EXW(工場渡)の輸出入手続き

質問

海外の買主から工場渡し(Ex-Works: EXW)で商品を買いたい旨のオファーがありました。EXWの輸出入手続き等について教えてください。

回答

EXWは、インコタームズ規則の一つで、売主が、売主の施設またはその他の指定場所(工場、製造所、倉庫など)で物品を買主の処分に委ねた時に引き渡しの義務を果たすことを意味します。この規則では、売主は物品を引き渡す際、車両に積み込む必要もなく、通関の義務もありません。よってこの規則は、インコタームズの中で売主にとって最もリスクと費用負担が少ない規則です。

I. EXWの概要

買主は物品が引き渡されてから自国に持ち込むまでの輸出入通関手続きおよび諸掛、輸送費、関税等の一切の費用を負担しなければなりません。このため、買主にとっては、貨物の購入代金は安くても、その他の費用とリスク負担が最も大きい規則です。買主が直接または間接に輸出通関許可を取得できない場合は、EXWを使用しないことが賢明です。従って、EXWの使用にあたっては、買主が事前に現地の輸出通関事情をよく調査することが必要です。

なお、このEXW規則と同じ意味で、Ex Godown、Ex Warehouse、Ex Factory、Ex Mill等が使用される場合があります。これらはインコタームズで定義されていない用語です。これらの用語を使用し、用語の定義等を巡ってトラブルが起きても、どこにも依拠する基準がありません。従って、トラブルを防止するためには、インコタームズで定義されているEXWを使用することをお勧めします。

II. EXWによる日本からの輸出

EXWでは、物品が売主の施設等で、売主から買主に引き渡されます。従って、輸出通関の手続きは買主の義務です。しかし、買主が輸入国に居ながら、こうした手続きを行うことは困難です。 通常はフォワーダーなどに買主の名で仕出国での輸出通関を代行してもらう方法をとります。

また、インコタームズのEXWでの売主の義務に、「買主の依頼、危険および費用により、適用できる場合には、物品の輸出に必要な輸出許可その他の公式の許可を取得するにあたり、売主はあらゆる助力を与えなければならない」という条項があります。よって買主は必要に応じて売主の助力を求めます。

今回のケースは日本側が売主ですから、買主は、日本の居住者である税関長の許可を受けた通関業者などを「税関事務管理人」として任命し、税関への輸出申告手続きを買主の名義で行います(関税法第95条)。輸出申告にあたって関税関係法令以外の規定(他法令という)により許可や承認等を必要としている場合は、申告者はその許可等を得ていることを税関に証明しなければなりません。

なおEXWを使用して日本から輸出する場合、国内で物品を買主に引き渡した時点で物品の所有権や処分権も売主から買主に移転したものと認識されたとき(例えば、物品の引き渡し後買主が考えを変えて輸出せず日本国内で転売できるなど物品引き取り後に買主の裁量で物品をいかようにもできる状態のとき)は消費税課税となり売主は輸出免税の適用を受けられないことがあります。
EXWを使用して売主が輸出免税の適用を受けるときには、輸出証明(税関の輸出許可書)のほか、売主から買主への物品の所有権・処分権の移転が輸出許可後(船積み時など)になされることを予め当事者で合意し、その旨を契約書やインボイスなどに明記しておく必要があります。

ただし、このように、EXWを使用しながら、売主から買主への物品の所有権・処分権の移転が輸出許可・船積後になることを合意することで、本来のEXWでの引き渡し地点以後も、輸出許可・船積みまでは売主が貨物のリスクを負うことにもなりますので、注意が必要です。

III. EXWによる日本への輸入

いずれの国・地域においても、原則居住者である者が輸出入申告を行います。しかしながらEXWの場合、輸出国・地域において日本の「税関事務管理人」と同じようなシステムがあるか否か、事前に現地の輸出通関事情をよく調査することが必要です。例えば、米国の場合、買主が米国居住者であるフレイトフォワーダに、すべての輸出許可に関する責任は買主がとることを米国の売主に確約することを記した委任状を託し、買主の輸出代理人として任命することで、米国から輸出できます。

関係法令

関係機関

国際商業会議所:
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参考資料・情報

米国商務省・産業安全保障局:
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調査時点:2017年1月
最終更新:2023年9月

記事番号: C-070306

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