カキ、クルマエビなど)を輸入後、出荷するまでの一定期間公共用水面またはこれに直接排水する施設で保管するものは輸入許可の対象です(ただし、その保管施設で使用した水を下水道に排水する、十分な消毒後に排水する場合などは、輸入許可申請の対象外となります)。対象の水産物を輸入する場合は、2016年7月27日より水産資源保護法に基づく農林水産大臣の輸入許可が必要となります。輸入許可手続については、到着予定の空港・海港の動物検疫所にお問い合わせ下さい。
動物検疫所:水産動物の検査について
農林水産省:水産動物の病気を防ぐために(水産動物の衛生及び水産動物の感染症について)
V. 食品衛生法
- 食品等輸入届出
販売または営業に使用する目的で食品を輸入する場合には、輸入者は「食品等輸入届出書」と必要書類(原材料表、製造工程表、自主検査成績書等)を揃え、通関しようとする海空港を管轄する厚生労働省検疫所に提出します。届出書の審査の結果、検査が必要とされたものは保税地域内で検査が行われ、輸入の可否が判定されます。フグの輸入に際しては輸出国政府が発給する衛生証明書の添付が必要です。
ジェトロ貿易投資相談Q&A「食品衛生法:日本」
- 食品規格基準
食品衛生法第11条に基づき一般の成分規格、製造、加工基準、保存基準が定められています。また、下記の食品には個別に成分規格、製造基準、加工基準、保存基準が定められています。食品添加物および水産用医薬品の残留基準も定められています。抗生物質・合成抗菌剤については、限度量一覧表に基準がない場合は、「食品は、抗生物質又は化学的合成品たる抗菌性物質を含有してはならない」が適用されますので、水産用医薬品の残留許容量はありません。- 鯨肉(生食用冷凍鯨肉を除く)
- 鯨肉製品
- 魚肉ねり製品
- いくら、すじこ及びたらこ
- ゆでだこ
- ゆでがに
- 生食用鮮魚介類
- 生食用かき
- 冷凍食品
VI. 食品表示法
食品を摂取する際の安全性及び一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会を確保するため、食品衛生法、JAS法及び健康増進法の食品の表示に関する規定を統合して2015年4月に食品表示法が施行されました。「食品表示法」の詳細は消費者庁のウェブサイトを誤参照ください。
関係機関
参考資料・情報
経済産業省:
水産物の輸入割当について
特定地域からの輸入規制(2号承認)
貿易管理
動物検疫所:
水産動物の検査について
厚生労働省:
食品衛生法
消費者庁:
食品表示法
調査時点:2017年3月
最終更新:2023年3月
記事番号: M-010913
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