食肉および食肉製品の輸入手続き:日本

質問

食肉および食肉製品の輸入手続きについて教えてください。

回答

食肉および食肉製品の輸入に際しては、家畜伝染病予防法に基づく畜産物の輸入検査、食品衛生法に基づく食品等輸入検査を受ける必要があります。なお、豚肉は差額関税制度の対象になります。

Ⅰ. 関税分類番号(HSコード)

  • 牛の肉(生鮮、冷蔵)(HS0201)
  • 牛の肉(冷凍)(HS0202)
  • 豚の肉(生鮮、冷蔵、冷凍)(HS0203)
  • 羊またはやぎの肉(生鮮、冷蔵、冷凍)(HS0204)
  • 馬の肉(生鮮、冷蔵、冷凍)(HS0205)
  • 食用のくず肉(上記の動物のもので、生鮮、冷蔵、冷凍)(HS0206)
  • 肉および食用のくず肉(家きんのもので、生鮮、冷蔵、冷凍)(HS0207)
  • 肉および食用のくず肉(その他のもので、生鮮、冷蔵、冷凍)(HS0208)
  • 家きんの脂肪および豚の筋肉層のない脂肪(HS0209)
  • 肉およびくず肉(塩蔵、塩水漬け、乾燥、くん製)、ミール(HS0210)
  • ソーセージ類(HS1601)
  • 肉の調製品(HS1602)
  • 肉の詰め物をしたパスタ(HS1902.20)
  • 調製食料品(HS2106)

Ⅱ. 輸入時の規制

  1. 関税暫定措置法/関税定率法(第12条の2)/畜産物の価格安定に関する法律

    関税分類番号HS0203、HS0206、HS0210、HS1602のうち、豚肉については差額関税制度が適用されます。これは国内養豚農家の保護を目的に、輸入品の価格が低い時は分岐点価格を下回る部分を関税として徴収し、価格が高い時は低率な従価税を適用することにより関税負担を軽減し、消費者の利益を図る仕組みです。

  2. 家畜伝染病予防法

    食肉は同法に基づく「指定検疫物」で、輸入に際しては指定期日までに輸入港を管轄する動物検疫所へ「輸入検査申請書(畜産物)」に輸出国検疫機関発行の「検査証明書」の必要書類とともに届け出る必要があります(法第40条)。検査の結果、合格すれば「輸入検疫証明書」が交付されます(法第44条、第45条)。
    牛豚羊家きん等の肉については、悪性家畜伝染病(牛疫、口蹄疫、豚コレラ、アフリカ豚コレラ、高原病性鳥インフルエンザ)等の侵入を防止するため、輸入禁止地域が定められています。 また、BSE(牛海綿状脳症)発生国からの牛・羊・やぎ由来、CWD(慢性消耗性疾患)発生国からのシカ由来の肉製品などの輸入は一時停止されています。

  3. 食品衛生法

    食品を販売目的で輸入する場合、輸入港を管轄する厚生労働省検疫所輸入食品監視担当へ「食品等輸入届出書」に必要書類(商品説明書、原材料、成分表、製造工程、保存方法等を示す資料、既に輸入実績のある場合は指定検査機関分析の成績表等)を添付して届け出る必要があります。審査・検査の後、同法上問題がなければ、届出済証が返却されますので、輸入申請時に税関に通関書類とともに提出します。その他、以下の点に注意が必要です。
    食肉の輸入には輸出国政府機関発行による「衛生証明書」の添付が必要な場合があります。
    食肉製品は同法に基づく成分・製造・保存について基準が定められています。
    日本では使用が禁止されている発色剤、着色料、保存料等の食品添加物が使用されていることがあります。過去の違反事例として、イベルメクチン(ブラジル産牛肉)、クレンブテロール(中国産豚肉)、フラルタドン(中国産鳥肉)などの検出事例があります。
    残留農薬基準(ポジティブリスト制度)についても規制があり、一定以上の農薬、飼料添加物、動物用医薬品等が残留する食品の販売等は禁止されています。

  4. 輸入通関

    「輸入(納税)申告書」に、上記で取得した「輸入検疫証明書」、「届出確認済食品等輸入届出書」、インボイス、船荷証券(B/L)、保険明細書等の関係書類を添付して税関に提出します。なお、特恵関税、EPA関税の適用を申告する場合は、輸出国の原産地証明書と運送要件証明書(通し船荷証券の写し等)が必要です。審査・検査及び納税の後、輸入許可書が交付されます。

Ⅲ. 販売時の規制

  1. 食品表示法

    食品衛生法、JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)および健康増進法の食品の表示に関する規定を統合した食品表示法が2015年4月に施行され、表示すべき事項(名称、アレルゲン、保存方法、消費期限、原材料、添加物、栄養成分の量および熱量、原産地その他食品関連事業者が表示すべき事項)を食品表示基準として定めています。輸入農産物は原産国名を記載することが必要です。

  2. 農林物資の規格化等に関する法律(JAS法)に基づく「JAS規格」

    JAS規格を満たしていることを承認された製品にはJASマークを付けることができます。食肉および食肉加工品については、以下のような規格がありますがJAS規格は任意規定です。

    1. 一般JAS規格
      畜産物缶詰及び畜産物瓶詰、食肉製品(ベーコン類、ハム類、プレスハム、ソーセージ、ハンバーガーパティ、チルドハンバーグステーキ、チルドミートボール)
    2. 特定JAS規格
      熟成ベーコン類、熟成ハム類、熟成ソーセージ類、地鶏肉
    3. 有機JAS規格
      有機畜産物・有機畜産物加工食品
    4. 生産情報公表JAS規格
      牛肉、豚肉
  3. 景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)/公正競争規約

    同法に基づく業界自主表示規約として全国食肉公正取引協議会による「食肉の表示に関する公正競争規約」、ハム・ソーセージ類公正取引協議会による「ハム・ソーセージ類の表示に関する公正競争規約」があります。

参考資料・情報

記事番号: M-010887

ご質問・お問い合わせ

記載内容に関するお問い合わせ

貿易投資相談Q&Aの記載内容に関するお問い合わせは、オンラインまたはお電話でご相談を受け付けています。こちらのページをご覧ください。