ACFTA(中国ASEAN自由貿易協定)に基づく特恵関税を適用する際の留意点

質問

ACFTA締約国間貿易でACFTA締約国の第3国を経由して貿易取引を行い、特恵関税の適用を受けるための留意点を教えてください。

回答

ACFTAとは、中国ASEAN自由貿易協定(ASEAN China Free Trade Agreement: ACFTA)のことで、同協定の中の物品貿易協定(TIG)に基づき加盟域内の貿易取引において、ACFTA特恵関税の適用を受けることができます。

Ⅰ.ACFTA特恵関税の適用

協定の譲許表を活⽤して、輸⼊国側で該当品⽬に特恵関税が適⽤されることを確認します。タイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシアおよびブルネイのASEAN6カ国と中国は2012年までに、あらかじめ関税削減を予定していた、いわゆるNormal Track品⽬の中の関税を撤廃済みで、ベトナム、ラオス、ミャンマーおよびカンボジアのASEANの残りの4カ国、でも順次低減が進んでいます。その他、関税を⼀定までしか低減しないSensitive Listに掲げられた品目、低減を⾏わないHighly Sensitive Listに掲げられた品目や削減の対象外とする除外品目があります。

Ⅱ.互恵規定(Reciprocity)

ACFTAでは、特恵関税は必ずしも各国の譲許スケジュールどおりに適⽤されません。輸⼊国のNormal Trackにある品⽬でも輸出国のSensitive Listにある品⽬に対しては、MFN(最恵国対遇)税率を超えない範囲で、Normal TrackとSensitive Trackのどちらか⾼いほうの税率が適⽤されます。これを互恵規定(Reciprocity)といいます。

Ⅲ.原産地の得定

ACFTAに基づいて産品をASEAN諸国から中国向けに輸出、あるいは中国からASEAN諸国向けに輸出する場合のいずれの場合も、輸⼊国の税関に輸出国政府が発⾏する原産地証明書(Form E)を提出する必要があります。Form EがないとACFTA 協定税率の適⽤を受けられません。
輸出産品がACFTAの原産品とみなされる条件としては以下が挙げられます。

  1. 当該締約国において完全に獲得または製造または締約国産の原材料のみで製造された産品。
  2. 一部の非原産品を用いて締約国にて実質的な変更を加え製造された産品。実質的な変更には以下のa~dの基準があります。
    1. 付加価値基準:輸出貨物のFOB価額から、当該貨物の製造過程における当該締約国・地域の非原産材料価額(VNM)を控除した後の残余金額(RVC)が、輸出貨物のFOB価額の40%以上であること。
      計算式
      RVC =(FOB-VNM)÷ FOBX100
      非原産材料価額は、輸入時のCIF価格か、加工が行われた際に最初に確認できる支払い価格となります。
    2. 関税分類変更基準︓⾮締約国・地域原産の材料を輸出締約国において製造、加⼯した後の産品の「商品の名称および分類についての統⼀システム」における関税分類番号(HSコード)の上4桁が変更されること(⼀部の物品について適⽤)。
    3. 加工工程基準:特定の加工工程を締約国・地域で行うことを原産品の条件とすること。
    4. その他の基準:上記の基準以外に、締約国・地域が採用に同意した産品の原産地を確定するためのその他の基準

なお、締約国の産品や原材料が、別の締約国・地域内で別の産品の製造に用いられ、かつその別の産品の組成部分になった場合は、元の産品または原材料は、当該別の締約国の原産品とみなされます。

Ⅳ.積送基準(直送の原則)

「直送」とは、貿易協定に基づく産品が、締約国間で直行輸送され、途中で非締約国を経由しないことをいいます。
締約国原産の産品が、他の国・地域を経由して輸入締約国内に輸送された場合であっても、輸送途中における輸送手段の変更または臨時的な保管の有無に関わらず、同時に次の条件を満たしたときには「直送」とみなされます。

  1. 当該産品が他の国・地域を経由した際に、産品を良好な状態に保つために必要な処理以外の処理がされていないこと。経由国で発行された非加工証明が要求されることがあります。
  2. 当該産品が他の国・地域において臨時的に保管される際、保税区等の当該国の税関の監督管理下にあること。その経由の理由が、地理的な原因または運送上の必要性のみであり、これらの国・地域に入って消費、積卸しまたは産品の良好な状態を保つために必要な処理以外の処理をしていないことが条件です。

Ⅴ.三国間貿易におけるACFTAの活用

2011年1月1日からACFTAの第二議定書が発効となりました。この第二議定書では商流上第三国を経由する際利用可能な(1)第三国インボイス(Third Party Invoicing)と(2)移動証明書(Movement Certificate)が発給されるようになりました。

  1. Third Party Invoicing(第三国インボイス)
    商流上のみ第三国(必ずしも締約国である必要はありません)を経由する場合に適用されます。Form E申請時にコラム13にあるThird Party Invoicingにチェックを入れ、経由する会社、国名、インボイス番号の記入が必要です。なお、原産地証明の第9欄にFOB価格を記載する必要があります。このFOB価格は、輸出国におけるFOB価格が基本となりますが、最近では第三国所在仲介者のインボイス価格の記載を認めている事例も見受けられます。
  2. Movement Certificate(Back-to-Back原産地証明書)
    締約国である第三国で一旦輸入し再輸出する際に当該第三国で発行されるForm Eのことを言います。第一輸出国で中継締約国宛に発行されたForm Eを基に、新たに中継国で発行されます。数量範囲以内で分割再輸出が可能です。中継国での保管場所については保税倉庫等税関コントロール下にあることが条件です。
    また、香港、マカオ経由で中継輸送する場合、中国検験有限公司(香港、マカオ支店)が発行した「未再加工証明」が必要となります。

関係機関

関係法令

ASEAN事務局:
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参考資料・情報

調査時点:2016年10月
最終更新:2025年8月

記事番号: J-111201

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