保税区における非居住者の輸入通関および貨物管理:米国

日本企業が米国の保税区に自社の在庫を保有し、米国内の顧客からの注文をインターネットで受け、受注品を納入します。この場合の関税等について教えてください。

I. 保税保管できる米国内の施設を利用する場合

米国で商品や部材等を保税保管するのに適する施設として、以下の二つがあります。いずれも、保税保管中は関税の支払いが猶予されます。

  1. 保税倉庫(Customs Bonded Warehouses: CBW)
    最大5年間保税で保管できます。商品のクリーニング、並べ替え、再包装、製造とみなされない程度に商品の状態を変更することができます。
  2. 外国貿易地帯(Foreign Trade Zones: FTZ)
    米国内に存在しますが、法的には税関の管轄外の地帯です。無期限で保税保管できるほか、展示、分解、再包装、組み立て、分類、等級付け、クリーニング、加工、試験、ラベル表示、修理、外国産品と米国産品の組み合わせ、破壊または製造等を行うことができます。
    輸入した部品の関税率とFTZで製造した完成品の税率を比較し、低い方の関税を支払うことができること、無期限に保管できること、製造等を含め広範囲な作業が行えることがFTZのメリットです。

II. 日本企業(米国非居住法人)が保税在庫を持ち、通関手続きを行う場合

米国では非居住者が輸入者となることが認められています。非居住者である日本企業が、米国で保税在庫を持ち、通関等を行うためには、以下の手続きが必要です。

  1. 米国居住代理人(Resident Agent)の指定
    非居住者に代わって訴訟などにかかわる法的な手続き、通知を行う制度です。法的代理を業とする業者が多数存在します。
  2. 税関ボンド(Customs Bond)の税関への提出
    税関ボンドは米国特有の制度で、輸入者が関税等の支払いができない等の場合にその支払いを確実にするために、米国税関が輸入者に求める財務保証です。通常、通関業者を通じて手配します。
  3. 通関業者に対する委任状(Power of Attorney: PA)の発行
    通関業者は米国居住者であり、上記税関ボンドを税関へ提出していることが条件です。非居住法人が起用する通関業者にPAを発行する場合、その企業の存在や営業内容を証明できる書類や、非居住者を代表してPAに署名した人がその権限を有することの証明等も要求されるのが通例です。詳細は起用する通関業者にご相談ください。

III. 保税倉庫または外国貿易地帯からの搬出と通関

  1. 輸入通関者
    米国での消費(販売)目的でCBWまたはFTZから出荷するには、通関が必要で、その際関税が課せられます。非居住者を含む売主が保税転売した場合は、買主が輸入通関します。ただし、米国では売主が輸入通関し関税等を支払った上で、買主の指定する場所に納品するDDP(Delivered Duty Paid、関税込持込渡)契約を求める買主が多いのが実情です。
  2. 税関への事前相談
    米国の非居住者である法人名で輸入通関する場合、輸出者と輸入者が同一企業または同一グループ企業名となることが多いと思われます。この場合、両者の関係を明らかにし、対象となる商品の申告価格と市場価格との対比、契約内容等を起用する通関業者等を通じて税関に説明・相談し、課税価格等について事前の確認を得ることをお勧めします。
  3. その他の課税・公課
    米国に輸入される物品に対しては、関税以外にも税関が徴収する税金や手数料があります。アルコール飲料やタバコ等は連邦消費税(Excise Tax)が課税され、税関が徴収を代行します。
    米国では輸入申告の際、税関利用料(Merchandise Processing Fee: MPF)が課せられます。税関利用料は、2,500ドル以上の貨物の場合、輸入商品代金の0.3464% で、最高額が485ドル、最低額が25ドルです。2,500ドル未満の場合は2〜9ドルです。
    さらに海上輸送で米国に輸入された場合は、港湾維持料 (Harbor Maintenance Fee: HMF)が徴収されます。港湾維持料は、輸入商品代金の0.125%です。
    MPF、HMFの計算において、商品代金には、関税、海外から米国輸入港までの運賃、貨物保険料を含みません。
    米国では州により税制が異なり、州税、フライチャイズ税、在庫税等が課せられる場合がありますので、現地の会計事務所にご相談ください。

関係機関

米国税関・国境警備局外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
連邦印刷局外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関係法令

連邦印刷局:
19CFR PART141通間手続きPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(270KB)

参考資料・情報

米国税関・国境警備局CBP Info Center:
税関ボンドを求められる場合外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
関税以外に課される租税公課外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
MPFについて外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
HMFについて外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2016/12

記事番号: H-100302

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