保税物流園区等の中国の税関特殊監督管理区域を活用した中国国内でのみなし輸出入取引

質問

中国国外にある日本企業が、中国企業からの注文品を別の中国企業に発注し、発注元の中国企業に納品することが可能かどうか教えてください。

回答

ご質問の取引は、中国での登記がない中国非居住法人である日本企業が、中国納入先から仕入れた注文品を、発注元の中国企業へ、中国国内で転売する中国国内取引となります。通常、中国では物流と商流が一致しない取引は認められていないため、今回のケースのような中国現地に法人がない⽇本企業は、中国国内での売買に法律上関与することはできません。(※)

しかし、一部の税関特殊監督管理区域は「国内税関外」とみなされます。貨物が物理的に税関特殊監督管理区域に搬入・搬出されると、みなし輸出入となります。中国非居住企業(以下、日本企業という)が税関特殊監督管理区域を活用する場合は、みなし輸出入取引として中継貿易を行うことができます。

従い、日本企業が中国国内取引に関与するには、輸出入取引という形態を取る必要があります。具体的には次の方法があります。

  1. 日本・香港・マカオ等に一旦輸出して再輸入する。
  2. 中国の税関特殊監督管理区域を活用する。(みなし輸出入)貨物が物理的に中国の税関特殊監督管理区域に搬入・搬出されると、輸出入とみなされ、日本企業が取引を行うことができます。

※中国国内取引をするためには、中国国内での法人登記(法人格)が必要です。法人登記が無い場合、中国国内決済もできないためです。

1.税関特殊監督管理区域とは?

税関特殊監督管理区域とは、中国国内にありながら、税関管理上中国国外とみなされる地域です。国務院の承認を得て中国国内各地に設立されています。

税関特殊監督管理区域は、主に保税区、輸出加工区、総合保税区、保税港区、保税物流園区、保税物流センター等があります。

上記の中でみなし輸出入に一般に使われるのは輸出加工区、総合保税区、保税港区、保税物流園区、保税物流センターB型です。

以下は別表にする。

【別表】特殊監督管理区域、保税監督管理場所の機能照合と関税政策
税関特殊監督管理区域 保税区 輸出加工区 総合保税区 保税港区 保税物流園区 保税物流センターB
定義 国務院の批准により中国国内に設立され、税関の監督を受ける特定区域。 国務院の批准により、現在の経済技術開発区の範囲内に設立された税関特殊監督管理区域。 国務院の承認を得て、内陸地区に設立された保税港区の機能を持つ税関特殊監督管理区域。 国務院の承認を得て、国が対外開放する口岸港区と関連の特定区域内に設立される、口岸・物流・加工などの機能を有する税関特殊監督管理区域。 国務院の批准を経て、保税区内、または保税区に隣接する特定の港湾区域内に設立された、専門的に国際物流業を発展させる税関特殊監督管理区域。 税関の許可を得て、中国国内にある企業法人が経営し、保税倉庫物流業務の保税監督管理場所にて管理する。
同一性 地域隔離性があり、自由貿易政策及び特別優遇政策を享受し、特殊監督管理区域に属する。
主な機能 保税加工、保税倉庫、国際貿易、商品展示など。 保税加工に限る、商品小売、転売貿易などを行ってはならない。
  • 研究開発、加工、製造、再製造
  • 検査、メンテナンス
  • 貨物の貯蔵
  • 物流の分配
  • ファイナンスリース
  • 越境EC
  • 商品展示
  • 国際中継貿易
  • 国際中継
  • 港湾作業
  • 先物保税引渡し
国は区内で展開できるその他業務を規定している。
倉庫、流通性簡易加工または付加価値サービス、国際購買、配送と流通、国際輸出貿易、国際中継、検査・修理、商品展示。
実質的な加工業務を行うことができないことに注意が必要である。
保税貯蔵輸出入貨物およびその他未決済の税関手続き(貨物を含む)、保存した貨物に対する流通性簡単加工と付加価値サービスの展開、グローバル調達と国際分譲・配送、中継貿易と国際中継、税関で承認されたその他国際物流業務
みなし輸出入取引に活用できるか ×
域内での流通加工が可能か 〇(簡単な加工) × 〇(簡単な加工)
税収政策 国内貨物入区は入区税金還付政策を享受できない。出国した後に税金を還付することができる。 国内貨物入区税金還付、海外貨物入区保税、区内貨物輸出関税免除 入区税金還付、輸出加工区と同様 入区税金還付、輸出加工区と同様 入区税金還付、輸出加工区と同様 別途規定がある場合を除き、貨物は国内から物流センターに入って輸出と同様に、輸出通関手続きを行い、輸出税控除を受ける。

2.手続きの流れ

みなし輸出入は、中国国内でありながら、税関特殊監督管理区域を利用し日本企業へ外貨支払ができることに特徴があります。想定される具体的な手続きは以下の通りです。

  1. 日本企業が税関特殊監督管理区域内の倉庫業者との間で貨物預託契約を締結する。
  2. 中国国内仕入れ先がみなし輸出通関手続きをとり、保税区域内に貨物を搬入し、日本企業が貨物を倉庫に受け入れる(物理的な搬入が必要)。
  3. 日本企業が貨物を倉庫から搬出する。発注元の中国企業の販売先がみなし輸入通関手続きをとり、一般地域(保税区外)に貨物を搬入する。

手続きの所用期間
政策上、みなし輸出にかかる所用期間は、一営業日以内とされております。ただし各地の実際の所用時間は、委託した保税区内の倉庫業者および現地税関次第となります。

3. メリット・デメリット

こうした税関特殊監督管理区域を活用したみなし輸出入取引は、実際に輸出し再輸入する取引に比べ、輸送費の削減、デリバリーのリードタイム短縮、在庫ダメージの減少といったメリットがあります。

一方、デメリットとしては、みなし輸出通関およびみなし輸入通関手続きが必要になることや、輸入関税がかかること、貨物の預託契約手数料がかかることがあげられます。また、受注側・購入者にとっては、輸出入業務を行う体制(※3)を整備し、対外貿易決済を行う必要があります。

※3 2022年12月30日に発表された全国人民代表大会常務委員会の「中華人民共和国対外貿易法」改正に関する決定によると、同日から貨物輸出入または技術輸出入に従事する対外貿易経営者は届出登録を行う必要がなく、輸出入業務に従事する企業は、対外貿易経営者の届出登録手続きを行う必要がなくなりました。これにより、企業は自動的に輸出入権を取得し(税関登録をして通関権限を取得する必要はあります)、貿易自由化の利便性が向上しました。

税関特殊監督管理区域は立地によって運用が著しく異なります。さらに、通達等も頻繁に改正されるため、具体的な案件については現地の税関等、専門家にご相談ください。

関係機関

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関係法令

税関総署:
中華人民共和国税関総合保税区管理弁法(税関総署令第256号、2022年4⽉1⽇施⾏)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
全国人民代表大会常務委員会『中華人民共和国対外貿易法』の改正に関する決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国务院办公厅关于印发加快海关特殊监管区域整合优化方案的通知外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2013年10月
最終更新:2023年5月

記事番号: H-100309

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