輸出時の消費税:日本

質問

輸出における消費税の輸出免税と仕入税額の控除(還付手続き)について教えてください。

回答

国内取引では消費税(国税)と地方消費税の合計10%(軽減税率は8%)の消費税がかかります。しかし、輸出取引を行った場合には、消費税が免除されます。これは、内国消費税である消費税は外国で消費されるものには課税しないという考えに基づくものです(国税局タックスアンサーNo. 6551)。これを輸出免税と言います。輸出免税はモノの輸出以外にも、国際輸送、国際電話など、外国に向けて行うサービスに対しても適用されます(消費税法第7条)。輸出免税の適用に際しては、輸出取引の区分に応じて輸出許可書等の証明書(電磁的記録を含む)が必要です(消費税法施行規則第5条)。
課税仕入(消費税の課税対象となる仕入れ)には消費税及び地方消費税の額が含まれているため、課税事業者は消費税及び地方消費税の申告の際に仕入税額(仕入れ時に仕入先に支払った消費税額)の控除をすることができます。仕入税額の控除は、課税期間中に(1)課税事業者が販売先から受け取った仮受消費税と、(2)事業者が仕入先に支払った仮払消費税の差額を期末に申告納付する(または仮払消費税の額の方が多い場合は還付される)ものであり、個別具体的な物品を輸出した際に当該物品に係る消費税の税額控除を申請するわけではありません。また、消費税の納税・還付額は一般に企業の期間損益(損益計算書上の各利益)に影響を及ぼしません。

1. 輸出免税の概要

課税事業者が次のような輸出取引等を行った場合は、消費税が免除されます。

  1. 国内からの輸出として行われる資産の譲渡または貸付け
  2. 国内と国外との間の通信または郵便もしくは信書便
  3. 非居住者(注)に対する鉱業権、工業所有権、著作権、営業権等の無体財産権の譲渡または貸付け
  4. 非居住者(注)に対する役務の提供

ただし、非居住者(注)に対する役務の提供であっても、国内に所在する資産に係る運送や保管あるいは国内における飲食や宿泊のほか、これらに準ずるもので当該非居住者が国内において直接便益を享受するものについては免税とされる輸出取引にはならず、消費税が課されます。輸出免税等の範囲については、以下の国税庁法令解釈通達をご確認ください。
国税庁「輸出免税等の範囲」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

2. 輸出商品の仕入れにかかった消費税の還付

国税庁によれば、消費税は「最終的に消費者が負担し、納税義務者である事業者が納め」るものとされています。課税事業者は、課税期間中に役務の提供時に受け取った消費税と費用計上時に支払った消費税の差額を、納付(差額がマイナスになる場合は還付)します。
国税庁「消費税のしくみ」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

消費税の確定申告の概要と手続きは次のとおりです。

  1. 課税事業者

    課税期間(個人事業者は暦年、法人は事業年度)の基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超える事業者は、消費税の納税義務者(課税事業者)となります。基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合は、その課税期間においては課税事業者となります。

    特定期間とは、個人事業者の場合はその年の前年の1月1日から6月30日までの期間、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間のことをいいます。
    なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。

  2. 免税事業者
    基準期間の課税売上高及び特定期間の課税売上高等が1,000万円以下の事業者(免税事業者)は、その年(又は事業年度)は納税義務が免除されます。なお、免税事業者でも課税事業者となることを選択することができます。適格請求書発行事業者の登録を受けている間は、納税義務は免除されません。
  3. 消費税の計上方法・申告方法について
    期中に事業者が(1)仕入れて支払った仮払消費税、(2)国内販売時に受け取った仮受消費税との差額を申告のタイミングで納付します(原則課税、税抜経理方式、中間納付なしの場合)。
    a. 国内で消費税を支払って仕入
    借方 貸方
    仕入高 100,000 仕入債務 110,000
    仮払消費税 … a 10,000
    b. 国内で消費税を受け取って販売
    借方 貸方
    売掛債権 82,500 売上高 75,000
    仮受消費税 … b 7,500
    c. 海外に向けて消費税を受け取らずに販売
    借方 貸方
    売掛債権 75,000 輸出売上高 75,000
    a~c. 消費税決算時整理
    借方 貸方
    仮受消費税 … b 7,500 仮払消費税 … a 10,000
    未収消費税 … c 2,500
    d. 消費税の還付
    借方 貸方
    現金 2,500 未収消費税 … c 2,500

    上記の例では、一時的に支払った消費税が、一時的に受け取った消費税よりも多いため、差額分が還付されます。 消費税の申告に関する会計処理については、税抜経理方式を採用している場合、貸借対照表上の「仮受消費税」「仮払消費税」「未収消費税(還付の場合)」「未払消費税(納付の場合)」等の勘定科目で計上され、納税申告・還付に際して実際に現金の入出金が生じます。 他方、損益計算書上では、企業が消費税の申告・納付額をそのまま会計上の費用として計上する訳ではなく、消費税は期間損益に影響を及ぼす性質のものではありません。

    法人は課税期間の末日の翌日から2か月以内に、消費税と地方消費税を併せて所轄税務署に申告・納付します。この際、還付申告書を提出する場合は、関連する明細書を添付する必要があります。
    また、直前の課税期間の消費税額が48万円を超えて4百万円以下の事業者は、中間申告と納付を行う必要があります。直前の課税期間の消費税額が4百万円を超えて48百万円以下の事業者は年3回、48百万円を超える事業者は年11回の中間申告・納付が必要です。

    国税庁『消費税のしくみ』外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

  4. 関係書類の保存
    輸出免税の適用を受けるためには、輸出取引等の区分に応じて輸出許可書、税関長の証明書または輸出の事実を記載した帳簿や書類を整理し、納税地等に7年間保存しなければなりません。
    帳簿や書類とは、輸出許可が必要な物品の場合には輸出許可書またはこれに代わる税関の証明書が、サービスの提供などの物品以外の場合にはその契約書などの一定の事項が記載されたものを指します。

    国税庁タックスアンサー『No.6551 輸出取引の免税』外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関係機関

関係法令

国税庁:
消費税法基本通達(第7章第2節「輸出免税等の範囲」)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
消費税法施行規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参考資料・情報

国税庁:
タックスアンサー No.6551 輸出取引の免税 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
タックスアンサー No.6451 仕入税額の控除の対象となるもの外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
輸出取引に係る輸出免税の適用者外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国内に営業所を有する非居住者に対する役務の提供外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
税関:
カスタムスアンサー 5003 消費税の輸出免税について(事業者の場合)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2024年6月
最終更新:2024年12月

記事番号: J-120102

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