ソフトウェアの輸入手続きと税金:中国
質問
日本企業が中国に自社開発ソフトウェアを輸出する場合の手続きと税金について教えてください。
回答
⽇本から中国にソフトウェアを輸出する場合、中国のユーザーがコンテンツを有料でダウンロードすることにより提供する形態(サービス貿易)と、当該コンテンツを収録したCD-ROM、USBメモリ等の記録媒体を輸出して販売する形態(貨物貿易)があります。
Ⅰ.両社に共通する手続き
- ソフトウェアの輸入が技術輸入に該当し、輸入自由技術に該当する場合
輸入する技術に対し、商務部での技術輸入契約登記が必要です。中国国内のユーザーが登記申請書、ライセンス契約の写しなどの必要書類を商務部に提出します。 - 「輸入禁止輸入制限技術目録」の輸入制限技術に該当する場合
登記ではなく、「輸入禁止輸入制限技術管理弁法」に基づき、商務部の許可証を取得することが必要です。 - 「輸入禁止輸入制限技術目録」の輸入禁止技術に該当する場合
中国に輸入することはできません。
Ⅱ.コンテンツをダウンロードすることにより提供する場合の手続きと税金
日本企業と中国ユーザーとの間でソフトウェアのライセンス契約が締結され、ライセンス料としてソフトウェアの対価が取り決められるとします。この場合、ソフトウェアはダウンロードすることにより提供されますので、ユーザーは税関を通さずにソフトウェアを輸入することになります。ソフトウェアの税関での手続きや申告の要否は明確に規定されていませんが、通常、技術輸入と同様に、商務部での技術輸入契約登記を経て輸入します。
- 手続き
- 商務部での技術輸入契約登記手続き
商務部にて技術輸入契約登記を行います。登記に必要な情報は以下のとおりです。- 契約名称
- 技術供給者
- 技術受領者
- 技術使用者
- 契約の概要
- 契約金額
- 支払方式
- 契約期間
- 代金の送金
代金が5万米ドル以下の送金について外資指定銀行は取引書類に対する審査は必要とせず、国内ユーザーは外資指定銀行で取引書類を提示せず送金できます。一方、代金が5万米ドル以上の場合、中国国内ユーザーは、契約書、インボイス(請求書)、制限類の技術の場合は商務部発行の「技術輸出入許可証」、税務届出表などを銀行に提出し、審査を経た後、ライセンス料を送金できます。詳細は中国国内ユーザーが取引銀行に照会し、確認ください。
- 商務部での技術輸入契約登記手続き
- 税金
企業所得税(10%)が源泉徴収されます。
ただし、この税率は、日本企業が中国国内に恒久的施設(Permanent Establishment: PE)を持っていないか、または持っていても、同社が取得するソフトウェアの対価と実質的に関連していないことを前提とします。PEの認定やPEと企業の所得との関連性の有無の判断は、個別の事情による部分が大きいため、別途、税理士等の専門家に確認してください。また、増値税(6%)が源泉徴収されます。
Ⅲ.貨物として輸出する場合(貨物貿易)の手続きおよび税金
日本企業とユーザーとの間でソフトウェアの売買契約が締結され、ソフトウェアの売買代金が取り決められたものとします。
- 手続き
- 商務部の登記手続き
Ⅱ.コンテンツをダウンロードする場合と同じ手続きを踏みます。 - 代金の送金
中国国内ユーザーが必要書類を外貨指定銀行に提出し、売買代金を送金します。送金手続きには売買契約書、通関の関係書類などが必要です。
- 商務部の登記手続き
- 税金
輸入者は関税と増値税を納付する必要があります。
CD-ROMまたはUSBメモリに保存する場合、関税率は通常0%(HS8523)、増値税率は、「増値税改革の深化に関連する政策についての公告」にもとづき13%です。なお、これらの税率はジェトロが保証するものではありません。最新の税率についてはご自身でご確認ください。
Ⅳ.中国国家版権局での著作権登録について
日本企業が中国にソフトウェアを輸出する際、法的義務ではありませんが、当該ソフトウェアの著作権を中国国家版権局にて登録することができます。著作権登録は、ソフトウェアの著作権保護を中国国内で明確にする手段であり、模倣品対策や権利行使の際に有効な証拠となります。また、オンラインプラットフォームでの販売において、著作権登録証の提出が求められる場合があります。
- 登録の目的
著作権の存在を中国国内で証明することにより、権利保護の強化、模倣品対策、契約の信頼性向上を図ることができます。 - 登録手続き
中国国家版権局に対し、著作権登記申請書、ソフトウェアの概要説明、ソースコードの抜粋、著作権者の身分証明書類などを提出します。登録には通常2〜3か月を要します。 - 登録費用
登録手続きに関する官庁手数料は、2017年4月1日以降、中国版権保護センターの通達(中版権字[2017]33号)により徴収が停止されており、ソフトウェア著作権の登録は無料で行うことができます。ただし、代理申請を行う場合や、翻訳・認証等の付随業務に関しては、別途費用が発生する可能性があります。 - メリット
- 著作権侵害時の証拠として活用可能
- オンラインプラットフォームでの販売において登録証の提出が求められる場合がある
- 契約の信頼性向上に寄与する
- デメリット
- 登録に際し、ソースコードの一部提出が必要となる場合があり、情報公開リスクがある
- 翻訳・認証等の付随業務に関する費用が発生する可能性がある
関係機関
関連法令
- 中国中央人民政府:
-
中華人民共和国技術輸出入管理条例(国務院令第331号、2001年12月10日)
-
行政法規の修正・廃止に関する決定(技術輸出入管理条例の一部改正を含む)(2020年11月29日)
-
技術輸出入契約登記管理弁法(中国商務部令2009年第3号、2009年3月3日施行)
-
輸入禁止輸入制限技術管理弁法(中国商務部令2019年第1号、2019年11月30日施行)
-
輸入禁止輸入制限技術目録(中国商務部公告2021年第37号、2021年11月2日施行)
-
コンピュータ・ソフトウェア保護条例(中国国務院令第632号、2013年3月1日施行)
-
コンピュータ・ソフトウェア著作権登記弁法(中国国家版権局令第1号、2002年2月20日施行)
- 国家外貨管理局:
-
経常項目外貨業務ガイド
- 中国税関総署:
-
サービス貿易等項目の対外支払税務届出関連問題に関する公告(国家税務総局、国家外貨管理局公告2013年第40号、2013年9月1日施行)
-
増値税改革の深化に関連する政策についての公告(財政部 税務総署 税関総署公告2019年第39号、2019年03月20日公布、4月1日施行)
調査時点:2013年10月
最終更新:2025年9月
記事番号: C-110105
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