非居住者が保有する貨物の通関制度:マレーシア

質問

当社は、マレーシアに住所のない日本企業です。マレーシアに貨物を送り、非居住者名義(マレーシアに住所を有しない)でマレーシア国内に輸入通関できますか。また、非居住者名義で輸出通関や貨物の管理を行うことはできますか。

回答

マレーシアにおいては、非居住者が自己の名義で輸出入申告、積戻し申告および貨物の管理を行うことはできません。

I. 非居住者による輸出入申告および積戻し申告

マレーシアで輸出入申告上の輸出入者、積戻し申告上の積戻し申告者となるには、マレーシアに住所または居所を有している必要があります。したがって、マレーシア国内に住所および居所を有しない非居住者は、輸出申告の輸出者、輸入申告の輸入者および積戻し申告の申告者になることはできません。非居住者がマレーシア国内に有する貨物を輸出する場合、マレーシア国外から貨物を輸入する場合および積戻し申告をする場合には、一般代理人を指名し、その一般代理人が通関業務代理人を指名し、その通関業務代理人を申告する必要があります。一般代理人と通関業務代理人は同一の者を指定することも可能です。なお、通関業務代理人となるためには1967年関税法第90条に基づき税関長の承認を受ける必要があります。
マレーシア税関は、通関業務代理人の概要についてまとめたガイド(Guide on: Customs Agent Services)を発行しています。同ガイドは、文末の業界ガイド一覧(List of Industry Guides)内に掲載されていますので、ご参照ください。

II. 非居住者が特別地域(SA)内で保有する貨物管理

  1. 特別地域(SA)内での非居住者名義の貨物管理の可否
    非居住者が自己の名義で外国貨物を管理することはできません。非居住者は一般代理人を指名し、代理人が特別地域(SA)内で貨物の管理を行います。特別地域(SA)とは、自由貿易区(FZ)、保税倉庫(LW)、保税工場(LMW)およびマレーシア・タイ共同開発地域(JDA)を指します。自由貿易区(FZ)については、マレーシア税関が文末記載のウェブサイトに一覧を公開していますので、ご参照ください。
  2. 蔵置可能期間
    特に制限はありません。
  3. 特別地域(SA)内で貨物を管理するにあたって生ずる課税関係
    非居住者が恒久的施設(Permanent Establishment: PE)を有すると認定された場合、マレーシアの法人所得税が課税されます。日本・マレーシア租税条約第5条4項によると、貨物の保管、展示のため保有のみを行っている場合には、PEと認定されません。ただし、租税条約で免税となる旨が記載されている場合であっても、税務執行レベルで課税されるケースがあります。

III. 非居住者による特別地域(SA)外(主関税地域)における貨物管理

特別地域(SA)外(主関税地域)では、マレーシアの内国貨物とみなされます。この場合、非居住者であっても、自己の名義で貨物管理を行うことができます。
ただし、非居住者が遠隔地にあるマレーシアの貨物を日常的に管理するのは事実上困難であり、実際には現地の倉庫業者等に委託をして管理をすることが一般的です。

  1. 蔵置可能期間
    特に制限はありません。
  2. 特別地域(SA)外(主関税地域)において貨物を管理するにあたって生ずる課税関係
    1. 非居住者がPEを有すると認定された場合、マレーシアの法人所得税が課せられます。日本・マレーシア租税条約第5条4項によると、貨物の保管、展示のため保有のみを行っている場合には、PEを有すると認定されません。ただし、租税条約で免税となる旨が記載されている場合であっても、税務執行レベルで課税されるケースがあります(上記II-3.と同様)。
    2. 特別地域(SA)外(主関税地域)における内国貨物の引き渡し等については、売上・サービス税(Sales and Services Tax: SST)の課税対象となります。また、特別地域(SA)内から特別地域(SA)外(主関税地域)への外国貨物の引き取り等については、関税及びSSTの課税対象となります。ただし、次の外国貨物の移動に対しては、原則として関税及びSSTは課せられません。
      1. 特別地域(SA)外(主関税地域)から特別地域(SA)への貨物の移動
      2. 特別地域(SA)間/内の貨物の移動
      3. 指定地域(DA)(ラブアン、ランカウイおよびティオマン)から特別地域(SA)への貨物の移動

マレーシア税関は、特別地域(SA)の概要についてまとめたガイド(Guide on: Special Area (SA))を発行しています。同ガイドは、文末の特定ガイド一覧(List of Specific Guides)内に掲載されていますので、ご参照ください。

関係機関

関係法令

参考資料・情報

マレーシア税関:
業界ガイド一覧(List of Industry Guides)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
特定ガイド一覧(List of Specific Guides)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
自由貿易区(FZ)および各区当局の一覧(マレー語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2017年1月
最終更新:2024年2月

※本記事は、日本貿易振興機構(ジェトロ)クアラルンプール事務所が中小企業海外展開現地支援プラットフォーム事業による調査として、TNY Consulting (Malaysia) Sdn Bhdに委託し、2024年2月に入手した情報に基づき作成した物です。
掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。また、本記事はあくまでも参考情報の提供を目的としたものであって、法的助言を構成するものではなく、法的助言として依拠すべきものでもありません。本記事で提供する情報に基づいて行為をされる場合には、必ず個別の事案に沿った具体的な法的助言を別途お求めください。 ジェトロおよびTNY Consulting (Malaysia) Sdn Bhdは、本記事の記載内容に関して生じた直接的、間接的、派生的、特別の、付随的、あるいは懲罰的損害および利益の喪失については、それが契約、不法行為、無過失責任、あるいはその他の原因に基づき生じたか否かにかかわらず、一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよびTNY Consulting (Malaysia) Sdn Bhdがかかる損害の可能性を知らされていても同様とします。

記事番号: K-120304

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