化学品の現地輸入規則および留意点:ブラジル向け輸出
質問ブラジル向け化学物質(品)輸出の際の現地輸入規則および留意点について教えてください。
回答
ブラジルでは、米国の有害物質規制法(Toxic Substances Control Act: TSCA)のような化学物質(品)を規制する総合的な法律が整備されていません。水質汚染、土壌汚染、人体や環境への潜在的リスクのある化学品・有害物質の管理や環境保護管理などについて、環境省(Ministério do Meio Ambiente: MMA)、農牧食糧供給省(Ministério da Agricultura, Pecuária e Abastecimento: MAPA)、法務省(Ministério da Justiça)、保健省(Ministério da Saúde)、商工サービス省(Ministério da Indústria, Comércio Exterior e Serviços: MDIC)やそれら傘下の機関である国立再生可能天然資源・環境院(IBAMA)、連邦警察局(DPF)、国家衛生監督庁(ANVISA)、貿易局(SECEX)、あるいはブラジル技術規格協会(ABNT)、化学工業協会(ABQUIM)などがそれぞれ規則を定めています。
I.連邦警察局(DPF)による規制対象の化学物質
「麻薬および向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約」に対応するため、2001年12月27日付法律第10357号、2002年6月10日付政令第4262号により、連邦警察局(DPF)が特定の化学物質の移動、使用を規制、監視することが定められました。
DPFによる規制、監視対象の化学物質(および規制対象基準量)は、2015年10月16日付 法務省令第1274号
附属書I
のリストI(22品目)、リストII(48品目)およびリストIII(44品目)に規定されています。
- リストに関する留意事項
- 各リストに物質ごとに基準量が定められています。基準量を超える輸入、輸出あるいは再輸出は、連邦警察局の事前許可が必要です。リストI、IIの化学物質は輸出入、再輸出、リストIIIの化学物質は輸出、再輸出に際してDPFの事前許可が必要です。
- DPFはリストIの化学物質について、追加規制措置として翌年度の輸入割当量を定めることができ、技術的根拠があれば、当該年度の輸入割当量を追加することができます。
- 単品、他の物質との混合品、あるいは合法的な商品名がついている場合であっても、溶剤、溶剤を含む接着剤などは、18歳未満への販売が禁止されています。また、これらの販売に際しては、商品包装に「18歳未満への販売禁止」と明記しなければなりません。
- DPFの事前許可
これらの化学物質を輸出入、再輸出するにはDPFに事前許可を申請する必要があります。申請書には、化学物質の名称、数量、濃度、含有量あるいは純度、梱包の種類、金額、輸出者・輸入者・製造者の識別、輸送に関する情報等を記載したプロフォーマ・インボイスを添付します。
II.ロッテルダム条約(PIC条約)による規制対象の化学物質
ブラジルは、ロッテルダム条約(「国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質および駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約」PIC条約)に批准(2005年1月31日付政令第5360号)しており、条約附属書IIIの指定物質への対応(輸入禁止、特定条件のもとで輸入許可、無条件で輸入許可)をロッテルダム条約事務局に通告しています。ロッテルダム条約
のウェブサイトで対象の化学物質の輸入可否を調べることができます。
III.化学物質を原料とする製品
化学物質を原料とする製品の規制官庁は、その使途により異なります。
- 農業関連(農薬、除草剤、肥料など)
農牧食糧供給省(Ministério da Agricultura, Pecuária e Abastecimento: MAPA) - 林業、木工製品、MAPA管轄外の除草剤など
環境省(Ministério do Meio Ambiente: MMA)
国立再生可能天然資源・環境院(Instituto Brasileiro do Meio Ambiente e dos Recursos Naturails Renováveis: IBAMA) - 食品、医薬品、化粧品、健康・衛生関連
保健省(Minstério da Saúde)
国家衛生監督庁(Agência Nacional de Vigilância Sanitária: ANVISA) - その他
化学品の輸入に際しライセンスが必要なものを定めている関連団体
商工サービス庁(Ministério da Indústria, Comércio Exterior e Serviços: MDIC)
国家度量衡・品質・科学技術院(Instituto Nacional de Metrologia, Qualidade e Tecnologia: INMETRO)
IV.化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)への対応
化学品の危険有害性の分類基準や安全データシートの内容を調和させることを目的とした「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」については、2007年6月26日付政令第2007号により、ワーキング・グループ「GT-GHS-BRASIL」が商工サービス省(MDIC)を中心に12省庁により組織されましたが、現時点でブラジル版GHSは存在していません。引き続き関係省庁の間で協議が行われています。
ブラジルへの輸出者は、安全データシート(SDS)をEUのGHSに準拠して作成し、これをポルトガル語へ翻訳すれば、実務上、輸入に問題はないようです。
V.輸入手続きの留意点
化学品の輸出入規制と手続きは、2011年7月14日付商工サービス省(MDIC)貿易局(SECEX)省令第23号(Portaria No.23)などに規定されています。化学品については複雑な面がありますので、輸出にあたっては輸入者と連絡を密にして進めるのがよいでしょう。
関係機関
商工サービス省(MDIC)、貿易局(SECEX)、貿易業務部(DECEX) ![]()
環境省(Ministério do Meio Ambiente: MMA)![]()
農牧食糧供給省(Ministério da Agricultura, Pecuária e Abastecimento: MAPA)![]()
法務省(Ministério da Justiça)![]()
保健省(Ministério da Saúde)![]()
国立再生可能天然資源・環境院(IBAMA)![]()
国家衛生監督庁(ANVISA)![]()
国家度量衡・品質・科学技術院(INMETRO)![]()
連邦警察局(DPF)![]()
環境省化学物資安全委員会(Conasq)![]()
ブラジル化学工業協会(ABIQUIM)![]()
ブラジル規格協会(ABNT)
関係法令
2000年12月27日付省令第319号
2001年12月27日付法律第10357号![]()
2002年6月10日付政令第4262号![]()
法務省令第1274号![]()
2004年6月29日付指令第37号
2004年1月14日付指令第11304号
2005年1月31日付政令第5360号![]()
2007年6月26日付政令第2007号![]()
2008年11月5日付決議第81号
2011年11月7日付指令第51号
2013年1月25日付指令第1号
2013年7月16日付決議第12号
2017年1月30日付指令第47号
2017年4月18日付指令第3号
2017年7月20日付指令第26号
2017年11月27日付指令第39号
2017年12月11日付決議第192号
商工サービス省(MDIC)貿易局(SECEX)省令第23号![]()
国家度量衡・品質・科学技術院(INMETRO)指令第18号(Portaria No.18)
調査時点:2015年2月
最終更新:2018年8月
記事番号: I-120101
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