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貨物保険をかけ忘れた場合の船会社への損害賠償請求

質問

中古車の販売業者です。今回米国からコンテナ積みで中古乗用車を輸入したのですが、貨物保険をかけ忘れたことを通関時に気がつきました。貨物に何らかのダメージがあった場合には、船会社に損害賠償を請求できるでしょうか。

回答

海上運送中の貨物の損害をカバーするためには、貨物海上保険を付保する必要があり、まずは船積み前に忘れずに保険を付保することが大切です。
一方で船会社は、貨物を安全に運送する義務を負っているため、運送中、貨物に損害が発生した場合には、運送契約上一定の賠償責任があります。このため、荷主は船会社に対し、損害賠償請求(クレーム)を行うことができます。ただし、この場合、以下に述べるように、厳格な荷主の立証責任が課せられている他、船会社の賠償責任範囲も一定の金額に定められていますので注意が必要です。

I. 損害に対する荷主の立証責任

運送契約の内容を記した船荷証券(B/L)約款には、「(運送人は)貨物の受領場所から貨物の引渡し場所までの期間に生じた貨物損害を、荷主が立証した場合に賠償責任を負う」などと規定し、荷主に対して立証責任を課しています。
コンテナ輸送の場合、コンテナ単位のFCL(Full Container Load)貨物と、一つのコンテナ貨物に満たないLCL(Less than Container Load)貨物とでは、貨物の受領場所と引渡し場所が異なるため、以下の通りそれぞれ立証方法が異なります。

  1. FCL貨物の場合
    FCL貨物の場合は、船会社は、原則として、船積港のCY(コンテナ・ヤード)で貨物を受領し、陸揚地のCYで引渡すいわゆるCY/CY条件となります。この場合、輸出者は貨物の自動車を自社の工場や倉庫で自分でコンテナ詰めします。このため、船会社は、輸出者からFCL貨物を受領する際、コンテナの外観からみて特に損傷がない限り、B/L上に“Shipper’s Pack”、“Shipper’s Load and count”、“Said to contain”などと記載し、無故障船荷証券(Clean B/L)を発行します。これは、「貨物は輸出者の責任でコンテナ詰めされたため、中身の状態について船会社は責任を負わない。」としたもので、このような記載を、不知約款(Unknown Clause)と呼びます。荷揚港のCYではコンテナの引渡しに際し、船会社(実際は、CYオペレーター)より機器受渡証(Equipment Interchange Receipt)が発行されます。これに自動車の損傷に関係のあると考えられるコンテナの破損、穴あき、へこみ、ゆがみ、変形などのコンテナの異常が記載されていれば、運送中の損傷と推定でき、荷主はこれを船積時のClean B/Lとともに立証の材料とします。
  2. LCL貨物の場合
    LCL貨物の場合は、船会社は、船積港のCFS(コンテナ・フレート・ステーション)で貨物を受領し、荷揚港のCFSで引渡すいわゆるCFS/CFS条件となります。この場合、船会社は貨物の自動車を裸姿で受領し、自動車に損傷等がなければ、Clean B/Lを発行します。これは、自動車が船会社の受領時には良好な状態であったことを示しています。次にその自動車が、荷揚港のCFSにおいて損傷が見つかり、貨物引渡証に事故摘要(Remarks)が記載されれば、荷主はこれを船積時のClean B/Lとともに、輸送中に起こった損害として立証の材料とします。

II. 船会社への損害賠償請求

船会社への損害賠償請求は、以下のように予備クレームと本クレームの2段階で行います。

  1. 予備クレーム
    引渡しを受けた自動車に損傷が見つかった場合は、その旨を記した機器受渡証や貨物引渡証などの書類を取り付けます。そして可及的速やかに船会社宛てに事故通知(Notice of Damage)を行います。これは正式な損害賠償請求に先立つ通知で、予備クレーム(Preliminary Claim)とも呼ばれます。B/L約款では、この予備クレームは、引渡し後3日以内に行わなければならないと規定しています。
  2. 本クレーム
    予備クレームを行ったら、正式な損害賠償請求である本クレーム(Final Claim)を行う準備をします。まず、荷主側の責任で損害額を算出します。このとき、客観性を立証するため、必要に応じて海事検定人(Surveyor)に損害の鑑定を依頼し、鑑定書(Survey Report)を入手します。次に、算出した損害額をもとに損害額の請求書を作成し、機器受渡証や貨物引渡証などの書類、B/Lのコピー、インボイス、海事検定人の鑑定書または修理業者の請求書のコピー、損傷を示す貨物またはコンテナの写真などを添付して船会社に提出します。
    この本クレームの請求期限は、国によって異なりますが、日本や米国などでは、貨物の引渡し後1年以内としています。

III. 損害賠償金の支払い

クレームを受けた船会社は、B/L約款に沿って処理します。B/L約款では、ヘーグ・ルールやヘーグ・ヴィスビー・ルールなどの国際条約に則った船会社の賠償責任範囲が定められています。わが国が批准しているヘーグ・ヴィスビー・ルールでは、1梱包もしくは1単位あたり666.67SDR(Special Drawing Rights、国際通貨基金(IMF)の特別引出権のこと)または総重量1kgにつき2SDRのいずれか高い方となっています。

関係機関

(社)日本海事検定協会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参考資料・情報

法令データ提供システム(e-Gov):
国際海上物品運送法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2011年8月
最終更新:2019年7月

記事番号: A-A11049

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